【スポーツ Catch Up】中日・谷繁丸が船出 船長は落合GM その深~いワケって!?
産経新聞2013.10.14 18:00
12年ぶりのBクラス、ナゴヤドームで初めての観客動員200万人割れでドン底まで落ちた中日が、来季監督に選手兼任で谷繁元信捕手(42)を指名、新設のGMに前監督の落合博満氏(59)を据えた。白井文吾オーナー(85)のお気に入りとはいえ、一度はV監督解任を認めただけに、復帰の話も「じぇじぇじぇ」なのに、その立場が指揮官ではなく背広組とは…。これほどまで超サプライズになったのには、やっぱり深~いワケがあった。
高木守道前監督の任期が「今季限り」という方針になって以降、早くから新監督の最有力候補は、OBで野球評論家の立浪和義氏(44)とされてきた。だが「まだ若い」「コーチ経験もない」などと不安視する声が続出し、急速に実現の可能性はしぼんでいった。
ところが、代わりの候補がなかなか見つからない。立浪氏のほかに、元アスレチックス監督のケン・モッカ氏(64)、中日打撃コーチの井上一樹氏(43)らの名前が浮上しては消えていった。
球団関係者は「監督としての資質や、招聘への金銭的な問題などもあって、絞りきれなかった」と話す。
白井オーナーによると、9月になって落合氏と極秘会談をもった。その席で、谷繁の名前を挙げ、落合氏のGM就任と全面協力を得たという。
バックアップは素早かった。落合氏がGMの職務をやりやすいように手を打った。
フロントを大粛清。2年前の落合外しに動いた坂井克彦球団社長(68)ら球団首脳も退任となった。坂井氏は「その動きを中心になってやった人間が居座っているのは、筋としてよろしくないんじゃないか」と言葉を残した。
現場の首脳陣も鈴木孝政2軍監督らを一掃した。一方で落合GMの考え方に心酔したコーチ陣を揃えようとしている。谷繁内閣のヘッド格に野球評論家の森繁和氏(59)らの名前が挙がっている。
谷繁はクライマックスシリーズを前にした10日に、名古屋市内で就任会見を開き、落合GMに対しては、「8年間一緒にやってきた。僕の考え方も分かってくださっているし、落合さんの野球に対する考え方も多少なりとも分かっている。そういうことを考えると、意見を言えたりすると思う。自分の思うようにやりたい」と、言いなりにならず独自色を出すと宣言した。
落合GMもその翌日の11日、球団事務所に足を運び、7時間にわたり、球団首脳、ドラフトが間近なためにスカウト部長らと話し合いをした。
「GMは監督以上に責任が重い。優勝するチームをつくらなきゃ、やる意味がない。お客さんがナゴヤドームに見に来てくれるよう、チーム全部が思いを込めて野球をやらないといけない。この船は一度沈没しちゃったんだ。立て直すには倍じゃなく、3、4倍の力がいる」と、早期の復活を宣言した。
普段の活動については、「オレは黒衣に徹するだけ。オレが表に出るとやりづらいでしょ。それがチームを浮上させる一番のポイント」と、谷繁監督を後方支援に限定する。
ちなみに谷繁監督の契約年数は落合GMが明かしたところによれば、「最低4年と考えている。5年目は彼の手腕にかかっている」。落合GMとの正式契約はまだで、立場上は「社長の下です。文章の中にそれははっきりさせる」(佐々木球団社長)という。
微妙な立ち位置で、中日の落合GM-谷繁監督の新体制がスタートする。
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「落合GMの操り人形」説を打ち消す谷繁兼任監督のしたたかさ
日刊ゲンダイ2013年10月12日 掲載
傀儡(かいらい)ではないか、と心配する声がある。
確かに、中日の新体制は複雑だ。監督には選手兼任で谷繁元信(42)が就任し、そのバックには落合博満元監督(59)がGMとしてつく。谷繁監督は指導者経験がなく、しかもほとんど成功例のない兼任である。落合GMは監督としての実績も経験もはるかに豊富で、しかも白井オーナーから資金運営も含めたチーム編成の全権を約束されている。11日の就任会見では「新監督と話し合い、バックアップしていければいい。現場はすべて監督に任せ、表に出ることはほとんどない」と言いつつ、「優勝するチームをつくらないとやる意味がない。勝負事はそういうこと。それができなければ、すべて私の責任」とオレ流節全開で意欲を語った。後半部分は、監督復帰会見のようにも聞こえるのである。
