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リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 第3回公判②被告人質問 2011/7/7

2016-05-15 | 死刑/重刑/生命犯

* 「リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件 市橋達也被告 第3回公判①証人尋問 弁護側提出の証拠調べ 2011/7/7」からの続き

【英国女性殺害 市橋被告3日目(5)】「何か飲む?」被告は誘われ、部屋に入ったと強調
 《第3回公判は、昼の休廷を挟んで再開した。いよいよ市橋被告本人への被告人質問が始まる》
 弁護人「あなたは初日の公判で『事件の日に何があったか話すのが義務だ』と話しましたが、覚えていますか」
  被告「はい、覚えています」
 《市橋被告は、法廷に響くほどの大きな声で述べた。弁護側はまず、リンゼイさんと出会うまでの状況について尋ねていく》
 弁護人「平成17年3月に千葉大学を卒業しましたね?」
  被告「そうです」
  弁護人「大学では主に何を学んでいましたか」
  被告「主に植物について。公園や広場のデザイン、設計を学びました」
  弁護人「卒業後はどういう進路を考えていましたか」
  被告「大学と同じ分野で、海外の大学院で学びたいと思っていました」
 《市橋被告は、一言一言言葉を選ぶようにゆっくりした口調で答えていく》
 弁護人「17年の大学卒業から事件の19年3月までについて聞きます。仕事はしていましたか」
  被告「していません」
  弁護人「収入はどうしていましたか」
  被告「親に仕送りをしてもらっていました」
  弁護人「留学準備は、具体的にどんなことをしていましたか」
  被告「留学に必要なTOEFL(トーフル)テストというものがあり、対策の参考書を使い、英語の勉強をしていました」
 弁護人「リンゼイさんを、初めにどこで見かけたんですか」
  被告「最寄り駅の(千葉県市川市の東京メトロ)行徳駅の改札前広場で見かけました」
  弁護人「見かけて、どう思いましたか」
  被告「すれ違った後、数カ月前に私が洗濯機の水漏れを直し、英語の個人レッスンを頼んだ若い白人女性に似ていると思いました」
  《検察側は、初公判の証拠調べで、リンゼイさんが「洗濯機を直したのは僕です」と市橋被告から話しかけられた、とするリンゼイさんの親友の△△さん(法廷では実名)の証言を明らかにしている。実際に市橋被告が洗濯機の修理を行ったかについては、これまでの公判でも触れられていない》
 弁護人「そのときの女性に似ていると思って、どうしましたか」
  被告「もしそのときの若い白人女性なら、もう一度レッスンを頼もうと思いました」
 弁護人「その後、リンゼイさんはどこに行きましたか」
  被告「行徳駅の中に入っていきました」
 《その後、リンゼイさんの後をついて、西船橋駅で電車を降りた市橋被告。質問は、駅前通りで声をかけた市橋被告とリンゼイさんの対面と会話の内容に迫っていく》
 弁護人「何と声をかけたんですか」
  被告「『突然、話しかけてすいません。少し話してもいいですか』と言うと、リンゼイさんはうなずいてくれました。私は、リンゼイさんに『私のことを覚えていますか』と尋ねました」
 弁護人「英語で話しかけましたか。日本語ですか」
  被告「全て英語です」
  弁護人「リンゼイさんは何と答えましたか」
  被告「『違うと思います』と言いました」
  弁護人「それからリンゼイさんはどうしましたか」
  被告「自転車に乗って、通りの方に走っていきました」
  弁護人「あなたはどうしましたか」
  被告「駅の方に歩いてから、リンゼイさんが走った方向と思う方へ走っていきました」
  弁護人「リンゼイさんと会えましたか」
  被告「団地のような場所の街灯のところで、リンゼイさんが自転車を降りているところを見つけました」
 弁護人「何と声をかけましたか」
  被告「『また怖がらせてごめんなさい。どこ(の国)から来ましたか』と聞きました」
  弁護人「リンゼイさんは?」
  被告「『イングランドから』と答えていたと思います」
  弁護人「他に何か話しましたか」
  被告「はい。『私は海外で風景建築、公園設計、広場設計を学びたい。英語を教えてくれませんか。教えてくれれば、もちろんお礼をします』と話しました」
  弁護人「それに対してリンゼイさんは何と答えましたか」
  被告「リンゼイさんは笑ってくれて、『何か飲む?』と聞いてきてくれました」
