勝栄二郎次官 気になる退任後の進路
現代ビジネス2012年08月26日(日)【ドクターZは知っている】ドクターZ
勝栄二郎財務事務次官が8月中にも退任し、後任に真砂靖主計局長を充てる方向で調整に入ったとの報道が出ている。どうしてこのタイミングでの辞任なのか。もちろん、それはお役ご免でお疲れ様でしたということだ。
財務省では「増税は勲章・手柄」という"社風"がある。「税収」が上がっても財務官僚の評価にはならない。景気がよくなれば税収は自然と上がるからだ。ただ、「税率」を上げればわかりやすい業績になる。そのためには税法の改正が必要になり、おバカな政治家を手玉にとったという証明でもあるからだ。こうして官僚は国民の代表たる政治家より「偉い」ということを示した者が、本当の「財務省の王」になるわけだ。
この意味で、人がいいのが取り柄の谷垣禎一自民党総裁を洗脳して消費税増税を吹き込み、その一方で、やることがない野田佳彦財務相を洗脳しながら総理にまで仕立て上げ、野田・谷垣という増税派のツートップという惑星直列のような奇跡を演出したのが勝次官である。今後「王」の座に君臨するためには、ここで辞める必要があった。
ただし、今の時代ではすぐに天下りは無理だ。さすがの財務省も、ここ3代の次官は早大大学院教授、みずほ総研理事長、読売新聞グループ本社監査役とこれまでの特殊法人トップのような華麗な天下りをしていない。ただし、勝次官は10年に一度の「王」なので、それなりのポストが確保されるまで、従来の例にならって財務省顧問などで個室・車・秘書付きで一休みする可能性もある。もっとも最近は役所の顧問職にも風当たりが強いので、役所に友好的な会社などに避難するかもしれない。
財務省は近年、日銀総裁人事で苦杯を嘗めさせられた。事務次官級を3名も候補として出しながら、軒並み民主党に否定された過去がある。財務省としては、ここはたっぷりと利子をつけて返してもらいたいところだろう。来年4月に任期が到来する日銀総裁はまさしく「王」にふさわしいポスト。国際的には中央銀行の総裁といえば経済学博士号取得者であるのが常識だが、日本では財務事務次官経験者であれば有資格と思われているから問題ナシだ。
ところで、勝氏の後任の財務事務次官といわれる真砂氏はどんな人物なのか。武勇伝の多い勝氏とは異なり、ほとんど情報がない。民主党の小沢鋭仁議員と親友という話くらいしか伝わっていない。財務事務次官クラスになると、経歴など色々と情報があるものだが、真砂氏にはそれもない。
聞くところによると、主計・主税畑ばかりを歩いてきた人のようだ。当然海外経験は乏しく、かつて海外からの電話をたまたま受けたとき、何を聞かれても「こちら日本国大蔵省」と何度も繰り返して、そのうちに相手が電話を切ってしまったという嘘のような話を聞いたことがある。
では事務次官交代で財務省になにか変化はあるのかというと何もない。もっとも、役人にとっては人事は一番の関心事である。事務次官の勝氏が引退することによって大きな人事ができるので、役人は喜んでいるだろう。
それにしても、中央官庁は平均2年に一回人事異動がある。民間会社では考えられないほど短い。では短期間に仕事をマスターするかというと疑問で、頻繁に担当者を代えることで無責任体制にしているかのようだ。かくして消費税増税の担当者も代わり、世間からの批判を受けなくて済むということになるのだ。
「週刊現代」2012年9月1日号より
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◆ 地味な永田町・霞ヶ関改革の進展/永田町の主役 勝栄二郎氏「豪華すぎる新居」駆け込み購入か 2012-07-29 |政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
「地味」な永田町・霞ヶ関改革の進展
2012/7/27 18:26 WSJ Japan Real Time
