第3部 不正資金は年間50兆円 本当の人口は16億人 突然、公開処刑の招待状が届く あまりにも奇妙な国 中国の正体 日本人よ、もう覚悟したほうがいい 中国は本気だ
現代ビジネス「経済の死角」2012年11月02日(金)週刊現代
■流行語は「全民腐敗」
「長年にわたって職権を乱用して殺人に絡み、巨額の賄賂や財宝を受け取り、多数の女性と不当な性関係を持ち、勝手な人事を横行させ、党と人民に重大な損失を与えた・・・・・・」
これは、9月28日に公表された、薄熙来・前重慶市党委書記の〝数々の悪行〟に関する『審査報告書』の記述だ。
薄熙来前書記は、共産党「トップ25」の一人という権力者だっただけに、まさにやりたい放題。一説によると、腐敗総額は邦貨にして8000億円! 愛人列伝も、女優、テレビキャスター、モデル・・・・・・と、名前が挙がっているだけでざっと50名に上る。薄書記がテレビを見て、「あの女がいい」と子飼いの富豪に漏らすと、その美女はすぐさま薄書記の「一夜妻」として捧げられたという。もし拒否すると、渤海湾に沈められることになる。ちなみにこの共犯の富豪も、3月に御用となった。
だが薄書記の「ご乱行」など氷山の一角の一角に過ぎない。中国では「全民腐敗」が流行語となるほどに、上から下まで〝ミニ薄熙来化〟が進んでいるからだ。
■「これでは国が滅んでしまう!」
'07年9月に、憂国の士・温家宝首相の肝煎りで、国家予防腐敗局なる官庁が設立され、全国各地に支部も設置された。局長は、中国版のマルサ出身のコワモテ馬馼女史。「わが国の不正資金の総額は年間4兆元(約50兆円)にも上る」として、徹底した腐敗撲滅を宣言した。
こんな中央官庁が成立してしまう国は、世界広しといえども中国くらいだろう。だがいまや、国家予防腐敗局員自身の腐敗疑惑がネット上で暴露されたりして、この貴重な官庁の屋台骨が揺らいでいる。
そんな中央官庁では、昨年からようやく「三公」(公用車費、接待費、海外出張費)の一部公表を始めた。そもそもこの制度が始まった原因は、首都・北京の大渋滞だった。
一昨年暮れ、北京はついに、一日あたりの新車増加台数が5000台を突破した。街中の大通りから路地裏まで車だらけ。レストランを予約する際には、まず駐車場を予約しないと行き着けない。困った市民らが空きスペースの多い学校内に平気で停め出したため、学校の敷地内の交通事故が急増して社会問題になった。
また市内ばかりか、京蔵高速道路の北京と内モンゴル自治区オルドスの間は、わずか200kmの距離を進むのに20日間(!)もかかるという世紀の大渋滞に直面した。毎時数センチずつ進むため運転手は夜も眠れず、高速道路の両脇は汚物の山と化した。この責任を巡っても、北京市と内モンゴル自治区で激しいバトルとなった。
北京市当局はまた、市内の渋滞は、市民のマイカーブームのせいだと言い訳した。だが、市民派の一女性弁護士が、10万台にも上る幹部の公用車が原因であることを暴露し、市民の怒りが爆発した。
それで中央官庁は「三公」の公表を始めたのだったが、歴代の副部長(副大臣)以上全員に生涯、公用車と秘書を与えるといった手厚い幹部優遇策が続いているため、渋滞は一向に解消されない。
■免許証もカネで買えます
腐敗と並んで横行しているのが、偽物である。
今年4月に、中国中央テレビの正義感溢れるディレクターが、「北京市内で市販されているカプセル薬のカプセルは、廃棄された靴のゴムを原料にしている」という暴露番組を流し、首都がパニックになった。市政府は中央テレビに圧力をかけ、このディレクターをクビにしたが、市民の怒りで一斉調査をせざるを得なくなった。すると「古靴カプセル」の製造は、北京どころか全国各地で〝日常化〟していることが発覚したのだった。まさに薬を飲んで病を得る構図だ。
他にも、〝江蘇省名物〟爆発スイカは日本でもすっかり有名になったが、1ヵ月で太るブタの肉や10秒で育つモヤシなど、にわかには信じられない食品が平然と売られている。実に中国の化学(薬品)の進歩には目を見張るものがある。
化学薬品を使っていなくても、汚物をこねた月餅(これぞ有機月餅?)や腐った肉を使った北京ダックなどが、堂々と売られて問題化した。「地溝油」と呼ばれる下水の汚水油を、料理油として出荷している業者は、全国に300万人もいると言われている。汚水醤油や汚水酢など、何でもござれだ。
広東省の大手石灰工場は、石灰の汚水を「ミルクティ」として市販していた。乳幼児の結石患者を多数生んだ河北省の「毒粉ミルク」工場は、問題が表面化しても平然と〝生産〟していた。
先日、北京市でマオタイ酒の一斉調査を行ったところ、マオタイ工場の全出荷量の20倍もが市販されていた。このため、中国人が海外旅行する際、最も喜ばれる土産は、海外に流出した本物のマオタイ酒という珍現象が起こっている。
日本では東京駅が装いを新たにして話題を呼んでいるが、北京駅も昨秋、改装した。駅前広場を封鎖し、「愛国、創新、包容、厚徳」という「北京精神」の巨大看板を掲げたのだ。
誰も読まないこの〝広告塔〟設置のために、駅前広場で大事な〝商い〟をしていた人々が移動を余儀なくされた。
例えば、どんな領収書でも額面の1割払えば偽造してくれる「領収書屋」。不可思議な地図を売る「偽地図売り」。200元(約2500円)で買春させてくれるオバサン娼婦・・・・・・。