 《リンゼイさんに誘われて部屋に上がった、と説明する市橋被告。リンゼイさんの母、ジュリアさんは口を手で覆い、険しい表情で市橋被告を見つめる》
 弁護人「リンゼイさんの部屋には誰がいましたか」
  被告「リンゼイさんの他に、若い白人女性2人がいました」
  弁護人「歓迎された、と思いましたか」
  被告「思いませんでした」
  弁護人「部屋に入って、どうしましたか」
  被告「絵を描かせてほしい、と言いました」
  弁護人「なぜ絵を?」
 被告「部屋の雰囲気を和ませたかったので」
  弁護人「描かせてくれた人はいましたか」
  被告「はい」
  弁護人「誰ですか」
  被告「リンゼイさんです」
 《リンゼイさんの絵を描いた後、他の2人には断られたと市橋被告は説明する》
 弁護人「描き終わってどうしましたか」
  被告「絵に私の名前、電話番号、メールアドレス、日付を書いてリンゼイさんに渡しました」
  弁護人「リンゼイさんの反応は?」
  被告「受け取ってくれました」
  弁護人「リンゼイさんもメールアドレスを教えてくれましたか」
  被告「はい」
 《10~15分間、部屋で過ごし部屋を出ると、時間は既に深夜で終電はない。市橋被告は西船橋駅に戻り、インターネットカフェで一泊したという》
 弁護人「リンゼイさんから連絡先を聞いてどう思いましたか」
  被告「うれしかったです。」
  弁護人「どうして、うれしいと思いましたか」
  被告「リンゼイさんから英語の個人レッスンを受けられるかもしれない、と思ったからです」

【英国女性殺害 市橋被告3日目(6)】「リンゼイさんと親密な関係になれたらいいな」被告の言い分に遺族怒り
 《市橋被告への弁護側の被告人質問が進む。男性弁護士は市橋被告とリンゼイさんがメールで約束した英会話の個人レッスンの内容について確認していく》
  弁護人「どういう約束をしたのですか」
  被告「日曜日(平成19年3月25日)の午前9時に(東京メトロ)行徳駅前で会って、駅前で1時間のレッスンを受けることになりました」
  《市橋被告は時折、はなをすすり、ゆっくりとした口調で答えた》
  弁護人「25日は何時に起きましたか」
  被告「午前8時40分です」
  弁護人「(待ち合わせ時間の直前に起きたのには)何か事情があったのですか」
  被告「よく寝てませんでした。25日深夜(未明)、私は当時つきあっていた女性と外で会っていました。自分の部屋に戻ったのは朝4時ごろでした。そ...そこから、帰って眠ったので、起きたときが8時40分ごろです。寝坊したのです」
 弁護人「リンゼイさんと会ってどうしましたか」
  被告「駅前のコーヒーショップに一緒に入りました」
  弁護人「どんなレッスンを受けましたか」
  被告「私の趣味の話、お互いの好きな映画女優の話、(19)98年の(サッカー)フランスワールドカップの話、(映画化された)ハリーポッターの話を(英語で)しました」
  弁護人「レッスン料はコーヒーショップで払いましたか」
  被告「いいえ、払っていません」
  《弁護側は冒頭陳述で、市橋被告は待ち合わせ時間直前に起床したことで慌てたため、レッスン料を持っていくことを忘れたと主張。市橋被告もこの趣旨に沿った返答を行った。一方、検察側は冒頭陳述で強姦目的で『レッスン料を家に忘れた』と口実を使って自宅に誘い込んだと指摘しており、双方の主張は真っ向から対立している》
 弁護人「いつ代金を忘れたことに気づきましたか」
  被告「コーヒーショップに入って飲み物を注文し、支払うときに財布の中身を見たときです」
  弁護人「どうして、そのときに(レッスン料を忘れたことを)言わなかったのですか」
  被告「そのときに言ったら、レッスンを受けられなくなるかもしれないし、受けたとしても、レッスンの雰囲気が悪くなると思ったからです」
 弁護人「どうするつもりだったのですか」
  被告「レッスンが終わったころにリンゼイさんにお金を忘れたことを謝って、(自宅に)取りにいけばいいと思いました」
  弁護人「忘れたことを伝えたとき、リンゼイさんはどんな反応をしていましたか」
  被告「リンゼイさんは『それだったら急がなければいけない』と言いました」
 《これまでの公判で、リンゼイさんが同日午前10時50分から語学学校でレッスンの予定があったことが明らかになっている。2人はコーヒーショップを出た後、タクシーに乗って市橋被告方のマンションに向かっている》
 弁護人「タクシーの中でリンゼイさんと会話を交わしましたか」
  被告「していません」
  弁護人「タクシーはどのあたりに止まりましたか」
  被告「マンション前のガソリンスタンドです」
  弁護人「タクシー運転手と何か話しましたか」