消費税引き上げは国会審議が粛々と進んでいるのに、なかなか進まない歳出削減。ほんとうは削減を先にすべきところ、いつの間にか増税が先になってしまった。増税が固まったと思ったら、これまで「先にやるべきことがある」と声高に増税に反対していた人たちは、敗北感からか怒りからか、すっかり静かになってしまった。
このところ、いくつか霞ヶ関改革や永田町改革に絡んだ進展もみられた。が、いかんせん、地味な印象が拭えない。
民主党が身を削る努力として挙げていた選挙制度改革では、同党が6月に提出した衆議院の比例区改革なども含めた改革案のうち小選挙区の「0増5減」に追い風となる法案を、27日に自民党が衆議院に提出した。これで違憲判決を受けた小選挙区の一票の格差是正という限られた範囲だが定数削減への道筋が見えてきた。5減案だけが進むことで本格的な改革が置き去りになる懸念もあるが1歩前進ではある。
また国内メディアによると、人事院は55歳以上の国家公務員について昇給を停止することを勧告するそうだ。これには、震災復興への対処という名目で、2年間9%の給与削減が決まったばかりの国家公務員のため息が聞こえてきそうだ。
この夏の国家公務員のボーナスは、年度初めからの削減分をまとめて引かれ50歳前後で昨年比20万円以上の減少だという。だが、この55歳以上の昇給停止というのは、ようやく民間並みになるということだ。民間では50歳を過ぎたら給与が2~3割減る会社も多い。ところが公務員の場合は、勤務成績にかかわらず60歳まで昇給が続くという恵まれた環境にあった。
公務員も天下り批判から、昔のように独立行政法人や公益法人、民間に転出させることが難しくなっており、その代わりに50歳代半ばの公務員を「現役出向」させるやり方が広がっている。現役のまま出向し、昇給が続くので、民間との格差が際立っていた。
日本は民間企業でいったらとっくに経営破綻している財政状態だ。小手先の改革ではどうにもならないところまで追い込まれている。官僚制度については経済団体の提言や小泉純一郎首相時代の「骨太の方針」などで、採用の仕方から、能力給の導入、年功序列の排除、省庁間の交流、民間との交流など抜本改革が求められてきたが、いまだ十分な成果は上がっていない。
思い起こせば民主党、政権を獲得したころは公務員人件費の2割削減などと言っていた。財務省に取り込まれ、消費税引き上げ論者への宗旨替えしたと批判されている野田首相だが、かつては、天下り役人をシロアリ呼ばわりしていたこともあった。映像投稿サイト「ユーチューブ」で面白い映像を見つけた。「シロアリ退治をする前に消費税を引き上げるのはおかしい!」と街頭演説で訴えている政権交代前の野田首相の姿だ。
記者:竹内カンナ
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【永田町の主役たち】次期衆院選は“財務省vs橋下新党”か!
zakzak 2012.07.29
2012年の「永田町の主役」に、財務省の存在を忘れることはできまい。6月26日、「社会保障と税の一体改革」関連法案の衆院可決で、財務省は悲願の消費税増税に大きく前進した。
この改革法案を先頭で牽引してきたのが、「10年に1度の大物次官」といわれ、7月で就任3年目に突入した財務省の勝栄二郎事務次官だ。通常次官は1年交代が多く、3年目は怪物級だ。
「野田佳彦首相の信頼が厚く、『事実上、官邸をコントロールしている』といわれている。野党は『陰の総理だ』と揶揄(やゆ)している」(霞が関関係者)
確かに、勝氏はここ数年、「財務省パワー」のシンボルとして、さまざまな風評が流布されてきた。民主党関係者がそのいくつかを明かす。
「菅直人前首相が就任直後、『消費税増税の必要性』を唱え始めたのは勝氏の説得のようだ。総理候補として亜流だった野田首相が登り詰めた背景にも、財務省の存在があるといわれている」
