最高裁判所裁判官の国民審査--最高裁裁判官9人に聞く

2009-08-25 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

30日「国民審査」 最高裁裁判官9人に聞く
8月24日7時56分配信 産経新聞
 最高裁判所裁判官の国民審査が30日、衆院選と同時に全国の投票所で実施される。審査は裁判官が「憲法の番人」として、ふさわしいかどうかを国民がチェックするもの。憲法79条に基づいて、裁判官は任命後最初の衆院選と、初めての審査から10年たったあとの衆院選の際に国民審査を受ける。
 最高裁裁判官のうち、今回審査を受けるのは前回平成17年9月の衆院選後に任命された9人の裁判官。
 有権者は「罷免すべきだ」と思う裁判官の欄に「×」印を書き、「罷免すべきではない」との判断なら何も書かずに投票する。過半数が「×」の裁判官は罷免される。現憲法下でこれまでに罷免となった裁判官はおらず、「×」印がつけられた率も最高で15・2%となっている。「〇」や「△」などを書いた場合は無効となる。
 対象の9裁判官の略歴、信条、これまでにかかわった主な裁判を紹介する。
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【質問事項】(1)最高裁裁判官としての信条、求められる資質(2)裁判員制度と制度のもとでの量刑について(3)「足利事件」など冤罪の問題について(4)取り調べの全面的な録音・録画について(5)尊敬する人物、好きな言葉・座右の銘(6)最近読んだ本(7)趣味
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 ■桜井龍子氏(さくらい・りゅうこ=第1小法廷)
 福岡県出身。九大法卒。昭和45年労働省入省。婦人福祉課長、女性局長、内閣府情報公開審査会委員を経て、平成20年9月最高裁判事。62歳。
 【主な裁判】酒気帯び運転で赤信号か否かを意に介さず、時速70キロ以上で交差点に進入してタクシーと衝突、4人を死なせた事故について、危険運転致死傷罪を適用した高裁判決を支持した裁判で裁判長
 (1)重責を認識し、自己研鑽(けんさん)に努め、公平、公正な判断を行う。幅広い人間性と深い洞察力が必要
 (2)先進各国と同じく、ようやく国民の司法参加が実現されたもので、戦後民主主義の画期的前進。量刑は社会のルールをどう作るかにかかわる。過去の量刑は参考にすべきだが、絶対的ではなく、国民の目で、判断してもらいたい
 (3)一般論として誤判はあってはならず、起きないような方策の検討は裁判官自らがが率先して行うべきだ
 (4)立法問題なのでコメントは控えたい
 (5)勝海舟。「一所懸命」
 (6)「金子みすゞ童謡集」
 (7)スキー、山歩き、陶芸
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 ■竹内行夫(たけうち・ゆきお=第2小法廷)
 奈良県出身。京大法卒。昭和42年外務省入省。首相秘書官、北米局長、駐インドネシア大使、外務事務次官を経て、平成20年10月最高裁判事。66歳。
 【主な裁判】継続的な金銭消費貸借取引で過払い金を新たな借入金債務に充当する合意がある場合に、消滅時効は取引終了時から進行し、貸主が悪意の受益者であれば、借主は過払い金に対する発生時からの利息を請求できるとした裁判で裁判長
 (1)個人の尊厳を基盤に社会秩序の維持発展に資する公正な裁判を行う。判断力と常識的バランス感覚
 (2)国民の司法への関与と理解が進むことは重要。議論を尽くした上で、自分の判断を下してほしい
 (3)誤判が確定した場合は検証する必要があり、検証作業への第三者の参加を得ることが望ましい
 (4)検討に値するが、立法の問題なので差し控える
 (5)トマス・モア(英国の法律・思想家)。「清流に石を投げれど水清し」
 (6)カズオ・イシグロ著「夜想曲集」、「万葉集」
 (7)読書、音楽・映画鑑賞
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 ■涌井紀夫氏(わくい・のりお=第1小法廷)