  被告「はい。私がタクシー料金を払った後、運転手に『ここで5、6分待っていてくれませんか』と言いました」
  弁護人「あなたはどうするつもりだったのですか」
  被告「私は走って自分の部屋に行き、お金を取って戻ってきて、リンゼイさんにレッスン料を渡すつもりでした」
  弁護人「運転手の答えは?」
  被告「『それはできない』などと言っていました。私は運転手に『それだったら5、6分後にここに来てくれないか』と言いました」
  弁護人「運転手は何と答えましたか」
  被告「運転手は『ここに電話してくれればいい』と言って、タクシー会社の電話番号が書かれた領収書を渡してきて、行ってしまいました」
 《弁護側はこのやり取りで、市橋被告が当初から強姦目的で自宅まで連れて行ったわけではないということを訴えたいようだ》
 弁護人「タクシーが去ったとき、リンゼイさんは何か言いましたか」
  被告「はい。リンゼイさんは『私はどうやって帰ったらいいの?』と言っていました」
  弁護人「それで、あなたはどうしたのですか」
  被告「マンションに歩いていきました」
 《市橋被告とリンゼイさんは4階にある市橋被告の部屋に向かうため、エレベーターに乗り込んだ。検察側の冒頭陳述によると、エレベーターでリンゼイさんは、しきりに腕時計を見るなど、時間を気にしていたという》 弁護人「あなたはエレベーター内で何を考えていましたか」
 被告「私はタクシーが行ってしまったから、リンゼイさんは仕事に間に合わないと思いました。このままリンゼイさんと親密な関係になれたらいいな、と勝手に思っていました」
  《「親密な関係」を通訳が訳したとき、検察側の後方に座る母親のジュリアさんは隣のウィリアムさんを見つめ、顔を振りながら怒気をはらんだ表情となった。一方、傍聴人席の最前列に座るリンゼイさんの姉妹も遺影を膝の上に置き、市橋被告の背中に厳しい視線を注いでいた》
 《弁護人は「ここでいったん休憩を」と求め、堀田真哉裁判長が20分間の休廷を宣言。午後2時半から弁護側の被告人質問が再開される》

【英国女性殺害 市橋被告3日目(7)】「私を殺すつもりね」抵抗しながらリンゼイさんが発した一言
 《男性弁護人は、リンゼイさんが市橋被告の部屋に入ってからの状況を質問した》
 弁護人「あなたの部屋にリンゼイさんが入ったあと、あなたはどうしましたか」
  被告「入ったあと、私は手を伸ばしてリンゼイさんの後ろから抱きつきました」
 弁護人「なぜ、抱きついたのですか」
 被告「彼女とハグ(抱き合うことを)したかったからです」
  弁護人「場所はどこですか」
  被告「玄関です」
  弁護人「そのとき、リンゼイさんはどのような反応だったのですか」
  被告「リンゼイさんは強く拒絶しました」
  弁護人「それでどうしたのですか」
  被告「私は誘惑に負けました。...(しばらく黙ったあと)、私はリンゼイさんを廊下に押し倒しました」
 弁護人「リンゼイさんはもちろん抵抗しましたよね?」
  被告「しました」
  弁護人「あなたはどういう行為をしましたか」
  被告「抵抗するリンゼイさんを押さえつけました」
  《泣いているのか、市橋被告がはなをすする音が法廷に響く》
  弁護人「どういう体勢でリンゼイさんを押さえつけたのですか」
  被告「リンゼイさんは廊下にあおむけになり、私はその上にまたがるように乗りました」
  弁護人「具体的にはどういうことですか」
  被告「リンゼイさんの手足を私が押さえつけるようなかたちです」
  弁護人「リンゼイさんの着ている服を破ったりしていますか」
  被告「してます」
  弁護人「顔面を殴ったり、頸部を圧迫したりしましたか」
  被告「それはしていません」
  弁護人「リンゼイさんはどのくらい抵抗しましたか」
  被告「数分間、抵抗しました」
 弁護人「あなたは(抵抗するリンゼイさんに対して)どうしましたか」
  被告「手首と足首に、結束バンドをはめました」
  弁護人「その後どうしましたか」
  被告「リンゼイさんを姦淫しようとしました」
 弁護人「あなたはすぐに姦淫することができましたか」
  被告「できませんでした」
 《市橋被告は、リンゼイさんを乱暴しようと、避妊具の装着を試みたが、うまくいかなかったため、避妊具をそのままゴミ箱に捨てたという》
 弁護人「それからどうしましたか」
  被告「私はリンゼイさんを姦淫しました」
 《男性弁護人は質問を変えた》
 弁護人「結束バンドは何の目的で持っていたのですか」
  被告「私の部屋の配線コード類をまとめて、壁に掛けるために、前年(平成18年)、ホームセンターで買いました」
  弁護人「結束バンドはどこにありましたか」