鳩山由紀夫政権時代、野田首相を財務副大臣に引き上げたのは、当時の藤井裕久財務相。藤井氏は、勝氏に対して「野田さんの面倒をみてほしい」と依頼したとされる。
「勝氏は、野田首相が持つ猪突猛進の素質をズバリ見抜いた。『この原石は磨けば光る』と、財務省マインドで寄り添い、協力してきた。昨年の民主党代表選挙でも、財務省は野田首相誕生のため裏選対として動いたともささやかれている」(民主党関係者)
さて、財務省が今年、もう1つの力を発揮したのが東京電力の問題だ。政府は一時、東電の完全国有化で突っ走ろうとした。これを阻止したのが「勝-勝ライン」といわれている。経産省幹部がこう解説する。
「勝-勝ラインとは、財務省の勝氏と、東電の勝俣恒久前会長のこと。勝俣氏は東電の完全国有化を避けるため、勝氏に民間存続を訴えた。勝氏も、国有化で国が賠償負担を無制限で負うことを避けたかった。ならば生かさず殺さずで、議決権の割合を引き上げて国が経営に口出しできるようにしながら、東電の利益は賠償金とし吐き出させるよう、調整に動いた」
民主党の「政治主導」が崩壊するなか、官邸から財界まで、財務省主導で進んでいるのか。自民党関係者は語る。
「大阪市の橋下徹市長率いる『大阪維新の会』は、維新八策で『統治機構改革=地方分権』『消費税の地方税化』などを打ち出している。これは中央集権体制の象徴である財務省にとって脅威。全国から集めた税金を分配する権限を奪われかねない。橋下維新を最大の『リスク要因』と受け止めているようだ」
次期衆院選は「既成政党vs橋下維新」といわれてきたが、実は「財務省vs橋下維新」という構図なのかもしれない。=おわり(ジャーナリスト・田村建雄)
◆消費増税案が衆院通過して、アタマの中は優雅な老後のことですか 勝栄二郎(財務事務次官)が駆け込み購入か?「豪華すぎる新居」
現代ビジネス「経済の死角」2012年07月27日(金)フライデー
東京の都心の一角、JR山手線沿いに、38階建てのタワーマンションが威風堂々と聳えている。駅から数分の至近距離で、立地は最高。その造りも、大理石をふんだんに使った吹き抜けのエントランスが高級感を醸しだしている。この上階に、勝栄二郎・財務事務次官(62)の新居がある。今年4月、月8万円という超優遇賃料で長年住んでいた、東京・目黒の公務員宿舎「大橋住宅」から越したのだ。
「マンションの竣工は'06年だから、築6年の中古を購入したことになりますが、現在も投資物件としても扱われているマンションで、最大の90m2の物件なら1億円は下らない」(不動産関係者)
登記を見ると、面積は約89m2。勝氏はこのマンションを抵当に6900万円の借金をしている。退官も決して遠くない時期だというのに、金銭的には庶民感覚では理解できない余裕である。
勝氏といえば、「陰の総理」の異名もとる財務官僚。早稲田大学法学部に進学後、東大法学部に学士入学して卒業するという異色の学歴の持ち主で、大方の財務官僚のようなエリート臭がなく、そのせいもあってか、人脈も与党から野党まで幅広い。衆院を通過し成立まであと一歩にこぎつけた消費増税の立て役者というのは、衆目の一致するところだ。
「彼は4歳から15歳まで11年間ドイツで暮らしている。英語がペラペラで、グローバル金融を理解できる数少ない官僚。身長175cmの堂々たる体格。勝海舟のひ孫説もあって、事実は違うが、本人もそんな噂を利用してきたフシがある洒落者です。消費増税では、自身の人脈をフルに活用して3党合意にこぎつけた。野田佳彦首相を籠絡して増税法案を実現させたのが勝さんです」(財務省関係者)
その勝氏がこのタイミングで〝億ション〟に転居したのだ。波紋は広がる。全国紙経済部記者が解説する。
「勝氏は消費増税案が国会に提出された時点で、やりたいことは終わったというオーラを発していた。7月の定期人事は増税法案のため延びているだけで、もう、いつ辞めてもおかしくない。後継次官も真砂靖主計局長に決まっている。マンションを買ったのは3月ですから、退官後の準備なのは間違いないですよね。後は、天下り先をどうするのかでしょう」