が、25年もの間、正捕手の座を守り続ける谷繁監督もしたたかだ。復帰する森繁和ヘッドコーチら数ポストを落合人脈に譲りながら、二軍監督に佐伯貴弘氏、打撃担当にDeNAを退団したばかりの波留敏夫コーチの招聘(しょうへい)を内定。落合GMとの本格的な意見交換をする前に、ベイスターズ時代の同学年の仲間に声をかけた。水面下では、兼任監督就任の正式発表前からコーチ人事などの要望を球団に上げ、自らも動いていたという。
10日の就任会見では、落合GMについて「8年間一緒にやってきた。自分の考え方を分かってくださっている」と丁寧な言葉で言いつつ、「ボクは自分が思うようにやりたいです」ときっぱり言った。牽制は言葉だけでなく、会見直後にはそのままスカウト会議に飛び入りで出席。今月24日に開かれるドラフトの戦略に希望も出した。
「監督復帰? その話が来たとしても受けていない。谷繁をバックアップできる人間がいる。相当な覚悟をして、野球の知識があって、防波堤になれる人間は野球界にそういるわけじゃない」
と、落合GM。防波堤が決壊しないことを中日ファンは祈っている。
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「捕手谷繁に徹しろ」権藤博氏が指摘する“兼任監督”成功のキモ
日刊ゲンダイ2013年10月11日 掲載
あれもこれもは絶対ダメ
中日の新監督が谷繁(42)に決まった。今季、12年ぶりのBクラスに沈んだチームを、指導者経験がなく、しかも兼任監督という特殊な立場で立て直せるのか。ファンは不安が先に立つかもしれない。
が、「心配無用」と断言しておこう。私は、今の中日を再建するには、監督落合の復帰がベストだと思っていた。と同時に、谷繁も面白いと考えていた。中日の今季のチーム防御率はリーグ4位の3.81。秘密裏に導入された「飛ぶボール」の影響ももちろんあるとはいえ、リーグ2位だった昨年の2.58から大きく悪化した。中日の再建は投手陣の立て直しから。そう考えたとき、投手のことを最もよく知る人間といえば、谷繁を置いてほかにない。だから今回の人選は大ヒットになる可能性が高い。
ただし、条件がある。ズバリ、“監督をやらん”こと。兼任監督になったからといって背伸びはせず、キャッチャー谷繁に徹することだ。選手を育てるとか、攻撃の采配はどうだとか、あれもこれもやろうとしたらいけない。余計なことと言ったら語弊があるが、本分であるキャッチャー以外のことはコーチに任せることだ。投手のこと以外はやりません、くらいのつもりでいい。
そもそも、「野球は投手」といわれる。継投を含めた投手の起用が勝ち負けの80%を占める、と私も考える。その投手の球を実際に受けている谷繁が、監督として起用の権限を得た。これは、兼任監督の大きな強みで、ベンチから見て投手の良し悪しを判断するしかない他球団の監督に比べたら大きなアドバンテージになるだろう。それを最大限に生かすことを考えればいいのだ。
指導者経験のなさを心配する向きもあろうが、捕手は「監督の分身」とも、「現場監督」ともいわれるポジション。そのポジションを25年も守り抜き、今も日本一の捕手として第一線に立ち続ける谷繁は、すでに監督としての資質を十分に磨いているのと同じだ。心配はないだろう。
一貫しない起用法、我慢の足りない継投で、12球団一といわれた中日投手陣はボロボロになってしまった。しかし、個々の能力、レベルはどの球団と比べても引けは取らない。昨年、投手コーチをやった私がそれは保証する。要は使い方。監督谷繁ではなく、捕手谷繁が力を発揮すれば、来季は間違いなく優勝争いの輪に入れると思う。
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球団内外から聞こえる中日新監督・谷繁の「素顔」と「評判」
日刊ゲンダイ2013年10月10日 掲載
<律義な親子>
まさかの人事だ。すったもんだの揚げ句、中日の新監督は谷繁元信捕手(42)に決定。来季は現役を続けながらの兼任監督となる。同時に、04年から8年間指揮を執った落合博満前監督(59)がゼネラルマネジャー(GM)として編成面を担当することになった。
10日午前に行われた就任会見で谷繁新監督は、「正直、え、自分がという感じ。いつかはこういう日がくるかなとは、ほんの少し思っていた。(落合GMとは)8年間一緒にやってきた。ぼくの考え方も分かってくださっているし、落合さんの野球に対する考え方も多少なりとも分かっている。そういうことを考えると、意見を言えたりすると思う。何をやったら勝てるか、こういうことをやったら負けるという、野球を知っている選手ばかり。ゼロで抑えれば負けない。そういう野球になる」と熱く語った。