  被告「玄関の靴箱の上、壁際にある収納棚にまとめて置いてありました」
 《男性弁護人は、計画的に結束バンドを準備したわけではなかったと主張したいようだ》
 《続いて、男性弁護人は法廷内に設置された大型モニターに市橋被告の部屋の見取り図を示して、姦淫した場所の確認をした後、別の男性弁護人に交代した》
 弁護人「あなたがしたことは、リンゼイさんの気持ちを踏みにじった強姦行為だと分かっているのですか」
  被告「...はい」
  弁護人「強姦した後、どのような行動をしましたか」
  被告「私は寝室に置いてあった、テンピュール(低反発)のマットレスを廊下に持ってきて、廊下で横になっているリンゼイさんの下に敷きました」
 《一言一言区切るように話す市橋被告。はなをすする音がますます大きくなった》
 弁護人「なんでそんなことをしたのですか」
  被告「彼女に申し訳ない気がしたので...」
  弁護人「それは冷たい床で横たわっているリンゼイさんをいたわる気持ちからですか
 被告「はい」
 弁護人「あなたが脱がしたリンゼイさんの服はどこに置きましたか」
  被告「彼女のそばに置きました」
  弁護人「布団の上ですか」
  被告「そうです」
 《弁護人の質問に対して市橋被告は、リンゼイさんが失禁した事実を述べた。ジュリアさんは手で顔を覆っている》
 弁護人「あなたはどうしましたか」
  被告「リンゼイさん(の体)を洗おうと思いました」
  弁護人「どこに連れて行こうと思いましたか」
  被告「浴室です」
 《市橋被告は、リンゼイさんを抱きかかえて浴室に連れて行こうとしたが、抵抗されたことを話した》
 被告「リンゼイさんを抱きかかえて風呂場に連れて行こうとすると、リンゼイさんは『私を殺すつもりね』と言いました。リンゼイさんが風呂場に行くことを強く拒否したので、連れて行けませんでした」
  弁護人「あなたはその後、リンゼイさんをどこに連れて行こうとしましたか」
  被告「リンゼイさんを抱きかかえたまま、和室に運びました」
 弁護人「その後どうしましたか」
  被告「結束バンドを切りました」
  弁護人「どうして切ったのですか」
  被告「そのときリンゼイさんは裸でした。私のグレーのパーカをリンゼイさんの上半身に着てもらうためです」
  弁護人「実際に着せたのですか」
  被告「はい」
 《男性弁護人は、市橋被告がリンゼイさんに着せたというパーカを大型モニターに映し出した》
 弁護人「これですね」
  被告「はい」
  弁護人「その後、あなたは灰色のパーカを着せたまま、リンゼイさんを浴槽に入れたでしょう?」
  被告「はい」
  弁護人「その後、さらに上に何か掛けたでしょう」
  被告「はい」
  弁護人「何を掛けましたか」
  被告「私が着ていた茶色のジャケットを彼女の上半身に掛けました」
 《男性弁護人の指示により、大型モニターに茶色のジャケットが映し出される》
 弁護人「リンゼイさんの服をそばに置いていたのに、なぜそれを掛けなかったの?」
 《市橋被告はリンゼイさんが失禁したためだと答えた。男性弁護人は小さくうなずいた》
 弁護人「さっき敷いていたマットレスはどうしたの?」
  被告「...。外のベランダに掛けました」
  弁護人「あなたが逃走したあと、ベランダに掛かっていたマットレスですね」
  《答えを考えているのか数秒黙ったあとでこくこくとうなずいて答えた》
  被告「そのはずです」
  弁護人「一度外した結束バンドをその後、どうしましたか」
  被告「もう一度、彼女の手首にはめました」
  弁護人「リンゼイさんの体はどうしましたか」
  被告「黒いパーカとバスタオルを持ってきて掛けました」

【英国女性殺害 市橋被告3日目(8)】「痛いから足首の結束バンド外して」 被告は冷たく「できない」
 被告「それで浴槽を持ってきてリンゼイさんに、その中に入ってもらったんです」
 弁護人「浴槽に入れたのは何時ごろのことですか」
  被告「私とリンゼイさんが私の部屋に入ってから、1時間後ほどのことだったと思います」
  弁護人「(平成19年3月)25日午前11時ぐらいということですか」
  被告「だと思います」
  弁護人「リンゼイさんを姦淫し、行為が終わった後、あなたはどういう気持ちだったんですか」
  被告「リンゼイさんに悪いことをしたと思いました」
  弁護人「また姦淫するつもりはあったんですか」
  被告「ありません」
  弁護人「あなたは悪いことをしたというが、じゃあ、これからどうしようと思ったんですか」
  被告「なんとかしてリンゼイさんに許してもらわないと、許してもらいたいと思いました」
 《この返答に、弁護人は少し語気を強める》