その一方で、こんな皮肉な見方をする人もいる。
「家賃の安い公務員宿舎に住んでいる間にずいぶんと蓄財したんでしょう。ただし、実際のところ、消費増税の実施までまだ2年あるとはいえ、こんな時期に買うなんて駆け込み購入と国民に非難されても仕方ない」(前出・経済部記者)
勝氏本人を直撃した。
---新居の住み心地はいかがですか。
「・・・・・・・・・・・・」
---このタイミングで引っ越した理由は? 駆け込み購入ですか。
「・・・・・・・・・・・・」
終始仏頂面で、ひと言も発さず迎えの車に乗り込んだ。「10年に一度の大物次官」と言われるのなら、増税後に購入して、少しでも庶民の痛みを感じることぐらい、簡単にできるハズなのだが。
「フライデー」2012年8月3日号より
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◆天下人・勝栄二郎(財務省の王)はこうして伝説になった いつから総理になったのか 国民はバカな子羊なのか 2012-07-03 | 政治
この国のあり方を考える 天下人・勝栄二郎(財務省の王)はこうして伝説になった いつから総理になったのか 国民はバカな子羊なのか
現代ビジネス 経済の死角 2012年07月02日(月)
「政治家を転がすコツ?それはいい気にさせることですよ」天才的な人心掌握術を持つこの男の野望が、間もなく達成されようとしている。誰のための野望? もちろん国民ではなく、財務省のため。
■政治家は目立ちたがりのバカ
まず最初に、ある財務省キャリアの独白をきいていただこう。
「先週、野田首相の外遊中に民主党の合同会議が荒れただの、造反議員が何人出るだのって騒いでいましたが、ハッキリ言ってどうでもいいんですよね。
新聞には、まるで大事のように書いてあるでしょ。だからバカな国民は『大変なことが起きている』と勘違いしてしまう。
あれ、茶番ですから。どういう道筋をたどるか、可能性はいくつかあっても、最終的にはボクら、というか勝さんの思惑通りに進みます。つまり、消費増税関連法案は可決される。
じゃあなぜ、政治家があんなに騒いでるのか。それには、政治家と官僚の根本的な『生態』の違いを知ってもらわないといけない。
政治家という生き物は、基本的に『どこまでいっても一人』なんです。派閥だなんだと言ったって、選挙に落ちた瞬間、ただの人になる。いや、仕事がなくなるんだから、ただの人以下ですね(笑)。
そんな政治家の行動原理を一言で言うと、「目立ちたい」。だからパフォーマンスに走るんですよ。
『国民のために消費増税に反対する』
とか言って。本当に国民のためになるかどうかは、どうでもいい。とにかくわかりやすいことを言って、目立とうとする。まだ国会議員じゃないけど、橋下徹さんなんてその典型でしょう?橋下さんのあの性癖は、多かれ少なかれ政治家が皆持っているものです。
自分勝手なパフォーマンスに走る奴がいるから、まとまる話もまとまらない。
財務官僚の生態は、その真逆なんですね。組織のために、上から下まで一体となって働く。今だったら、勝さんの指令の下、全員が同じ方向を目指す。もちろん自分の能力をアピールしたい気持ちはあるけど、悪目立ちすることは極力避ける。軍隊的と言われたら、実際そうだと思いますよ。
だから、政治家が財務省に勝てるわけがないんです。もともとボクらのほうが頭が良いわけで、しかも集団で戦うんですから。
霞が関の格言にこんなのがあります。
『経産省は10人に聞くと10通りの返事をする。財務省は全員同じ返事をする』
当たってると思います。勝さんのガバナンス(統治)は完璧ですから、今のウチは特にそうだと思います。あんな優秀な事務次官に出会えて幸せです」
限りなく傲慢。それなのに財務省への帰属意識はきわめて強い。人間としてどこかアンバランスだが、本人はそれに気づいている様子はない。
