米国とイスラエル、相次ぎユネスコ脱退発表
2017年10月13日
米国とイスラエルは12日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)を脱退すると発表した。米政府は、ユネスコが「反イスラエル」で偏向していると批判。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は米政府の決定を「勇敢で道徳的だ」と称賛した。
米国務省によると、2018年12月に正式にユネスコを脱退した後、ユネスコ本部のあるパリにはオブザーバーとして代表部を設置する方針という。
ネタニヤフ首相はツイッターで、外務省に対し「米国と並行してイスラエルの脱退を準備」するよう指示したと書いた。
米国とイスラエルはこれまでたびたび、ユネスコの動きを批判してきた。2011年には、ユネスコがパレスチナを完全な加盟国と認めたため、米国は分担金8000万ドル以上の支払いを凍結した。昨年にはエルサレムの聖地「神殿の丘」について聖地のアラビア語名のみを表記し、ヘブライ語の名前などがないにもかかわらず、ユネスコで決議案が採択されたことにイスラエルは反発し、ユネスコとの協力を停止。さらに今年7月にはユネスコがヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治区ヘブロン旧市街を世界遺産に登録すると決めた際、ユダヤ教との古くからのつながりに言及しなかったことにも、イスラエルは猛反発していた。
ユネスコのイリーナ・ボコバ事務局長は米国の発表を受けて、「国連ファミリー」と世界全体の多極主義にとって喪失だと遺憾の意を示した。ただし、近年指摘されているユネスコの「政治化」が組織に「負担をかけている」とも認めた。
ボコバ事務局長は米紙ニューヨーク・タイムズに対して、米国の分担金未払いをただちに清算するよう求めてはいない、それよりも米国がユネスコに以前のように関わることが重要だと、これまで複数の連邦議会議員に繰り返してきたと話した。その一方で、米国の発表が次期事務局長選びの渦中と重なっただけに、意図的なタイミングなのではないかと疑念を示した。
米国のユネスコ分担金未払い分は5億ドルに達すると言われる。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、米国の決定に「深い憂慮」を示す一方で、国連は今後も「多数の機関を通じて幅広い課題について、米国と生産的に関わり続けていく」と述べた。
■1984年にも離脱
米国とユネスコのあつれきは今回が初めてではない。1974年には、ユネスコがイスラエルを批判し、パレスチナ解放機構(PLO)を承認したため、米連邦議会が分担金の支払いを停止した。
レーガン政権も1984年、ユネスコが政治的に左翼的で財政的に浪費体質だと批判し、脱退している。2003年にジョージ・W・ブッシュ政権下で再加盟したが、2011年のパレスチナ加盟に抗議して分担金支払いを停止したため、未払い金が積みあがっている。
英国はサッチャー保守党政権が1985年にユネスコの実効性に疑義を唱えて離脱したが、1997年にブレア労働党政権の誕生と共に再加盟した。
<解説> なぜトランプ氏がユネスコを嫌うのか――ジョナサン・マーカスBBC外交担当編集委員
ドナルド・トランプ米大統領にとってユネスコは、狙いやすい標的だ。 性教育や識字率向上、女性の権利平等などを推進する多国間組織なだけに。
米国の脱退はトランプ氏の「アメリカ第一」政策の具体化であると同時に、あらゆる多国間組織に対する一貫した敵意の表れだと、広く受け止められるだろう。
ユネスコは第2次世界大戦後に米国が中心となって構築した世界の仕組みの一部だというのが、実に皮肉なことだ。
しかしここで根本的な問題となっているのは、ユネスコが「反イスラエル」で偏向しているという認識だ。ユネスコはこれまで、ヨルダン川西岸や東エルサレムにおけるイスラエルの活動を非難してきた。今年7月には、ヘブロンの旧市街をパレスチナの世界遺産と認定した。イスラエルはこれは、聖書の時代にまでさかのぼるユダヤ人の歴史を否定する動きだと猛反発している。
(英語記事 Israel to join US in quitting Unesco)
◎上記事は[BBC NEWS JAPAN]からの転載・引用です
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⇒ アメリカが国連人権理事会から離脱を表明「イスラエルに偏見」2018/6/20
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◇ ユネスコの政治利用 ボコバ氏…抗日行事参加…国連事務総長ポスト狙う 世界記憶遺産「南京大虐殺」登録