大飯原発再稼働 手続き先行 / 再稼働の是非を政治家に委ねたのでは拙速感は否めない

2012-03-16 | 政治

再稼働 手続き先行 地震想定 変わる可能性 大飯原発ストレステスト
中日新聞  《核 心》 2012/3/14Wed.
 原子力安全委員会は、経済産業省原子力安全・保安院が妥当とした関西電力大飯(おおい)原発(福井県)3、4号機の安全評価(ストレステスト)の一次評価を大筋了承した。だが、安全委は一次評価を了承しても、原発再稼働に直接結びつくものではない、との見解。想定する地震や津波の見直しが迫られる中、地元が求める新たな安全基準も政府は示していない。手続きだけが進み、再稼働の是非を政治家に委ねたのでは拙速感は否めない。(原発取材班・福田真悟、桐山純平)
■不十分
 「炉心の冷却機能を復活させる際、ベント(排気)などの作業を手動でするとあるが、放射線量が高くても本当に弁にたどり着けるのか」
 13日の安全委の検討会では、委員らから突っ込んだ質問が相次いだ。しかし、保安院の担当者は「そちらは二次評価でやっていきたい」を連発。簡易版である一次評価の限界が見えた。
 一次評価はあくまでもどれぐらいの津波、地震の揺れが起きれば非常用電源などが被害を受け炉心溶融などの重大事故につながるか弱点を見つけるためのものだ。事故後の対処や発電所全体への影響などは二次評価に委ねられている。二次評価はいまだに電力各社から一つも出ていない。
 「一次と二次を合わせて総合的安全評価だと思っている」と繰り返してきた班目春樹委員長は、一次評価の内容自体は大筋了承する考えを示しながらも、「再稼働については、しかるべきところで判断していただければいい」と突き放した。
■再検討
 安全評価を進める上での疑問も浮上している。原発はそれぞれ想定している津波や地震の大きさが異なるが、東京電力福島第一原発事故を受けて再検討が進められた結果、想定する断層やその規模が見直しになる可能性が出ている。
 保安院は断層に関する意見を専門家から聞く会合を6日から始めているが、大飯原発でも、複数の断層が連動する可能性が専門家から指摘されている。関電はシミュレーションをやり直したが、まだ保安院がその根拠を確認中だ。
 北海道電力泊原発などでも、想定する断層が変更になる可能性がある。電力事業者は、想定する最大の揺れの何倍まで耐えられるか、といった形で評価結果をまとめているが、揺れの想定数字が変わってしまうこともあり得る。
■対策案
 安全委が確認結果を首相らに提出すれば、再稼働問題の焦点は地元の同意と首相らの最終判断に移る。ただ、福井県議会で県幹部は「安全評価は机上の調査」と批判。再稼働の条件として福島の事故を踏まえた新たな安全基準を求めている。
 その下敷きになりそうなのが、保安院が検討中の30項目からなる対策案。格納容器の圧力を下げるため蒸気を放出するベント設備の改善や、電気設備の分散・多様化が盛り込まれている。
 ただし、その内容も具体的には決まっていない上、大飯原発も含めた国内の原発では30項目をほとんどクリアできていない。
 「住民に会合に参加してもらい、再稼働の流れを知ってもらうことが大事」。今年1月に大飯原発を視察した国際原子力機関(IAEA)の調査団は日本政府にくぎを刺した。
 だが、地元が納得できる基準を示さないまま、再稼働の手続きだけが進んでいる。
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大飯原発 政治判断の段階ではない
信濃毎日新聞 2012年03月15日(木)
 福井県の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働問題が、大詰めを迎えている。
  関西電力が行った安全評価の1次評価結果について、原子力安全委員会が検討会を終え、近く見解をまとめる。
  これを受け、野田佳彦首相や枝野幸男経済産業相らが協議、地元に説明して理解が得られれば政治判断する段取りだ。
  いよいよ最終段階へと足を踏み入れるが、前のめりと言わざるを得ない。原発の安全性について、腰を据えて検証する姿勢を野田内閣に求める。
  首相は東日本大震災から1年の記者会見で、立地自治体や地元への協力要請に関して「政府を挙げて説明し理解を得る。私が先頭に立たなければならない」と強調した。大飯原発の再稼働に向けた決意と受け取れる。
  現在稼働中の原発は、54基中2基のみである。このままでは日本経済の足を引っ張りかねないとの懸念は理解できるが、だからといって再稼働にかじを切ることにはあまりに疑問が多い。
  第一に、1次評価を検証した経産省原子力安全・保安院と原子力安全委員会は、国民の信頼を失ったままである。
  新たな原子力規制庁は、4月1日からの発足が疑問視されている。抜本改革がなされないままことを進めても、国民の納得を得るのは難しい。
  第二に、1次評価だけでいいか、といった疑問がある。
  安全評価は地震や津波、電源喪失などの事態に対して、どの程度余裕があるかをコンピューターで解析するものだ。再稼働の条件となる1次評価と、全原発を対象とする2次評価がある。
  安全委の班目春樹委員長は「2次評価は検討の深さが違う」「安全評価は1次と2次がセット」などと述べ、1次評価だけでは不十分との見解を示している。
  3月末で退任の意向を表明している班目氏が、専門家として最後にブレーキをかけたとも受け取れる。政府は軽視すべきではない。
  第三に、大飯原発周辺の活断層の評価である。保安院が現在、詳しい検討を進めており、3月末に判断するという。想定される揺れや被害にかかわるだけに、丁寧な検証が要る。この点がはっきりしないまま、安全性の判断はできないだろう。
  大飯原発の再稼働をめぐっては、周辺自治体の住民の反対も強い。野田首相は広く世論に耳を傾けてもらいたい。
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あれから一年、早くも復活する原発「安全神話」 / 再稼動が他党や経済界との取引材料に2012-03-16 | 地震/原発


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