 弁護人「こんなにひどいことをして許してもらえると思ったんですか」
  被告「思いませんでした。すぐには許してもらえないと思いました。そのとき、私が考えたことは、なんとか彼女に話しかけて、人間関係をつくったら、許してもらえるんじゃないかと思いました」
 弁護人「あなたが浴槽を置いたのは、4・5畳の和室ということだよね」
  被告「そうです」
  弁護人「浴槽はどのへんに置いたのか言える?」
 《弁護人は市橋被告に、犯行現場となったマンションの間取りを示す》
 被告「4・5畳の和室の壁際の真ん中あたりです」
  弁護人「壁っていうとたくさんあるので、図面でいうと?」
  被告「この4・5畳の左側の壁際の真ん中あたりに私は浴槽を起きました」
  弁護人「ラジカセがあったけど、その前あたりですか」
  被告「はい」
 《その位置は、弁護人が実況見分や証拠写真を使って示した浴槽の排水口の跡が畳に残っていた位置と一致する》
 弁護人「4・5畳の部屋にはあなたもいた?」
  被告「はい」
  弁護人「座っていた?」
  被告「私は座っていました」
  弁護人「話はしました?」
  被告「はい」
  弁護人「被害者はどんな話をしましたか」
  被告「リンゼイさんは4・5畳の和室の左側の壁際に私が張っていた、私が書いた『走っているチーター』の絵をみて、私に『この絵は間違っている。私は大学で生物学を学んでいたから分かるんだけど、このチーターのおなかは出すぎている』と言ってくれました」
  《弁護人はチーターの絵の写真を市橋被告に提示する。大型モニターに映し出された絵は、鉛筆かボールペンのようなもので描かれたモノクロのスケッチで、横から見たチーターが描かれていた》
 弁護人「誰が描いたのですか」
  被告「私です」
  弁護人「さきほどのは、この絵のことですね」
  被告「そうです」
  弁護人「そのほかにあなたのほうから話しかけることはありました?」
  被告「ありました」
  弁護人「どんな話でした?」
  被告「私はリンゼイさんに、キング牧師の演説の内容を尋ねました」
  弁護人「どんなテーマの演説ですか」
  被告「『I HAVE A DREAM』。『私には夢がある』という題名のスピーチです」
  弁護人「訪ねたことに被害者は?」
   被告「私がその演説の最初の部分をリンゼイさんに尋ねると、リンゼイさんは黒人は奴隷解放宣言のあと、黒人は自由を手にしたけれども、奴隷のときは生活や 仕事に保証があったけど、自由を手にしたことで、生活や仕事の保証がなくなった面があるということを教えてくれました」
  弁護人「そういう話を聞いてどう思いましたか」
  被告「私はそういう考えもあるのだなと思いました」
 弁護人「他には?」
  被告「あります」
  弁護人「項目的にいうとどんなこと?」
  被告「私は、リンゼイさんにカトリックとプロテスタントの違いを尋ねました。それとリンゼイさんが日本に来るまでに、どんな国に行ったことがあるのかということも尋ねました」
  弁護人「あなたとすると人間関係を作ろうと話しかけたということでしょうか」
  被告「はい」
  弁護人「被害者はずっと答えてくれましたか」
  被告「いいえ」
  弁護人「どうしてですか」
 被告「リンゼイさんが答えるのがしんどくなったんだと思います」
  弁護人「そうすると、あなたは話しかけるのをやめた、控えたのですか」
  被告「はい。控えました」
  弁護人「そうしたら、どうなりました?」
 被告「リンゼイさんから、甘いものがほしい。飲み物がほしいと言われました」
  弁護人「それに対してどうしましたか」
  被告「私は台所に行ってミネラルウオーターと黒砂糖を...」
  被告「私は台所に行ってミネラルウオーターと黒砂糖を取ってきて、リンゼイさんの口の中に入れました」
  弁護人「そのほかに求められたものは?」
  被告「リンゼイさんは私に手首の結束バンドが痛いから外してほしいといいました」
  弁護人「それに対しては?」
  被告「また台所に行ってキッチンばさみを持ってきて、彼女の結束バンドを切りました」
  弁護人「次に何を求められましたか」
  被告「リンゼイさんは私に足首の結束バンドも痛いから外してほしいと言いました」
  弁護人「それに対しては?」
  被告「私は『できない』といいました」
  弁護人「ほかには?」
  被告「リンゼイさんは私にトイレに行きたいといいました」
  弁護人「それに対してどうしました?」
  被告「リンゼイさんに浴槽から出て、廊下のトイレに行ってもらいました」
  弁護人「だけど足首は外してないと言っていたのに、どうしたんですか」
  被告「足首はトイレに行く前に外しています」