中国の鉄道全線の切符も、昨年6月より実名制(購入時に身分証を提示し切符に実名が印刷される)になった。あまりに偽切符が跋扈し、同じ指定席に10人もが座ろうとするといったトラブルが続発したためだ。
ちなみに鉄道業務を統轄していた劉志軍鉄道相も昨年、汚職で逮捕された。邦貨にして100億円近く不正蓄財していたとされる。さらにこうした脱税を摘発していた北京市の王紀平税務局長も、昨年秋に多額の収賄と愛人問題でブタ箱に入った。
身分証と言えば、年間1800万台も新車が売れる社会だけに、運転免許を取る中国人が急増しているが、偽免許証も溢れている。自動車教習所の隣に「1時間で免許証作ります」などと書いた店ができ、摘発されたりしている。他にも偽学生証、偽卒業証書、偽就業証に偽営業許可証など、まさに偽物天国だ。
中国のセブン—イレブンで買い物をすると、客が出した札をまずは偽札鑑別器にかける。数年前は100元(約1250円)札のみだったが、いまや50元札や、場合によっては20元札まで鑑別器にかける。それくらい相互不信社会になった。
偽物を作るのは、一部の悪徳業者ばかりとは限らない。お上の「偽発表」も絶えないのだ。例えば、地方政府の「GDP水増し発表」が常態化したため、いまでは中央の国家統計局が、独自に地方の統計を集計している。その国家統計局では昨年、二人の幹部が、「GDP統計を発表前に民間金融機関に流し多額の賄賂を受け取っていた」として、摘発された。
お上の「偽発表」の最たるものと言えば、人口統計だろう。中国は一昨年秋、大々的にキャンペーンを行い、全国人口調査を実施した。その結果が昨年4月に発表され、中国の総人口は、13億3972万4852人とされた。
ところが中国は、18桁の身分証明書番号で公安局が国民を厳格に管理しているため、そもそも人口調査など必要ないのである。公安局関係者によれば、すでに中国の人口は、16億人に迫っているとか。人口が分かっていてわざわざ人口調査を実施するのは、少なめの人口を内外に発表するためだという。
中国では人口5000人以上の漢族以外を「少数民族」と規定しているが、四川省、雲南省、チベット自治区、新疆ウイグル自治区などでは、「未調査」の民族がまだまだ存在している可能性があるという。'08年5月の四川大地震でも、死者約9万人と発表されたが、実際は「未知の少数民族も含めれば、10万人を超えていた」と漏らした当局者もいた。
■日本人駐在員が続々死亡
中国は、偽食品などの犯罪を容認しているわけではもちろんない。むしろ中国の刑法は大変厳格で、全452条から成る分厚い刑法を繙くと、「死刑」のオンパレードだ。実際、中国は世界最多(ただし北朝鮮は不明)の年間約3000人も処刑している。処刑は毒殺、絞殺、銃殺など受刑者の好みで選択できるが、銃殺の場合は弾代の請求が遺族に回ってくるという。
現在では、処刑の1時間前に「最後の一服」としてタバコをサービスするようになった。だがひと昔前までは、サッカースタジアムなどで、見せしめのための派手な公開処刑が一般的に行われていた。そして処刑の1時間前には、死刑囚が衆人環視の中で、中国中央テレビの・独占インタビュー・を受ける習慣があった。中央テレビのアナウンサーは、まるでスポーツのヒーローインタビューよろしく、「いまの気持ちをお聞かせください」「この気持ちを誰に伝えたいですか」などと、矢継ぎ早に聞いていく。
この公開処刑の「招待状」は、日系企業にも送られてきた。「招待状」が届いたら、仕事をスッポかしてでもスタジアムへ向かわないと、当局のコワ~いペナルティが待ち受けている。
このように日系企業は、日本では思いも寄らない多種多様な「賦役」をお上から課せられる。所轄でない隣町の税務署が突然、不当な税金を取り立てに押しかけて来たり、町の労働組合なる団体が社員給与の2%を請求に来たりする。不肖の息子の就職を押しつけてくる役人もいる。
中国では店舗一つ開くにも、計10機関ものお上のハンコが必要だ。その上、すべての「店名」も許可制である。昨秋、ある日系企業が北京で美容院を開こうとしたが、10回近く申請しても、漢字と英語交じりのオシャレな店名が許可されず、頭に来て代表者が自分の名前を店名欄にも漢字で書いたら許可されたというウソのような実話もある。
こうした面倒を回避するには、やはり賄賂が有用で、商社などは、「中国の特色ある消費税」と称して、5~10%くらいを賄賂用に積み立てているほどだ。
こうした苦労が絶えないことから、日本人は自殺や白酒の一気飲みによる心臓麻痺などで、年間100人以上、中国で死亡している。中国駐在は命がけなのだ。
そんな日本人のストレスを見透かしたように、このほど北京の不動産業者が、日本人単身赴任者向けに、「美女付き賃貸マンション」のサービスを始めたところ、大ヒットしている。家具付きの部屋に足を踏み入れると、タンスから美女が「熱烈歓迎!」と飛び出してきて「24時間サービス」を提供してくれるとか。
だが美女にハマった二人の大手日系銀行職員が、このほど摘発されて国外追放処分になった。中国は甘ったるい国ではないのである。
「週刊現代」2012年10月20日号より
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