それにしても思い切った決断だ。最近の兼任監督といえば、06年から2年間ヤクルトを率いた古田敦也氏がいるものの、当時の古田監督は選手としては衰えが著しく、「監督」の方が本業だった。
だが、谷繁は今も押しも押されもせぬ中日の正捕手だ。打者を打ち取るためにフル回転させている頭で、チーム全体のことまで考え、目を配らなければならない。かなりの激務だ。
谷繁の横浜(現DeNA)時代のヘッドコーチだった黒江透修氏は、「捕手をやりながら采配を振るのは大変だろう。監督になれば若い捕手も育てなければならない。自分は、試合後半の『抑え捕手』やスタメンは大事な試合に限定するのではないか。いずれにしても、球界屈指の名捕手がどんな野球を見せてくれるのか楽しみですよ」と言う。
その谷繁とは、一体どんな人物なのか。
1970年12月、広島生まれ。島根・江(ごう)の川(かわ)高(現石見智翠館高)から88年ドラフト1位で大洋(現DeNA)入団。98年には横浜の38年ぶりの日本一に貢献。01年オフに中日へFA移籍。今年5月には、史上最年長の42歳4カ月で2000本安打を達成。来年には野村克也氏の通算出場記録(3017)にあと117で並ぶ。
中日の白井文吾オーナーが「考える力を持っている。非常に前向きな男」と言う谷繁は、「律義な男」と評判だ。横浜時代に世話になった先輩などには中元、歳暮を欠かさない。毎年キャンプでは裏方をゴルフや食事に誘い、日頃の労をねぎらう。
それは父・一夫さんの影響だろう。一夫さんは谷繁が2000本安打を達成したとき、神宮のスタンドにいた。その際、多くのメディアから取材を受けた。後日、名刺を受け取った記者に礼状を出し、達筆の手紙を読んだ多くの記者は恐縮。その礼状は日刊ゲンダイ本紙記者の元にも届いた。
<媚びない、ブレない>
気配りの捕手は今回、監督就任を受諾するにあたり、候補に挙がっていた立浪和義(44)と連絡を取った。谷繁は中日の生え抜きOBである立浪に「外様で若い自分が先に監督やっていいのでしょうか」と相談したという。
落合前監督同様、人には媚(こ)びない。横浜時代から投手にもズバッと厳しいことを言うから、「谷繁さんは苦手」と言う若手も確かにいる。
一方で、怒鳴って叱るだけの捕手ではない。
例えば、クイックが苦手な若い投手には「盗塁阻止はバッテリーの共同作業だ。おまえはクイックがうまくなるようもっと練習してくれ。俺も速い送球ができるよう研究し、練習する」と言って説得する。実際、暑い夏場も、肩の筋力を維持するため、三塁でノックを受けて一塁へ全力で投げる姿を投手は皆知っている。
はっきりした物言いは相手が年上でも同じだ。前出・黒江氏は「評論家になってからもよく話すが、『その点についてはボクはこう思います』といつもブレない」。
今年はベンチでこんなことがあった。
「捕手が本職の松井雅が一塁で起用された。ミスして高木監督が文句を言うと、シゲは『(一塁の練習は)何もやっていないのだから、満足なプレーはできるはずはないですよ』と言って松井をかばった」(中日OB)
年俸更改の時には自分のことより、「若い生え抜きは今のままじゃダメです。意識を変えないと近い将来、チームはボロボロになりますよ」と歯に衣着せずに言う。ひとつ間違えば球団批判とも受け取られかねないことでも平気で語る。
「ちょっと言い過ぎることもあるが、裏表のない男」というのが球団内での谷繁評だ。
プロ入り当時は打ち取った打者の配球をすぐに忘れることから、首脳陣から赤ん坊のつけるおしめになぞらえて「パンパース」と呼ばれた高卒捕手が、今季セ全球団に負け越し、12年ぶりのBクラスに沈んだ中日の再建に乗り出す。お手並み拝見だ。
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◇ 中日がまさかの新体制 「谷繁監督&落合GM」決定の舞台裏 2013-10-10 | 野球・・・など
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◇ 中日 GMに落合博満氏 谷繁元信捕手が兼任監督 / 白井オーナー 「谷繁は考える力持っている 前向きな男」 2013-10-09 | 野球・・・など
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◇ 「落合博満前監督から学んだこと」谷繁元信・中日ドラゴンズ捕手 2012-01-27 | 野球・・・など
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