コロナ禍と暴行死…米国のアジア系、人種差別根絶で黒人社会と連帯 2020/6/10

2020-06-11 | 国際/中国/アジア

コロナ禍と暴行死…米国のアジア系、人種差別根絶で黒人社会と連帯 
2020年6月10日 14時12分  
 米国で新型コロナウイルスの感染が拡大し、トランプ政権が中国への敵対姿勢を強める中、アジア系住民に対する差別行為が絶えない。その渦中に起きた白人警官による黒人男性の暴行死事件をきっかけに、アジア系の中から黒人社会と連帯してマイノリティー(人種的少数派)に対する差別の根絶を目指す動きが出てきた。 (ワシントン・岩田仲弘)

◆「おまえらのせいだ」 医療従事者にも罵声
 三月、ロサンゼルス市の病院の救急救命室に白人の中年男性が入ってきた。インドネシア出身の上級看護師ヘンキ・リムさん(44)の目の前で、男性が何度もせき込むので、彼の顔にマスクをかけようとしたら「病気になったのはおまえらのせいだ」と拒まれた。男性は、そのまま出て行ってしまった。 
 リムさんは中国系とみなされたのだ。四月には別の中年男性にエックス線検査を試みたら拒まれた。後に同僚から「中国人には診てもらいたくないと言っていた」と聞いた。 
 十年前、よりよい生活を求めてインドネシアから移住。米国籍も取得した。「人を助ける仕事にやりがいを感じ満足してきた」とリムさん。事件後は患者と接する前に「人種差別主義者かもしれないと用心するようになった」という。 
 西部ワシントン州の病院で麻酔科の研修医として働く中国系のエイミー・チャンさん(29)は病院近くの路上で、白人男性から突然、「中国野郎、天然痘をまき散らしやがって」と罵声を浴びた。「その直後は怒りと恐怖で感情を取り乱し、仕事をしたくなかった。動揺して麻酔医としての高度な医療の質を保つ自信がなかったから」 
 低所得で健康問題を抱える家族を助けたいとの思いから医者の道に入った。「私は米国民だし、ウイルスとは全く関係ない。(感染者と接して)危険も冒しているのになぜ…」

◆黄禍論の歴史繰り返す政権に批判も
 アジア系の歴史に詳しいサンフランシスコ州立大のラッセル・ジャン教授は、人命を救い、尊敬されるべき医療従事者にまで中傷が広がっている実態について「(黄色人種が白人にとって経済的に脅威になるという)黄禍論の歴史が繰り返されている」と懸念する。 一八八二年に中国人労働者の移住を禁ずる「中国人排斥法」が成立。その要因となったのが「中国人はマラリアや天然痘、ハンセン病を持ち込む」という思い込みだった。二十世紀初めには腺ペストが流行し、保健当局はサンフランシスコの中華街を隔離し、ハワイ・ホノルルの中華街を焼き払った。 
 ジャン氏は「公衆衛生政策がアジア系を制御し、拘束、追放する手段として使われた」と指摘。「トランプ氏はコロナウイルスを『中国ウイルス』と呼び、中国人に対する入国規制を強化している。感染拡大の責任を中国に転嫁し、国内で差別行為を招いている」と過去との類似を指摘しつつトランプ政権を批判する。

◆歴史重ね合わせ…抗議デモにも参加
 黒人暴行死事件をきっかけに起きたデモは、根深い人種差別とコロナ禍で露呈した経済格差が黒人社会の怒りを増幅させた。それはアジア系の苦難の歴史とも重なり、ジャン氏は「アジア系は黒人社会と連帯して平等と公正さを求めて抗議すべきだ」と訴える。 
 ワシントンで連日行われる抗議デモでは実際、アジア系の参加者も目立つ。六日のデモに参加した中国系の女性弁護士ユーさん(29)は「アジア系の生活が向上したのは、黒人社会による公民権運動に負うところが大きい。手を差し伸べ、人種差別主義者の大統領を一緒に批判することで連帯を示したい」と訴えた。 
 日系人グループは七日、千羽鶴をホワイトハウス前のフェンスに掲げて連帯の意思を示した。全米日系市民協会事務局長のデービッド・イノウエさん(48)は「日系人も第二次大戦中、憲法や政府が守ってくれなかったため、人種差別を理由に約十二万人が強制収容された歴史がある。私たちは共に傷を癒やし、希望をもたらすことができる」と呼び掛けた。 

 ◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です
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