今、こうした忠実なしもべを500人規模で抱え、財務省という「城」に王として君臨しているのが、勝栄二郎事務次官、その人である。
「陰の総理」と呼ばれる勝氏だけあって、その権力の肥大ぶりは止まるところを知らない。この7月で次官就任から丸2年を迎え、本来なら退任してもおかしくないが、すでに任期延長が決まっている。全国紙経済部デスクが解説する。
「当然です。少なくとも消費増税法案の成案を見るまで、勝氏が次官を辞めることはない。それは野田総理の望みでもある。というより、総理も今、勝氏に辞められては不安でしょうがないでしょう。
自民、公明と3党合意に達したのも、もちろん勝氏の剛腕です。谷垣さんや山口さんら党首クラスは直接出馬して説得するし、それ以外の党の重鎮も、とにかく幅広くケアをする。
大臣官房長の香川(俊介)さんや理財局長の田中(一穂)さんの使い方がうまかった。田中さんはかつての安倍晋三さんの総理秘書官。次期自民党総裁選に出馬する気満々で、財務省にすり寄りたい安倍さんをあっさり籠絡した。
小沢さんに近いと言われる香川さんを官房長に据えることで『小沢さんのことも重視している』と念のためメッセージを送る。そうして根回しをしているから、表面上は政局が混乱しているように見えても、実際は勝氏の『想定内』で物事が進んでいきます」
財務省OBの藤井裕久〝民主党税調会長や信頼関係のある仙谷由人〟政調会長代行に加え、宇宙人・鳩山由紀夫とすら親しく、すでに懐柔済みだという。まさにオールマイティ、全方位外交で敵をつくらない。永田町には「勝氏の悪口を言う政治家はほとんどいない」(前出・デスク)。
前出のキャリア官僚がまた独特の解説をする。
「財務省に入ってまず叩き込まれるのが、『いちばん偉いのは事務次官。大臣より偉い』というヒエラルキーです。でも、思っていても表に出してはいけない。かつて『10年に一度の大物次官』と呼ばれた齋藤次郎は、小沢一郎と近づきすぎるなど、官僚の分を超えた振る舞いをしたために、他の自民党主流派から嫌われ、最終的には失脚した。
勝さんはその轍を踏まないように気をつけているというか、もともと『俺は偉い』というオーラを抑えるのがとても得意な人なんです。政治家に会えばちゃんと腰を折ってお辞儀するし笑顔も絶やさない。それは謙虚だからというより、お辞儀して丸く収まるなら安いもの、という西洋式合理主義がある。おそらく4歳から15歳までの11年間、ドイツで暮らした影響もあるのでしょう。
これはあまり知られていない事実なんだけど、財務省キャリアにはチビが多いんです。ちゃんとした統計はもちろんないけど(笑)、160cm台の人がゴロゴロいる。勝さんのように175cm以上あって顔も整っている、というタイプは珍しい。勝さんの屈託のなさは、実はそんなところにも由来しているのではと、ボクは秘かに見ています」
■勝海舟の曾孫を名乗る
ただ、ここまでの分析では、なぜ勝氏が「王」と呼ばれるまでの権力者に成り上がったのか、完全には腑に落ちない。
実は勝氏には隠し持っている「顔」がある。そして、そこにこそ権力の源泉がある。それは「ドイツ帰りの紳士」のイメージとはまるで異なる、いわば「乱世の傑物」とでも言うべき、勝氏のもう一つの顔である。
前出キャリアとは別の財務省幹部が明かす。
「これは最近まで省内でも知られていなかったのですが、勝さんは東大法学部卒ではないのです。いや、正確には卒業しているんだけど、その前に、早稲田の法学部を一度卒業しているんですよ。東大は、早大卒業後に学士入学したんです。
こう言っちゃなんだけど、東大法学部と早大法学部では偏差値が(腕を広げて)こーんなに違う。勝さんが大蔵省(当時)に入るために東大に学士入学したかどうかは定かではないけど、高校卒業して早大の法学部なんて事務次官は、150年の歴史のなかでもちろん一人もいない。しかもドイツから帰国して入った高校は獨協高校で、これも財務省では異色です。
でも逆に、財務官僚がどうしても身にまとってしまう『エリート臭』が勝さんにないのは、こうした学歴によるところも大きいのかな、と思います」