 《つじつまがあわない発言に弁護人は質問を続ける》
 弁護人「戻ったあとでまた足首に(結束バンドを)したということですか」
  被告「違います。順序が違います」
  弁護人「では言ってみて」
  被告「私がリンゼイさんの...」
 《そこまで言ったところで、市橋被告は言葉を止めて言い直す。英語を意識してのことか、主語と述語の使い方にこだわりがあるようだ》
 被告「リンゼイさんから私に、足首が痛いから外してほしいといい、私はできないといいました。リンゼイさんがトイレに行きたいと言ったのは、だいぶ後の話です」
 《弁護人は順を追って説明するように市橋被告に言い、質問を続ける》
 弁護人「では、さきほどの話の続きの中で求められたことは?」
  被告「あります。リンゼイさんはたばこが吸いたいと私に言いました」
  弁護人「それに対しては?」
  被告「私はできないと言いました」
  弁護人「足首を外してとか、たばこを吸いたいとか言われ、『できない』『できない』と答えたんだよね」
  被告「ええ」
  弁護人「そのときの心境は?」
 《市橋被告は言葉を詰まらせ沈黙する。10秒ほどたったところで、弁護人が根負けした》
 弁護人「じゃあ質問を変えるけど、イライラとか怒ったとか、感情的なものがなかったのかということなんだけどね」
  被告「ありました」
  弁護人「それはどんな気持ち?」
  被告「私は...。リンゼイさんに対して...。イライラしていました」
 弁護人「なぜイライラしたんですか?」
  被告「私がリンゼイさんが逃げたいことは、私はもちろん分かっていました。でも、リンゼイさんがいうことを私がすべてしていたら、リンゼイさんが逃げてしまうと思って、私はイライラしました」
  弁護人「それであなたはどういう行動を取ったんですか」
  被告「私はリンゼイさんの顔を殴っています」
 弁護人「それは感情的にキレたということですか」
  被告「はい」
  弁護人「何回ぐらい殴りましたか」
  被告「私はリンゼイさんの顔を2回殴っています」
 弁護人「リンゼイさんのいる浴槽に寄っていて殴った?」
  被告「そうです。はい」
  弁護人「どちらの手で殴りました?」
  被告「最初に左のこぶしで、次に右のこぶしで殴りました」
 《淡々としながらも事件当時の怒りの感情に言及した市橋被告。リンゼイさんの両親の鼻は赤く、キッと市橋被告をにらみつけている。ここで法廷は20分の休憩に入った》

【英国女性殺害 市橋被告3日目(9)】「私の人生は私のもの」決然 言い放ったリンゼイさんの言葉
 弁護人「抵抗できない被害者を2発、しかも強い力で殴った。なぜそんなひどいことをしたんですか」
  被告「私はかっとなりました」
  弁護人「どうしてかっとなったんですか」
  被告「リンゼイさんから『たばこを吸いたい』といわれて、私は『できない』といいました。それからやり取りがあって、私はかっとなってリンゼイさんの顔を殴りました」
  弁護人「しかし、あなたは人間関係をつくって許してもらう気でいたんではないんですか」
  被告「そうです」
  弁護人「感情的に殴りつけて、穏便には済まなくなってしまった?」
  《市橋被告は涙声で答えた》
  被告「そうです」
  弁護人「その後、どう考えたんですか。後悔の他には?」
  被告「彼女、リンゼイさんに逃げられてはいけないと思いました」
  弁護人「どうしてですか」
  被告「私がリンゼイさんを姦淫(かんいん)した上に、殴ったからです」
  弁護人「では、どうしようと思ったんですか」
  被告「今はダメだけど、何とか許してもらいたいと、それだけ思っていました」
  《浴槽の中で手足を縛られたリンゼイさんとともに、4畳半の和室にいた市橋被告。弁護人は2人の会話について尋ねていく》
  弁護人「リンゼイさんは何と話しましたか」
  被告「『トイレに行きたい』と言いました」
  弁護人「他には?」
  被告「リンゼイさんの家族構成についても話を聞きました」
 弁護人「他には、どんな話をしましたか」
  被告「リンゼイさんは『私は子供をたくさん産みたい。私の人生は私のもの』と言いました」
  弁護人「他には?」
  被告「『(リンゼイさんの)ルームメートがパーティーに行っている。今なら大丈夫』と言いました」
 《リンゼイさんは今無事に返してくれれば取り返しがつくと、伝えようとしたようだ。弁護側は、市橋被告がもっぱら聞き役だったことも強調したいようだ》
 弁護人「(平成19年)3月26日午前0時半ごろ、当時の彼女にメールをしていますね」
  被告「出しています」
 《「これから1週間ぐらい部屋にこもって勉強します。1週間電話しない」という内容のメールについては、初公判の証拠調べでも紹介されている》
