オスプレイ訓練 同盟の抑止強化に当然だ
産経新聞2013.3.6 03:24[主張]
沖縄県の米軍普天間飛行場に配備された新型輸送機MV22オスプレイが、本土では初となる低空飛行訓練を四国地区などで行う。
中国は尖閣諸島に対して領海、領空から攻勢を強めている。これに対処する日米共同防衛の能力を向上させるため、高性能のオスプレイの抑止力を活用することは不可欠だ。
日本も南西諸島防衛を強化する方針をとり始め、与那国島への沿岸監視部隊配備に向けた準備を進めている。だが、現状でその防衛力は不十分だ。
オバマ政権は歳出強制削減で巨額の国防予算の削減を迫られ、日本も安全保障面での自立を迫られている。自ら防衛費の増額や防衛力強化に取り組むとともに、同盟の抑止力を強化するため、飛行訓練の円滑な実施は当然である。
オスプレイは現行のCH46ヘリと比べ速度、搭載量、行動半径が2~4倍になる画期的な輸送機だ。尖閣有事には普天間からノンストップで即応でき、朝鮮半島までカバーできる。領海侵犯を続ける中国や、核・ミサイルを開発する北朝鮮に自制を促すためにも、この高い能力を生かさなければならない。
安倍晋三政権は来年度予算で防衛費を11年ぶりに増やしたが、前年度比400億円の増額は削減に歯止めをかけた程度だ。自衛隊の実員増強や防衛力強化のための装備の導入などを加速させる決断が求められる。同盟深化には、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更が必要なこともいうまでもない。
本土での飛行訓練には、在日米軍施設の74%が集中する沖縄の負担を軽減する意義もある。在日米軍は訓練のため、山口県の岩国基地や静岡県のキャンプ富士などに定期的にオスプレイを派遣する計画だ。これにより多くの訓練が沖縄から本土に移ることになる。
安倍首相も、2月の沖縄訪問時に「訓練をなるべく県外へ移す努力をする」と仲井真弘多知事に伝えている。負担軽減を現実のものにするのも、本土各地での訓練実施である。
政府、防衛省が間に入り、飛行訓練やその安全性に関する情報を可能な範囲で自治体に提供し、理解を得ていく作業が重要だ。
自治体側にも、抑止力を維持するため、負担を分かち合う覚悟が求められている。
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◆ 「オスプレイ怖い」と泣く日本/配備の意味を日本よりも理解している中国/グリーン氏 空輸能力・機動性 強調 2012-08-09 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
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◆ オスプレイが問う「日本は国家ではない」 / 国を守るということは、同盟国に保護されることではない 2012-09-30 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
【明日へのフォーカス】論説副委員長・高畑昭男
オスプレイが問う「心の絆」
産経ニュース2012.9.30 03:08
防衛省が主催した米海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイの体験搭乗に参加しての第一印象は「思ったよりも機体が小さい」だった。
定員24人の機内は、20~30人乗りの小型バスのようだ。天井は電子機器などのムキ出しの配線でびっしりと埋まり、いかにも軍用らしい。床から伝わる小刻みの振動と、「キンキン」と響く金属的なローター(回転翼)音が特徴的だ。
小ぶりなだけに小回りがきく。
ヘリコプターモード、スピード感のある飛行機モード、戦場などから高速で上昇・脱出する急速離脱モードの3モードを続けて使い分け、米軍岩国基地(山口県岩国市)の周辺をキビキビと飛び回った。
各モードに約7分、計20分余の短いフライトだったが、身の危険を感じることはなかった。最大の特徴である「可変式回転翼」の角度を変える際も、機内では気がつかないほどにスムーズだった。
オスプレイは現役のCH46ヘリよりも速度が2倍、搭載量が3倍、行動半径4倍の高い性能を誇る。オリンピックの標語風にいえば、「より速く、より高く、より遠く」へ兵員や物資を運ぶことができる。騒音も少ないという。
特に往復燃料や作戦行動なども含めた「行動半径」の差は重要だ。CH46の140キロに比べて、4倍の600キロある。普天間飛行場のある沖縄本島から尖閣諸島(約420キロ)までノンストップで往復作戦をこなせるのは画期的だ。
しかもCH46は空中給油ができないが、オスプレイは1回の空中給油で行動半径が1100キロに伸びる。沖縄中心の地図をみれば一目瞭然だが、これは朝鮮半島のソウル、台湾の全土、中国の上海、フィリピン北端までを含む大きな距離圏だ。
