<補助犬>死んだシンシア…「グッドガールだったよ」

2006-03-14 | 社会
 ゆっくりと余生を楽しんでほしかった――。14日に息を引き取ったシンシアは、兵庫県宝塚市のコンピュータープログラマー、木村佳友さん(45)と二人三脚で歩んできた。障害のある人が当たり前に暮らすための身体障害者補助犬法の制定を後押しし、つぶらな瞳と人なつっこい性格で誰からも愛された。昨年12月の介助犬引退から間もない死。「グッドガールだったよ」。木村さんは、静かに語りかけた。
 シンシアは1月中旬の緊急手術後、衰えが目立つようになった。この日はリビングで横になり、物音がすると立ち上がっていたが、午前10時ごろ容体が悪化。苦しむ様子もなく木村さんらに見守られながら正午前に息を引き取った。木村さんの妻美智子さん(43)らが毛布にくるみ、そばには白や薄紫の花、ドッグフードなどが添えられた。近所の人らも訪れ、「シンちゃん、最期まで頑張っていたね」と泣きながら頭をなでた。
 いたずら好きだったシンシアは、木村さんが「少しでもおとなしくなれば」と育成団体に預けたことで、介助犬の才能を開花した。ハーネス(胴輪)を着けると仕事モードに入り、何時間もおとなしく伏せ、木村さんの指示で物をくわえて運んだ。楽しそうに働く姿は周囲を笑顔に変えた。
 98年に毎日新聞が「シンシア」キャンペーンを始め、02年に身体障害者補助犬法が成立するまでの4年間、ペットの扱いをされていた介助犬を社会で認めてもらおうと木村さんはシンシアと奔走した。毎週のように出演した講演会、厚生労働省の検討会、各種シンポジウム、テレビ出演。好奇の視線にさらされても、シンシアは落ち着いて木村さんをサポートし、介助犬が障害者の自立にどれだけ役立つのかを身をもって伝えた。
 シンシアが仕事をするのはえさが欲しいからでも体罰が怖いからでもなく、木村さんに笑顔で「グッドガール! シンシア」とほめられたいからだった。決してスーパードッグではなかった。
 冷たくなったシンシアを前に木村さんは語った。「天国に行ったら、僕たちのことを見守ってね」
【山本真也、脇田顕辞、服部陽】
(毎日新聞) - 3月14日20時55分更新

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