欧州で脱原発の流れ/イタリア国民の脱原発を「集団ヒステリー」という石原伸晃氏の知的貧困

2011-06-15 | 政治

欧州の脱原発 フクシマの衝撃は重い
毎日新聞 社説
 欧州で「脱原発」の流れが加速している。イタリアは12、13日の国民投票で原発再開に「ノー」を突き付けた。6日にはドイツが既存の原発17基を22年までに全廃することを閣議で決めている。いずれも福島第1原発の事故が背景にある。世界に波紋を広げるフクシマ・ショックの重さを改めてかみ締めたい。
 イタリアの国民投票は57%近い投票率で成立し、原発反対票が約95%を占めた。同国はチェルノブイリ原発事故(86年)後、国民投票で原発全廃を決めたが、他国からの電力輸入などでコストがかさみ、ベルルスコーニ首相は20年をめどに原発を再開したい考えだった。「原発再開法」を推進した同首相には最悪のタイミングで原発事故が起きたわけだ。
 ドイツの場合は、「フクシマが私の考えを変えた。(事故の)映像が脳裏に焼き付いて離れない」というメルケル首相の言葉がすべてを物語っていよう。福島の原発事故が世界の主要国の針路を変えた。ドイツなどで環境重視の緑の党などが発言力を増し、各種選挙で旋風を巻き起こしたことにも注目したい。
 他方、欧州には事故の恐ろしさが誇張されて伝わり、ある種の「過剰反応」を引き起こしたと主張する人もいる。独伊は「脱原発」と言いながら、原発大国フランスなどからの電力輸入をあてにしているではないかとの見方もある。脱原発の評価はそう簡単ではない。
 原発政策は、経済や政治の統合が進む欧州と、海に囲まれた日本とでは事情が違う。欧州は欧州、日本は日本である。その欧州も、仏英などの原発推進派と、独伊やスイス、ベルギーなどの「脱原発」派に分かれているのが実情だ。80年にいち早く脱原発へかじを切ったスウェーデンの議会は昨年、方針を転換する法案を小差で可決している。
 だが、脱原発に踏み切った独伊の決断はあくまで尊重されるべきである。脱原発を進めれば電力コストがかさんで国民負担は増えやすい。閣議にせよ国民投票にせよ、脱原発の決断はそう簡単ではない。両国はフクシマを反面教師とし、多少の負担増は覚悟の上で「安全」を選んだといえよう。
 ドイツは「脱核兵器」にも前向きで、国内に配備されている米軍の戦術核兵器の撤去を求めてきたことも忘れてはなるまい。
 一方、米国や中国、インドは原発推進の姿勢を変えていない。中東ではサウジアラビアが30年までに16基もの原発を建設するとの情報もある。世界の分かれ道に、どう対応すべきか。スリーマイル島(79年)やチェルノブイリに続く原発事故の震源地となった日本としては、将来の原発政策を腰を据えて考えたい。
毎日新聞 2011年6月15日 2時32分
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知らないのは日本人だけ?(1)世界の原発保有国の語られざる本音/多くの国は核兵器を持ちたいと思っている2011-06-14 | 地震/原発
 JB PRESS 2011.05.10(Tue)川島博之〈東京大学大学院農学生命科学研究科准教授〉
 4月の最終週に、ドバイ経由でエチオピアに出張した。出張ではホテルのロビーなどで外国人と何気ない会話を交わすことも多いのだが、今回出会った人々は、私が日本人と分かると、異口同音に「FUKUSHIMA」について聞いてきた。世界の人々が原発事故に関心を寄せているのだ。福島は広島、長崎と共に、広く世界に知られた地名になってしまった。
 日本はこれからも原子力発電を続けるべきであろうか。それとも、原発は取り止めるべきなのだろうか。
 報道各社による直近の世論調査では、賛否はほぼ拮抗している。多くの人が、地震が多い日本で原子力発電を行うことはリスクが伴うが、便利な生活を送るためには仕方がないと考えているのだろう。
 現在は、原発から漏れている放射性物質の封じ込めや津波で破壊された町の復興に関心が集まっているが、一段落つけば、これから原発とどう付き合うか、真剣に議論しなければならなくなる。
 その議論を行う前に、世界の原発事情についてよく知っておくべきだ。フランスが原発大国であることを知っている人は多いと思うが、その他の国の事情については、よく知られていないと思う。
 筆者の専門はシステム分析だが、システム分析ではデータを揃えて広い視野から先入観を持たずに現実を直視することが第一歩となる。そこで本稿ではIEA(国際エネルギー機関)のデータを基に、世界の原発事情について考えてみたい。そこからは原発の意外な一面が見えてくる。
