無年金や低年金のお年寄り 保険証を取り上げられて事実上の「無保険」

2009-10-27 | 政治
後期医療の滞納者保険証 広域連合の8割、返還要求検討
朝日新聞2009年10月25日
 75歳以上が対象の後期高齢者医療制度を運営している全国の広域連合のうち、8割にあたる37都道府県が保険料の滞納者から保険証の返還を求めることを検討していることが、朝日新聞の調べでわかった。滞納者の多くは無年金や低年金のお年寄りと見られ、来年2月にも保険証を取り上げられて事実上の「無保険」状態に追い込まれる可能性がある。
 長妻昭厚生労働相は23日のテレビ番組で、保険証を取り上げないという趣旨の発言をし、事態に対応する構えを見せ始めた。だが、保険証を返還させて事実上の「無保険」となる資格証明書(資格証)を発行するのは制度を担う広域連合。現場には政権交代後に新たな方針は届いておらず、「大臣の発言だけでは変わらない。今のところは出す方向で準備を進めている」(広島県の広域連合)といった反応が出ている。
 朝日新聞が10月中旬、全国47都道府県の広域連合に資格証を発行するかどうか尋ねたところ、「発行する方向で検討する」と答えたのが東京、愛知、大阪など37都道府県。「発行しない方向で検討する」が岩手、宮崎の2県、「未定」が富山など7県。栃木県は回答を保留した。
 この制度は08年4月にスタート。多くの高齢者は年金から保険料を天引きされており、滞納者は無年金や低年金のため市町村窓口などで保険料を支払うことになっているお年寄りに多いとされる。
 旧制度では、75歳以上の高齢者に対するこうした制裁措置はなかった。批判を受けた厚労省は、有効期間が短いものの保険証と同様に使える短期保険証(短期証)の交付でまず対応するよう全国に指示。通知に従い、多くの現場では短期証が滞納者に交付されており、これまで資格証が発行された例はない。
 短期証の発行総数は40道府県で計3万4521人分(8月1日時点)。兵庫県が5462人と最も多く、大阪府が4666人。一方、神奈川県など7都県ではゼロだった。
 このうち、新たに資格証を「発行する方向」と答えた37都道府県は2万6682人に短期証を発行済みだ。このまま機械的に資格証に移行すれば相当数のお年寄りが「無保険」状態となる恐れもある。
 民主党は衆院選のマニフェスト(政権公約)で後期医療制度の「廃止」を掲げたが、長妻厚労相は着任後に即時廃止を断念、12年度末に廃止する方針を固めた。新制度移行まで約3年半は現行制度が継続する結果となり、様子見だった自治体の中に、保険証の返還を求める動きが広がったと見られる。
 大阪府の広域連合は、政府の新方針が定まらぬ9月末、資格証についての対応を全国の広域連合に照会。厚労省にも問い合わせたうえ、「大阪独自で資格証を発行しないと決めるべきでない」と判断し、制度に従って発行する方向で検討を始めた。(浅見和生、稲垣大志郎)
     ◇
 〈資格証と短期証〉 広域連合は1年以上の滞納者に対し、「特別な事情」がない限り保険証の返還を求め、代わりに資格証を交付しなければならない、と法に定められている。資格証になると受診の際、窓口で医療費をいったん全額自己負担しなければならず、事実上の「無保険」となる。
 短期証は正規の保険証と同様の機能を持つが有効期間が3カ月や6カ月などと短い。頻繁な更新が必要となるため滞納者との接触機会が増え、納付を促すことができるとされている。

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