安倍晋三元首相(67)が奈良市での参院選の演説中に銃撃されて死亡した事件で、山上徹也容疑者(41)が「あそこ(安倍氏の背後)から行けたのでやった」などと供述していることが8日、捜査関係者への取材で分かった。山上容疑者は現場に赴いて背後の警護が手薄だと確認できたから銃撃に及んだことになる。事件は8日で1カ月。警護態勢の甘さは容疑者の供述からも改めて浮かび上がった。
安倍氏は7月8日、ガードレールに四方を囲まれた狭いエリアで演説中に山上容疑者に手製の銃で撃たれた。警察庁によると、ガードレール内には、警視庁のSPを含め4人の警護員が配置されていた。
奈良県警が作成した警護計画では、4人のうち1人はガードレールの外側で安倍氏の後方を警戒することになっていたが、警護員の安全確保のためガードレール内に配置を変更。安倍氏前方の聴衆が増えてきたことなどから位置を変更した警護員は安倍氏前方に警戒方向を変えていたという。
その結果、現場には警護員4人を含む十数人の警察官がいたが、後方を警戒する警護員は誰もいなくなり、1発目が発射されるまで山上容疑者に気づいた者はいなかった。
捜査関係者によると、山上容疑者は事前に足を運んで下見をしていた状況や、地図上などで現場を調べた形跡は確認できなかったが、演説開始の少なくとも1時間半前には現場付近に到着していたとみられる。
警察当局は、山上容疑者は現場に到着後に背後の警護が手薄だった状況を把握して犯行に及んだとみており、山上容疑者も県警の調べにそうした供述をしているという。
山上容疑者は事件前日の7日に岡山市内で行われた安倍氏の演説でも犯行の機会をうかがっていたことが分かっているが、会場の警備態勢が厳しかったことから犯行を断念していた。