財務省には「東大法学部にあらずんば人にあらず」という風土があり、東大経済学部卒すら少し肩身の狭い思いをするという。財務省幹部が続ける。
「勝さんは大蔵省の同期会には出ないんです。一つには年齢が違う、もう一つには共通の話題がないからだそうです。加えて、勝さんは大蔵省入省の成績が同期の中で下から2番目だったとか。同期会が嫌いだった理由は、その辺なのかなと推測しています」
バブル期のような、景気がよくて大蔵省にとっても平穏無事な時代がずっと続いたなら、ひょっとしたら勝氏がいまのように頭角を現すことはなかったかもしれない。
しかし'97年、一連の大蔵スキャンダルが勃発、大蔵省は乱世に突入する。
「勝さん自身、過剰接待で処分を受けていますが、他の純粋培養エリートがオロオロするなかで、スキャンダルの後始末など『汚れ仕事』を引き受けたのが、当時、主計局主計官から大臣官房文書課長に移った勝さんでした。
その前の2年間、ミスター円こと榊原英資・国際金融局長(当時)の下で、為替資金課長として鍛えられた経験も大きかった。お互い英語が堪能で、ドメスティックな大蔵省で、グローバル金融が理解できる貴重な二人だった。その後、銀行の不良債権処理に勝さんが奔走し、そこでも評価を上げることになります」(前出の財務省幹部)
汚れ仕事もできる、エリート臭のない男。一方で利用できるものは利用するしたたかさもある。
「勝海舟の曾孫説」である。
事務次官になって以降、勝氏は明確に否定するようになった。実際、血縁関係は存在しない。
しかし、ある財務省OBはこう証言するのだ。
「若い頃は『そうです』と言ってたよ。偉くなるにつれ、ニヤニヤ笑って否定も肯定もしなくなり、事務次官になった途端、猛烈に否定し始めた。
自分を大きく見せるために利用したのか、単に話のネタとして面白いと思っていたのかはわかりませんが、とにかく、若い頃は海舟の子孫だと認めていましたよ」
■総理より偉いんです
利用すると言えば、これまでの大物次官と明らかに違うのが、メディアコントロールだという。ある全国紙の幹部が語る。
「消費税への理解を求めるために、勝さんは官房長や主計局長、主計局次長などをともなって、記者クラブ加盟社すべてに挨拶回りをしていました。昨年末からつい最近までの話です。
主計局は3班あり、頭である局長が司令官で、その下に3個師団9個連隊と、大蔵省時代から軍隊用語で呼ばれている。この部隊編制で新聞社、テレビ局を行脚した。勝さんがパイプのあるナベツネ(渡邉恒雄・読売新聞主筆)はもちろん押さえ、有名ニュースキャスターには一人一人に面会を求め、幹部が直接出馬しています。
次期事務次官が確定している、司令官の真砂靖主計局長が、みずからワールドビジネスサテライトの小谷真生子キャスターへの接触を買って出たのは有名な話です。NEWS23Xの膳場貴子キャスターのところにも皆が行きたがったとか。
こうした財務省オールキャストによる消費税啓蒙プロジェクトは功を奏し、新聞、テレビ、通信各社は局長会議を開き、消費税に関する認識を改めた」
懐の深さは認めよう。たしかに並の官僚ではない。だが、そこには欠落しているものがある。それは、自身が「公僕」であるという意識である。
前出の財務省キャリアはこう言い放つ。
「勝さんに国民に仕える意識があるかって?あるわけないじゃない、そんなもの。だって、国民は基本的にバカなんだから。牧場の子羊のように、ボクたちが正しく導いてあげなきゃいけない。
消費税を上げなかったら財政は破綻します。国民はよくわかってないかもしれませんが、ボクたちの仕事は『おカネの管理』『国家の家計簿をつけること』ですから。税収を増やすためには消費税アップ、それが正しいことだというのは、すべての財務官僚のDNAにすり込まれています。
勝さんのことを、『いつから総理大臣になったんだ』と批判する人がいますが、総理大臣になったんじゃなくて、野田総理より勝さんのほうが偉いんです。だって、野田民主党というおんぼろな御輿を担いで、最終的には消費増税を実現しちゃったんですよ。それは奇跡のようなこと。