「米海兵隊の抑止機能が格段に向上し、日本の安全保障にかかわる大切な措置だ」と森本敏防衛相が強調するのは、日米同盟にとってのこうした利点からだ。中国側がオスプレイ導入に鋭く反発したのも、その威力を恐れての反応に違いない。
米海兵隊は既にイラクやアフガニスタンなどで実戦に活用し、全世界で約140機を運用中だ。それなのに、日本で「安全性」を口実にした一部の反対が続いているのは残念としかいいようがない。
体験搭乗で出会った米軍関係者は「既に世界中で使われており、安全性に疑問を感じたことはない。日本に来て初めて安全論争の存在を知った」と、過剰ともいえる安全論議に当惑し、顔をくもらせていた。
更新対象となるCH46は導入後40年が過ぎて老朽化が進み、日本の自衛隊でもとっくに退役ずみだ。そんな流れの中で、アジア太平洋の安全の要石を支える日本だけが米軍の装備更新を遅らせていていいのか。
一方で、尖閣諸島などで中国が攻勢を強める中で「アメリカは日本を守ってくれるのか」という疑問が国民の一部にある。だが、米海兵隊の手足を縛っておいて「助けてくれ」では、全く筋が通らないだろう。
オスプレイは災害救援でも活躍が期待できる。東日本大震災前に導入されていれば被災者救出や救援物資輸送に威力を発揮し、より多くの国民の生命や財産を救えたと思う。
同盟を強化する上で先立つものは装備の更新以上に心のつながりだ。オスプレイの「安全」に固執するあまり、日米の心の絆が損なわれる事態が心配だ。 *強調(太字・着色)は来栖
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『なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか』日高義樹著《ハドソン研究所首席研究員》
2012年07月25日1刷発行 PHP研究所
p1~
まえがき
日本の人々が、半世紀以上にわたって広島と長崎で毎年、「二度と原爆の過ちは犯しません」と、祈りを捧げている間に世界では、核兵器を持つ国が増えつづけている。アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国に加えて、イスラエル、パキスタン、インドの3ヵ国がすでに核兵器を持ち、北朝鮮とイランが核兵器保有国家の仲間入りをしようとしている。
日本周辺の国々では核兵器だけでなく、原子力発電所も大幅に増設されようとしている。中国は原子力発電所を100近く建設する計画をすでに作り上げた。韓国、台湾、ベトナムも原子力発電所を増設しようとしているが、「核兵器をつくることも考えている」とアメリカの専門家は見ている。
このように核をめぐる世界情勢が大きく変わっているなかで日本だけは、平和憲法を維持し核兵器を持たないと決め、民主党政権は原子力発電もやめようとしている。
核兵器を含めて武力を持たず平和主義を標榜する日本の姿勢は、第2次大戦後、アメリカの強大な力のもとでアジアが安定していた時代には、世界の国々から認められてきた。だがアメリカがこれまでの絶対的な力を失い、中国をはじめ各国が核兵器を保有し、独自の軍事力をもちはじめるや、日本だけが大きな流れのなかに取り残された孤島になっている。
ハドソン研究所で日本の平和憲法9条が話題になったときに、ワシントン代表だったトーマス・デュースターバーグ博士が「日本の平和憲法はどういう規定になっているか」と私に尋ねた。
「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」
私がこう憲法9条を読み上げると、全員が顔を見合わせて黙ってしまった。一息おいてデュースターバーグ博士が、こういった。
「おやおや、それでは日本は国家ではないということだ」
これは非公式な場の会話だが、客観的に見ればこれこそ日本が、戦後の半世紀以上にわたって自らとってきた立場なのである。
このところ日本に帰ると、若い人々が口々に「理由のはっきりしない閉塞感に苛立っている」と私に言う。私には彼らの苛立ちが、日本が他の国々とあまりに違っているので、日本が果たして国家なのか確信が持てないことから来ているように思われる。世界的な経済学者が集まる会議でも、日本が取り上げられることはめったにない。日本は世界の国々から無視されることが多くなっている。
日本はなぜこのような国になってしまったのか。なぜ世界から孤立しているのか。このような状況から抜け出すためには、どうするべきか。
「初心に帰れ」とは、よく言われる言葉である。したがって、六十余年前、日本に落とされた原爆の問題から始めなければならないと私は思う。(略)
日本はいまや原点に立ち戻り、国家と戦争、そして核について考えるべき時に来ている。日本が変わるには、考えたくないことでも考えなければならない。そうしなければ新しいことを始められない。
p228~
キッシンジャー博士ですら、アメリカのやり方で幸福になりたくはないと考えている人が世界に大勢いることに気がついていない。(略)