 弁護人「1週間の間に、被害者と人間関係をつくろうと思っていたんですか」
  被告「はい、そう考えていました」
 《ここから、リンゼイさんが死亡に至る経緯について、質問が始まる》《当時の彼女にメールを出した市橋被告はそのまま眠りについたが、3月26日午前2~3時の間に目を覚ましたという。浴槽の中のリンゼイさんの様子を確認すると、手の結束バンドが外れていたという》
 弁護人「外れているのを見て、どうしましたか」
  被告「外れている、と思った瞬間、リンゼイさんはこぶしで私の左こめかみを殴りました。頭を壁にぶつけ、何が起きたか分かりませんでした」
  弁護人「その後は?」
  被告「大きな音がしました」
  弁護人「何の音?」
  被告「リンゼイさんを探すと、浴槽が倒れていました」
  弁護人「音は浴槽が倒れた音だったんですか」
  被告「分かりません。左こめかみを殴られ、壁に打ちつけられたときに大きな音がしました。浴槽が倒れ、リンゼイさんが浴槽から出ていました」
 弁護人「リンゼイさんの体勢はうつぶせですか」
  被告「はい」
  弁護人「静かにはっていたのですか」
  被告「いいえ。大声を出して逃げていこうとしました」
  弁護人「それはどんな声でしたか」
  被告「獣のようなうなり声でした」
 《女性通訳が「animal」(動物)の単語を発すると、リンゼイさんの母、ジュリアさんは大きく首を振った》
 弁護人「声を聞いてどう思いましたか」
  被告「下の住人に声が聞こえてしまうと思い、追いすがりました」
 弁護人「リンゼイさんに声を出されないようにするだけの目的で腕を伸ばしたんですか」
  被告「いいえ。逃げられないようにするためです」
  弁護人「そうすることで声は止まりましたか」
  被告「止まりませんでした」
  弁護人「それで、どういう行動をとったんですか」
  被告「左腕をもっと伸ばして、彼女の顔を巻くようにしました」
  弁護人「リンゼイさんの様子はどうでしたか」
  被告「リンゼイさんは、まだ声を出していました。前に進んでいこうとしていました」
  《市橋被告の語る「リンゼイさんの死」が目前に迫り、法廷内は緊張感に包まれる》

【英国女性殺害 市橋被告3日目(10)完】リンゼイさんが動かなくなるまで」覆い被さった被告の殺意は...
 弁護人「どのような言葉を言われたのですか」
  被告「アイ・ガット・イット、アイ・ガット・イット、ハハハ」
  弁護人「その言葉の意味は分かりましたか」
  被告「『分かった、分かった、ハハハ』だと思います」
  弁護人「それを聞き、どう思いましたか」
  被告「私はリンゼイさんを全然押さえ込めておれず、逃げてしまうと思いました」
  弁護人「リンゼイさんはその状態で前に進もうとしていましたか」
  被告「はい」
  弁護人「あなたはどういう行動に出ましたか」
  被告「私は体を前に倒すようにしてリンゼイさんの上に覆いかぶさりました」
 弁護人「なぜ覆いかぶさったのですか」
  被告「リンゼイさんが声を上げないように、リンゼイさんが逃げないようにするためでした」
  弁護人「覆いかぶさってどういう効果があると思いましたか」
  被告「覆いかぶされば、リンゼイさんが逃げないし、声を上げても響かないと思いました」
 弁護人「覆いかぶさったとき、左腕をリンゼイさんに巻き付けるようにしていたと言っていましたが、そのとき左腕はどこにありましたか」
  被告「下にいるリンゼイさんの下に、私の左腕がありました」
  弁護人「リンゼイさんの体の下のどの辺りにありましたか」
  被告「私の左腕が私の体と、リンゼイさんの体の下にあり、私が覆い被さったときに左腕がリンゼイさんの体の下のどこにあったのかまでは分からないのです」
 《市橋被告はやや不自然な言い回しで答えた。市橋被告ははなをすすり、息が上がっているようだ》
 弁護人「左腕は自由に動かせましたか」
  被告「動きませんでした」
  弁護人「左腕は抜けなかったのですか。引き抜けなかったのですか」
  被告「抜けませんでした」
 《市橋被告は嗚咽をもらしたような声を出したが、その表情はうかがえない。弁護人はさらに左腕がリンゼイさんの体のどのあたりに接触していたかについて質問を重ねたが、市橋被告は「分かりませんでした」と繰り返した》
 弁護人「リンゼイさんを押さえつけた状態で、リンゼイさんの顔がつぶれることを心配しなかったのですか」  被告「リンゼイさんの顔の下は畳でした。そのとき、リンゼイさんの顔がつぶれるとは考えていませんでした」