しかもバッシングだって一身に受けて、それを気に病まないタフさがある。省の前で街宣車が名指しで批判する次官なんて、勝さんが最初で最後ですよ。伝説となるのにあれほどふさわしい人はいない」
もうすっかり勝った気でいる、勝栄二郎次官とその子分たち。最近では、「もう利用し尽くした」とばかりに、ドジョウ総理の悪口を言い始めたのだという。
「『問責をかけられた大臣をすぐ辞めさせないなど、やることが遅い。輿石(幹事長)さんの顔色ばかりうかがって、とにかくグズなんだ』と、ある野党幹部にグチをこぼしたそうです。勝氏にとっては野田総理など道具の一つ。与党は仙谷氏や岡田副総理を押さえているので、『野田はもう用済み』ということなのでしょう」(前出の財務省OB)
消費増税を事実上成し遂げた勝栄二郎は、「伝説の仕上げ」とばかりに、「あの男」に批判の矛先を向けているのだという。
「橋下維新の会には危機感を持っていますね。みんなの党が橋下とくっつくかどうかも含めて、橋下新党は『財務省のリスク要因』と見なしています。
橋下が主張する政策で財務省にとって問題なのは、もちろん地方分権。カネを分配する権限を地方に移譲することになると、予算編成が思い通りにできなくなる。それが財務省にとっては恐ろしい。突き詰めれば、カネをすべて握っていることが財務省の巨大な権力の源泉ですからね。今まで通り、霞が関のなかでやり取りしているほうが、都合がいいに決まっています」(前出の経済部デスク)
カネが権力の源泉だと言うが、それはもともと財務省のカネでも、ましてや勝氏のカネでもない。国民から吸い上げた税収を差配することで、自分たちが偉大なことをしていると考えるのが、そもそも思い上がりではないか。
日本には真の政治は存在しない。ただ財務省に君臨する王、天下人がいるだけなのだ。
「週刊現代」2012年7月7日号より
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◆「小沢一郎を消せ」と命じた本当の黒幕は誰か 鳥越俊太郎×長谷川幸洋 週刊ポスト2012.7.13号 2012-07-02 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
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◆霞が関の大魔王 勝栄二郎危険極まりなし/内閣に「大増税」へと舵を切らせている 高橋洋一×長谷川幸洋 2011-10-05 | 政治
あっという間に、どじょう鍋にされたノダ 「霞が関の大魔王」勝栄二郎危険極まりなし 高橋洋一×長谷川幸洋
現代ビジネス2011年10月05日(水)週刊現代
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◆事業仕分けで凍結が決まった公務員宿舎建設 野田首相「現地視察し、私が判断したい」2011-09-30 | 政治
◆財務省の天皇 勝栄二郎事務次官と香川俊介官房長には逆らえない/野田政権は直勝内閣/メディア工作部隊2011-10-02 | 政治
財務官僚たちの影響下にあるのは民主党政権だけではない。彼らは政・官・司・財・報に幅広く支配の手を伸ばしている
◆「増税」「宿舎建設」官僚のやりたい放題を許していいのか/勝栄二郎は小沢一郎を抑えつけ、好き放題やった2011-09-29 | 政治
◆小沢一郎を落ち目と見切った登石裁判長/財務省首領 勝栄二郎が、内閣に「大増税」へと舵を切らせている2011-09-30 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
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