 兵庫県出身。京大法卒。昭和41年判事補。東京高裁部総括判事、司法研修所長、福岡、大阪各高裁長官を経て、平成18年10月最高裁判事。67歳。
 【主な裁判】警察官が私費で購入したノートに記載した取り調べのメモについて、裁判所は証拠開示を命ずることができると判断した裁判で裁判長
 (1)最終審という職責の重大性を念頭に取り組みたい。常に公正、公平な立場から的確な判断を下すこと
 (2)刑事裁判の真の姿を広く国民に理解してもらい、信頼される刑事裁判が実現されることを期待する。量刑判断が国民の意識を反映したものになるはずで、意見を遠慮なく述べてほしい
 (3)裁判、裁判官の独立に対する配慮は必要だが、調査、研究を行うことは必要
 (4)採用の是非とは別に、自白の任意性・信用性判断のための客観的資料がほしいと思われるケースはある
 (5)先輩や同僚の法曹。「思うて学ばざればすなわち殆し」
 (6)ジョングリシャム著「インノセントマン」
 (7)野球観戦、鉄道旅行
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 ■田原睦夫氏(たはら・むつお=第3小法廷)
 京都府出身。京大法卒。昭和44年弁護士登録。法制審議会民事訴訟法部会幹事、日本民事訴訟法学会理事を経て、平成18年11月最高裁判事。66歳。
 【主な裁判】平成17年9月の衆院選小選挙区で、候補者が政党に属するか否かで選挙運動に差を認める公選法の規定は憲法違反との反対意見
 (1)事案に虚心に向き合い、正義にかない、適正妥当な結論を目指すこと。社会の動きを注視し、幅広い観点から物事を柔軟に捉えた上で判断する意思と、そのための努力を保つこと
 (2)種々な敬啓を持った市民の眼と心で裁判に参加する制度。感情に流されず事案に応じた適正な量刑がなされることを願います
 (3)個別の事件の意見は控えるが、科学的証拠の取り扱い、その評価については内部で検討する必要がある
 (4)公判のなかで供述の任意性の争いを防ぐ観点からは望ましいが、証拠調べとの関係について検討が必要
 (5)イチロー選手。「逃げない」
 (6)山本譲司著「累犯障害者」
 (7)夏山登山
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 ■金築誠志氏(かねつき・せいし=第1小法廷)
 島根県出身。東大法卒。昭和44年判事補。最高裁人事局長、司法研修所長、東京地裁所長、大阪高裁長官を経て、平成21年1月最高裁判事。64歳。
 【主な裁判】交通違反取り締まりにあたる捜査車両の車種などを知るために、警察署を囲む塀に上った行為に、建造物侵入罪が成立するとした裁判で裁判長
 (1)誠実、公平に幅広い視点からという心構え。高い識見と広い視野、洞察力
 (2)刑事裁判の一代変革。裁判官は柔軟に、裁判員は積極的に、という姿勢を期待したい。経験者から「心配したほどのことはなかった」「やってよかった」と言ってもらえるように、法曹三者は努力するほかない。量刑については事件を多面的に見ることが必要で、評議の中で自然にそうなるように期待する
 (3)具体的な事件として継続中なので差し控えたい
 (4)国会で審議中と聞いており、意見は控えたい
 (5)川路聖謨(幕末の勘定奉行)。「企者不立 跨者不行」
 (6)小学館「日本の歴史」
 (7)野草観察、園芸、囲碁
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 ■那須弘平氏(なす・こうへい=第3小法廷)
 長野県出身。東大法卒。昭和44年弁護士登録。第二東京弁護士会副会長、日本弁護士連合会常務理事を経て、平成18年5月最高裁判事。67歳。
 【主な裁判】米写真家のメイプルソープの写真集について、「風俗を害すべき書籍、図画」にあたらないと判断した裁判で裁判長
 (1)中立、公正な立場で憲法・法律に従って判断する。法の趣旨を念頭に置いた大局的な判断
 (2)日本の司法を大きく変える力を秘めている。裁判官と裁判員が協働し、高い次元の正義実現を期待する。量刑基準と多少離れることはやむを得ない
