不妊手術2700人分資料現存 旧優生保護法、強制被害裏付け (2018/1/26 中日新聞)

2018-01-26 | 社会

不妊手術2700人分資料現存 旧優生保護法、強制被害裏付け 
2018/1/26 朝刊
 「不良な子孫の出生防止」を目的に一九九六年まで存在した旧優生保護法を巡り、知的障害などを理由に不妊手術を施されたとみられる個人名が記された資料が、十九道県に約二千七百人分現存していることが二十五日、共同通信の調査で確認された。不妊手術を受けたとされる約二万五千人の一割にとどまるが、当事者の「被害」の裏付けとなる可能性がある。国は個人資料の保存状況を把握しておらず、実態調査など今後の対応が問われる。
 三十日には、旧法下で不妊手術を強いられた宮城県の六十代女性が国に損害賠償を求める初の訴訟を起こす。二月二日には仙台弁護士会が電話相談窓口を設置。札幌、東京、大阪、福岡の弁護士会にも窓口開設を呼び掛けており、資料開示や謝罪・補償を求める動きが広がるか注目される。
 約二万五千人の九割近くは関連資料が保存されていない可能性も判明。既に廃棄されたものが多いとみられ、識者は「当時の実態解明が困難になり、被害者への謝罪や賠償も難しくなる」と指摘している。
 四八年施行の旧法は知的障害や精神疾患の男女らへの強制も含めた不妊手術を容認。日弁連によると、国の優生保護統計報告などから、障害などを理由に手術を受けたのは約二万五千人で、うち約一万六千五百人は本人の同意を得ずに行われた。
 今回の調査は昨年十二月以降、全都道府県(担当部署と公文書館)に不妊手術に関する資料の有無を文書などで聞き、回答をまとめた。
 不妊手術を受けたとみられる人の氏名などが記された資料は、北海道など十九道県に二千七百七人分あった。内容は優生保護審査会の資料や手術費・入院費の支出書など。
 本人同意がないとみられるのは千八百五十八人で、同意は六人、不明は八百四十三人。性別は男性七百八十人、女性千九百十六人、非公表十一人だった。年齢別では成人千八百八十一人、未成年八百十一人、非公表十五人(うち一人は年齢層不明)。非公表の理由は「個人が特定される恐れがある」としている。
 資料がない理由は「保存期間を経過したため廃棄」(茨城、山梨など)が目立つ。内閣府によると、行政文書は、都道府県が公文書管理法に従い条例や規則で保存期間を規定。期限超過分は歴史的価値などを考慮し、永年保存か廃棄かを都道府県が決めるという。
 十九道県は岐阜、三重、滋賀など。

<旧優生保護法> 「不良な子孫の出生を防止する」との優生思想に基づき1948年に施行された。ナチス・ドイツの「断種法」の考えを取り入れた国民優生法が前身。知的障害や精神疾患、遺伝性とされた疾患などを理由に不妊手術や人工妊娠中絶を認めた。医師が必要と判断すれば、本人の同意がなくても都道府県の「優生保護審査会」の決定で不妊手術を行うことが可能で、53年の国の通知は身体拘束や麻酔使用、だました上での手術も容認していた。96年、障害者差別や強制不妊手術に関する条文を削除し、母体保護法に改定された。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です
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<優生手術>元勤務医、強制不妊の実態証言 結婚理由に(2018/1/27 毎日新聞)
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