 弁護人「一昨日の公判で医者の証言を聞いたでしょ? あなたの左腕で被害者の喉が圧迫されたことも考えられると言っていたでしょ? 被害者の喉を圧迫した認識はありましたか」
 被告「左腕がどこにあるか分かりませんでした」
  弁護人「覆いかぶさっていたとき、右手はどうなっていましたか」
  被告「右手は...、私の...右横で...。私はリンゼイさんの体に乗りかかった状態から、右側に右手を立てました」
 《市橋被告は、実際にその場で右腕を動かしながら、右腕で畳をおさえ、体を支えていたと説明した》
 弁護人「左腕と右腕が結ばれていたということはありますか」
  被告「ありません」
  弁護人「あなたが覆いかぶさったとき、リンゼイさんの後頭部はどの辺りにありましたか」
  被告「私の胸の下にリンゼイさんの後頭部がありました」
  弁護人「あなたは体をリンゼイさんの上に乗せ、リンゼイさんは声を出さなくなりましたか」
  被告「出さなくなりました」
  弁護人「体は動いていましたか」
  被告「リンゼイさんの体は暴れていました」
  弁護人「乗ったとき、どうしようと思ったのですか」
  被告「リンゼイさんが動かなくなるまで、リンゼイさんの上に覆いかぶさろうと思いました」
  弁護人「動かなくなるまでとは?」
  被告「リンゼイさんが抵抗しなくなるまでです」
  弁護人「抵抗しなくなるまでとは?」
  被告「申し訳ありません」
 《質問には答えず、はなをすすりながら謝罪する市橋被告。弁護人は「そうじゃなくて」と言い、質問を重ねる》
 弁護人「抵抗しないとはどのような状態を想定していたのですか」
  被告「逃げるのを諦めるまで...」
  弁護人「(リンゼイさんが)逃げるのを諦め、声を出さなくなったら、どうするつもりだったのですか」
  被告「リンゼイさんから離れるつもりでした。リンゼイさんにまた、(直前まで縛って監禁していた)浴槽の中に入ってほしかった」
 《市橋被告の声は消え入るようにか細くなった。弁護側はこれまでのやり取りで、市橋被告に殺意がなかったことを強調したいようだ。弁護人は大型モニターに、市橋被告がリンゼイさんを押さえつけた状況を絵で描いた紙を映し出した》
 《市橋被告がリンゼイさんの体の上に半身を乗せたような状態で左手で口付近を押さえているところから、完全に覆いかぶさって左腕をリンゼイさんの体に差し込むまでの過程が5枚に描かれている》
 《市橋被告は弁護人の「これはどういう状況?」という質問に答える形で、絵の解説を行ったが、途中で涙声で「すみませんでした」と謝罪した》
 弁護人「完全に覆いかぶさった状態でどれくらい時間が経ちましたか」
  被告「私の感覚では短かったのです」
  弁護人「その後、どうなりましたか」
  被告「リンゼイさんは動かなくなりました。リンゼイさんが逃げるのを止めたと思いました」
 弁護人「リンゼイさんは下を向いていましたか」
  被告「はい」
  弁護人「あなたはリンゼイさんを仰向けに起こしましたか」
  被告「起こしました」
  弁護人「どうなっていましたか」
  被告「リンゼイさんは両目を開けていました。目の焦点は合っていませんでした」
 《傍聴人席で目頭をハンカチで押さえ、泣く姉妹たち。検察側の後方に座る両親も目に涙をためながら、姉妹たちを心配するように見つめていた》
 《市橋被告はその後、人工呼吸、心臓マッサージを説明した》
 弁護人「あなたは心臓マッサージの技術を持っていましたか」
  被告「持っていません」
 《一般的に心臓マッサージで胸骨は骨折するとされるが、リンゼイさんの胸骨は折れていなかった》
 弁護人「(胸が折れるような)やり方で心臓マッサージをしたのですか」
  被告「していません」
  弁護人「被害者を殺害しようとしたのですか」
  被告「思っていませんでした」
 《リンゼイさんの両親は「信じられない」という表情をしながら、ほぼ同時に体をのけぞらせた。殺意の有無は裁判の最大の争点となっており、弁護人は質問を続ける》
 弁護人「死んでもいいと思いましたか」
  被告「思いませんでした」
  弁護人「死んでしまうかもしれないとは」
  被告「思わなかった...。すみません」
  弁護人「左腕がリンゼイさんの首を圧迫していると分からなかった」
  被告「分からなかった...」
 《絞り出すように答えた市橋被告。弁護人は「予定したものは終わりました」と堀田真哉裁判長に告げ、堀田裁判長は閉廷を宣言した。8日午前10時から被告人質問が続けられる》

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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