 (3)一般論として重大な誤判事件には検証が必要な場合もあるが、裁判官の独立との兼ね合いをどうするかという視点での配慮も必要
 (4)裁判員裁判の運用に自白の位置づけは重要で、問題となっていることは承知しているが、立法にかかわる問題なので差し控える
 (5)福沢諭吉。「守拙求真」
 (6)J・グレイ著「自由主義の二つの顔」
 (7)弓道、ゴルフ、神社仏閣めぐり
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 ■竹崎博允氏(たけさき・ひろのぶ=第2小法廷)
 岡山県出身。東大法卒。昭和44年判事補。東京地裁部総括判事、最高裁事務総長、名古屋、東京各高裁長官を経て、平成20年11月最高裁長官。65歳。
 【主な裁判】福岡県内のDVD販売機が監視カメラで撮影した客の画像を監視員が見て販売しても、「対面販売」の実質はなく、県青少年育成条例の「自動販売機」にあたると判断した裁判で裁判長 (1)中立、公平な立場で正しく事実を評価し、健全な価値に従って判断する。豊かな人間性、社会・歴史に対する洞察力、優れた法律技術を兼備すること
 (2)問題を丁寧に見直し、長い目で育てることが必要。当事者それぞれの量刑への思いの理解が必要
 (3)刑事裁判の本質に関わる。裁判と科学、技術のあり方についての検討が必要
 (4)取り調べのあり方、任意性の立証は重要で、総合的な検討が望まれる
 (5)好きな人物は多いが尊敬より客観的評価にとどまる。座右の銘は特にない
 (6)塩野七生著「ローマ人の物語」
 (7)園芸、読書、音楽鑑賞
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 ■近藤崇晴氏(こんどう・たかはる=第3小法廷)
 東京都出身。東大法卒。昭和44年判事補。東京高裁部総括判事、最高裁首席調査官、仙台高裁長官を経て、平成19年5月最高裁判事。65歳。
 【主な裁判】小学校教諭が悪ふざけをした男児を追いかけ、胸元をつかんで大声で叱った行為について、体罰にあたらず違法ではないと判断した裁判で裁判長
 (1)結論が健全な社会常識に合致するよう、丁寧に判断。社会と人々の心の動きを鋭敏にキャッチする感性
 (2)裁判官は裁判員が事件を理解し、積極的に意見を述べられるように務める必要がある。社会人として量刑感覚を率直に述べてほしい。従来と量刑と変わっていくところがあっても、それはまさに制度の狙い
 (3)誤判が明らかな場合、裁判の独立に触れないように裁判所部内で原因の検証が必要。司法研修所での司法研究などが考えられる
 (4)検討の余地はある
 (5)高田屋嘉兵衛(江戸の廻船業者)。「和して同せず」
 (6)桐野夏生著「メタボラ」
 (7)読書、歌舞伎観劇、映画・美術鑑賞
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 ■宮川光治氏(みやかわ・こうじ=第1小法廷)
 愛知県出身。名大院修了。昭和43年弁護士登録。司法研修所教官、日本弁護士連合会懲戒委員会委員長を経て、平成20年9月最高裁判事。67歳。
 【主な裁判】立ち入り禁止の看板を建物に取り付けようとした行為を阻止するために行った暴行について、正当防衛を認めて無罪を言い渡した裁判で裁判長
 (1)最終審の重さと法の発展に寄与するという役割を自覚し、分かりやすい論理と言葉で判断を示す。広い視野と多様な思考力、自省力、自由な精神
 (2)職業人と市民の対話・協働は新しい司法を創造する。量刑の幅はやや広まる可能性はある
 (3)裁判の独立に十分に配慮した上で、科学的証拠の評価のあり方などについて司法研修所のような機関で検討することが必要
 (4)その方向に現実は動きつつあると理解している
 (5)人生を賭して公益的活動をしている人たち。「精神のない専門人、心情のない享楽人」が自戒の言葉
 (6)山崎豊子著「運命の人」
 (7)映画館での映画鑑賞と読書。藤沢周平の全作読破

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