<人工透析>刑務所の9割で装置不備 105人が刑執行停止
(毎日新聞 - 10月18日 15:11)
刑務所で人工透析治療を受けられないとの理由で、9月末現在105人が刑の執行を停止されていることが法務省の調べで分かった。全国の刑務所のうち、専用の治療装置を備えるのは約1割に過ぎず、最大で70人程度しか対応できないという。こうした現状を緩和しようと、19日に開所する新刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」(島根県浜田市)は、1施設としては最多の30人に対応できる治療装置を整える。
法務省によると、105人のうち82人は治療装置を備えた刑務所に空きがないなどの理由で、収容前に刑が執行停止された。23人は服役中に透析治療が必要となったが、所内に装置がないなどの理由で執行停止となった。105人は自宅などから通院治療している。
現在、支所を含め全国に刑務所は69カ所あるが、治療装置が配備されているのは8施設だけ。装置の数も▽「医療重点施設」に指定されている6刑務所に計27台▽大阪と八王子(東京)の両医療刑務所に計8台--の計35台に過ぎない。
このため、島根あさひ社会復帰促進センターには、人工透析患者30人程度に常時対応可能な15台を配備。今後、人工透析が必要な受刑者を順次受け入れていくという。
センターは、法務省が民間の資本やノウハウを活用する「PFI方式」を採用した全国4番目の刑務所。犯罪傾向が進んでいない「A級」男子受刑者2000人を収容する予定で、身体障害者のリハビリや精神・知的障害者のカウンセリングなどの医療態勢の充実に力を入れている。
センターの林隆志調査官は「刑の適正執行に向け、人工透析の治療装置を有効活用できるよう、受け入れ態勢を整えていきたい」と話している。
【ことば】人工透析
腎臓の機能が低下し、血液を浄化できなくなった患者を対象とした治療で、人工腎臓と呼ばれる装置を使って血液をいったん外部に出し、老廃物を取り除き体内に戻す。日本透析医学会によると、07年末現在の慢性透析患者数は約27万5000人。患者は週2~3回のペースで数時間かけ、装置を使った治療が必要となる。