北朝鮮は世にも貧しい暮らしをしながら、核兵器を持ち、強力な軍事力を維持している。これは「アメリカの世界」に対する挑戦にほかならない。アメリカの核の抑止力による世界体制がほころびはじめたのである。
p240~
北朝鮮のクルージングミサイルは、沖縄や横須賀の基地だけでなく、アメリカの軍艦を攻撃する能力を十分に持っている。海兵隊を乗せて乗せて上陸作戦を行おうとするアメリカ第7艦隊の輸送部隊が沈められてしまうことになる。
中国と北朝鮮がミサイル戦力を強化したことによって、朝鮮半島と台湾をめぐるアメリカの戦略は大きく変わらざるを得なくなっている。アジア太平洋の他の地域についても同様である。中国が尖閣諸島を占領した場合、あるいは攻撃してきた場合、日本はアメリカ軍が応援してくれると期待している。日米安保条約がある以上、アメリカが日本を助けるのは当たり前だとほとんどの日本人が考えている。 (p241~)しかもアメリカは、決定的な抑止力である核兵器を持っている。限定された戦いにアメリカが介入すれば、勝つのは当たり前だと日本人は考えてきた。だが日本人は、この考え方が通用しなくなっていることを理解しなければならない。
朝鮮半島や台湾と同じように、尖閣諸島でも、あるいは南シナ海の島々でも、アメリカ軍は簡単に中国と戦うことができない。北朝鮮と戦うこともできない。アメリカの軍事力がアジア極東を覆い、日本の安全保障の問題はすべてアメリカが日本のために処理してくれる時代は終わってしまった。
アメリカ軍は世界のあちらこちらで、自国の利害に関わる問題に手を焼いている。自らの犠牲を顧みず、日本のために北朝鮮や中国と戦うことは出来ない。日本は自分の力で自分の利益を守らなくてはならない。
尖閣諸島の問題が起きたときに、アメリカが日本の利益を守ろうとすれば、アメリカ本土を狙う長距離攻撃能力を手にした中国と話し合いをつけなければアメリカ自身の国益を守ることができなくなるのである。簡単に言えば、日本に供与されてきたアメリカの「核の傘」がなくなりつうあるのだ。
台湾はすでに、この状況を理解している。自らの利益を守るため、アメリカの力を借りる代わりに、ミサイルを開発して三峡ダムや北京を攻撃する能力を持ちつつある。
p242~
韓国はすでにアメリカから中距離ミサイルの購入を始め、最新鋭の戦闘機F15Eを買い入れた。F15Eは日本の航空自衛隊が持つF15Jよりも優れた電子兵器を装備していることで知られている。
2012年3月に出版した拙著『帝国の終焉』でも述べたことであるが、アメリカの核抑止力がなくなり、アメリカが核の力で日本を助ける体制は、急速に消えつつある。アメリカの「核の傘」がなくなることは、戦後の半世紀にわたる日本の基本的な立場がなくなることを意味している。
p244~
いずれにしてもアメリカの力が大きく後退し、アメリカの抑止力がなくなれば、日本は世界の国々と対等な立場で向き合わなければならなくなる。対立し、殴り合ってでも、自らの利益を守らなくてはならなくなる。そうしたときに、好きか嫌いかという感情論は入る余地がないはずだ。(略)
アメリカの核兵器に打ちのめされ、そのあとアメリカの力に頼り、国の安全のすべてを任せてきた日本人は、これから国際社会における地位を、自らの力で守ることを真剣に考えなければならない。
p263~
あとがきに代えて--日本は何をすべきか
アメリカは核兵器で日本帝国を滅ぼし、そのあと日本を助けたが、いまやアメリカ帝国自身が衰退しつつある。歴史と世界は常に変わる。日本では、昨日の敵は今日の友と言うが、その逆もありうる。いま日本の人々が行うべきは、国を自分の力で守るという、当たり前のことである。そのためには、まず日本周辺の中国や北朝鮮をはじめとする非人道的な国家や、日本に恨みを持つ韓国などを含めて、常に日本という国家が狙われていることを自覚し、日本を守る力を持たなければならない。(略)
p264~
軍事同盟というのは、対等な力を持った国同士が協力して脅威に当たらねばならない。これまでの日米関係を見ると、アメリカは原爆で日本を破壊したあと、善意の協力者、悪く言えば善意の支配者として存在してきた。具体的に言えば、日本の円高や外交政策は紛れもなくアメリカの力によって動かされている。日本の政治力のなさが、円高という危機を日本にもたらしている。その背後にあるのは、同盟国とは言いながら、アメリカが軍事的に日本を支配しているという事実である。
いまこの本のまとめとして私が言いたいのは、日本は敵性国家だけでなく、同盟国に対しても同じような兵器体系を持たねばならないということである。アメリカの衛星システムやミサイル体制を攻撃できる能力を持って、初めてアメリカと対等な軍事同盟を結ぶことができる。もっとも、これには複雑な問題が絡み合ってくるが、国をまもるということは、同盟国に保護されることではない。自らの力と努力で身を守ることなのである。そのために、日本が被った原爆という歴史上類のない惨事について、あらためて考えてみる必要がある。
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