来年5月の裁判員制度開始に先立ち、12月から被害者参加制度が施行される。法廷で遺族らが直接、被告に質問や求刑をできる制度だ。事件で泣き寝入りを強いられた犯罪被害者は数多く、その救済の一環だ。とはいえ、被告が犯人か否かなどを見極める法廷が被害者感情で振り回される危険がある。まして裁判員は「素人」だ。一歩間違えれば「人民裁判」に陥りかねない。時にへりくつにすら聞こえる法廷の応酬には『百人の有罪を逃しても、一人の無罪を救う』という経験則が根源にある。
http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/ column「被害者参加制度12月施行」
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公判前、遺族に調書 秋葉原殺傷で開示検討
2008年11月15日 07時06分
東京・秋葉原で六月に起きた無差別殺傷事件で、東京地検が公判前に遺族らに対し、元派遣社員加藤智大被告(26)=殺人罪などで起訴=の供述調書などの開示を検討していることが分かった。同事件は十二月施行の刑事裁判の「被害者参加制度」の対象ではないが、遺族や被害者らの申請があれば、初公判前に捜査資料の開示に応じるとする最高検通達を受け、同地検が検討に入ったとみられる。
刑事訴訟法は、供述調書などの記録は、公益上の必要などがあり、相当と認められない限り、初公判前の公開を禁じている。これまでは、被害者が保険金の支払いを求めた民事裁判などで、刑事裁判の記録を利用する際に開示されてきた。
最高検は九月、殺人や業務上過失致死傷、強姦(ごうかん)、誘拐など重大事件の遺族や被害者が申請すれば、関係者のプライバシーの侵害や公判に悪影響が出ない場合に限り、閲覧を認めるとの通達を全国の高検や地検に出した。
最高検は、被害者側が参加資格を持って出廷することは、公益性のある例外事例に当たると判断した。
遺族や被害者が被害者参加制度を利用して出廷するかどうかの判断や、被告に質問をするときの材料にしてもらうことを想定。争点を絞り込む公判前整理手続きの導入で裁判が迅速化したことから、初公判後に閲覧できても調書の内容などを十分に検討できないという不満に応える狙いもあるとみられる。
被害者参加制度は十二月一日以降に起訴された事件が対象になるが、東京地検は、法の施行日で線引きするのは不合理で、制度の趣旨からすれば開示は可能として、秋葉原事件の遺族らへの開示を検討している。事件では七人が死亡、十人が重軽傷を負った。同地検は加藤被告の精神鑑定の結果などを被害者や遺族に通知している。
<被害者参加制度> 犯罪被害者や遺族が刑事裁判の法廷で、被告に直接質問や論告などができる制度。被害者支援の一環として、2007年6月の刑事訴訟法改正で定められた。被害者や遺族は検察官の横に座り、一定の範囲内で被告人質問や証人尋問ができる。求刑意見は、起訴された罪の法定刑の範囲内で求刑を言うことも認められる。(東京新聞)
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<捜査資料>初公判前、被害者に開示…最高検通達
最高検は、重大犯罪の被害者や遺族が望めば、刑事裁判の初公判前に供述調書や実況見分調書などの捜査資料を開示するよう全国の地検、高検に通達した。被害者側が法廷で直接被告に質問したり、量刑への意見を述べられる「被害者参加制度」が導入される12月から適用される。制度を積極的に活用できるように、従来の方針を転換した。効果的な質問の準備などが可能になり、被害者の権利を守るものとして、遺族らは高く評価している。
通達は9月5日付。刑事訴訟法は「公益上の必要がある場合以外は、訴訟に関する書類を公判前に公にしてはならない」と規定し、被害者でも公判が始まるまで閲覧や謄写ができなかった。
一方、05年11月から裁判官と検察、弁護側が事前に証拠や争点を絞る「公判前整理手続き」が導入され、公判開始後に被害者が参加しても、証拠を吟味する時間が他の当事者より短くなると危ぶまれていた。
今回の通達は法務・検察側が同法の「公益上の必要がある場合」を積極的に解釈した結果とみられる。12月以降に起訴された被害者参加制度の対象事件で、被害者や遺族、被害者側弁護人が担当検事に要請すれば、検察側が請求する予定の証拠を公判前に閲覧できるようになる。公開への被告側の同意は不要だが、第三者のプライバシーにかかわる証拠などは開示を見送る場合もある。
捜査情報開示を法務省に働きかけてきた「TAV交通死被害者の会」(大阪市北区)会員、森本祐二さん(54)=兵庫県川西市=は「膨大な件数を少人数で調べる交通犯罪は捜査ミスが起きやすいが、従来、遺族は初公判まで把握できなかった。真相解明への壁に穴を開けた大きな一歩だ。今後は警察捜査段階での証拠開示も求めたい」と話している。【林田七恵】
◇被害者参加制度
犯罪被害者の声を公判に直接反映させて権利拡充を図る制度。対象は殺人や強姦(ごうかん)、誘拐、自動車運転過失致死傷などの重大事件。被害者や遺族が希望し裁判所が許可すれば「被害者参加人」として検察官の隣に座り、被告に直接質問したり証人に被告の情状を尋問できる。検察官の論告求刑の後、法律の範囲内で量刑意見を述べることもできる。(毎日新聞 - 11月14日 15:12)
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少年審判傍聴、12月15日から 改正法施行へ
2008年10月21日 中日新聞朝刊
政府は20日、原則非公開の少年審判で、重大事件の被害者や遺族に傍聴を認める改正少年法の施行日を12月15日とする方針を固めた。今月中にも閣議決定し、政令で定める。少年審判の傍聴は、刑事裁判で被害者側が求刑意見などを述べる被害者参加制度(12月1日施行)などとともに政府が進める被害者支援策の一つ。
ただ「加害少年が萎縮(いしゅく)する」「被害者も傷つく場合がある」などと懸念する声もあり、家裁の運用が注目される。
改正少年法によると、審判傍聴の対象は家裁送致された加害少年が12歳以上で、殺人や業務上過失致死など被害者を死傷させた事件。
被害者や遺族が傍聴を希望し、家裁が加害少年の年齢や心身の状態、事件の性質、審判の状況などを考慮して許可した場合に傍聴できる。家裁は可否を判断する際、加害少年の付添人弁護士からも意見を聴く。
改正法は審判傍聴のほか、被害者側に事件記録の閲覧、コピーを原則許可する条項などを含み、今年6月に自民、公明、民主各党などの賛成で成立。施行は6月18日の公布から6カ月以内とされ、政府は審判廷の準備などにほぼ期限いっぱいの時間が必要と判断して、12月15日を施行日に選んだとみられる。
加害少年の家裁送致が12月14日以前でも、審判が同15日以降ならば、被害者側は傍聴を求めることができる。