*原発を所有する国の意外な顔ぶれ
 原発は最先端の科学技術を利用したものであるから、先進国にあると思っている人が多いと思う。しかし、調べて見るとどうもそうとは言い切れない。
 現在、31カ国が原発を所有している。原発による発電量が最も多い国は米国であり、その発電量は石油換算(TOE)で年に2億1800万トンにもなる(2008年)。
 それにフランスの1億1500万トン、日本の6730万トン、ロシアの4280万トン、韓国の3930万トン、ドイツの3870万トン、カナダの2450万トンが続く。日本は世界第3位だが、韓国も第5位につけており、ドイツを上回っている。
 その他を見ると、意外にも旧共産圏に多い。チェルノブイリを抱えるウクライナは今でも原発保有国だ。石油換算で2340万トンもの発電を行っている。その他でも、チェコが694万トン、スロバキアが440万トン、ブルガリが413万トン、ハンガリーが388万トン、ルーマニアが293万トン、リトアニアが262万トン、スロベニアが164万トン、アルメニアが64万トンとなっている。
 旧共産圏以外では、中国が1780万トン、台湾が1060万トン、インドが383万トン、ブラジルが364万トン、南アフリカが339万トン、メキシコが256万トン、アルゼンチンが191万トン、パキスタンが42万トンである。
 その他では、環境問題に関心が深いとされるスウェーデンが意外にも1670万トンと原発大国になっている。また、スペインが1540万トン、イギリスが1370万トン、ベルギーが1190万トン、スイスが725万トン、フィンランドが598万トン、オランダが109万トンとなっている。
 原発を保有している国はここに示したものが全てであり、先進国でもオーストリア、オーストラリア、デンマーク、アイルランド、イタリア、ノルウェー、ニュージーランド、ポルトガルは原発を所有していない。
 ここまで見てくると、一概に原発は先進国の持ち物と言うことができないことが分かろう。
*多くの国は本音で核兵器を持ちたがっている
 東欧諸国は旧共産圏時代に建設し、今でもそれを保有している。しかし、台湾やインド、ブラジル、南アフリカ、パキスタンになぜ原発があるのだろうか。韓国の発電量がなぜドイツよりも多いのであろうか。また、G7の一員でありながら、なぜイタリアには原発がないのか。
 原発の有無は、その国の科学技術力や経済力だけでは決められない。
 ある国が原発を所有する理由を明確に知ることは難しい。その国の人に聞いても、明確な答えは返ってこないと思う。しかし、原発を持っている国名を列記すると、その理由がおぼろげながら見えてくる。原発は国家の安全保障政策に関係している。
 原子力による発電は原子力の平和利用であるが、ウランを燃焼させることにより生じるプルトニウムは原子爆弾の原料になる。また、原発を製造しそれを維持する技術は、原爆を製造する技術につながる。原発を持っている国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができるのである。
 北朝鮮が原爆の所有にこだわり、それを手にした結果、米国に対して強い立場で交渉できる。この事実は広く知られている。そのために、イランも原爆を欲しがっている。
 米国が主導する世界では、世界の警察官である国連の常任理事国以外は核兵器を所有してはいけないことになっている。それ以外の国が原爆を持つことは、警察官以外が拳銃を持つようなものであり、厳しく制限されている。
 しかし、各国の利害が複雑にぶつかり合う世界では、金正日が米国に強気に出ることができるように、核兵器を持っていることは外交上で有利に働くと考えられている。
 多くの国は、本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり、原発保有国のリストと発電量を見ていると、その思いの強さが伝わってくる。
*フランスが原発大国でイギリスの原発が小規模な理由
 日本では、フランスが原発大国であることはよく報じられるが、その理由が語られることはない。フランスが原発に舵を切ったのは、地球環境問題がやかましく言われるようになった1990年代以前のことである。フランスはCO2を排出しない発電方法として原発を選んだわけではないのである。
 それには、西側にいながら米国と一線を画したいと考えるドゴール以来の外交方針が関連していると考えるべきであろう。同様の思いは、国防に関心が深いスウェーデンやスイスにも共通する。また、フィンランドは常にソ連の脅威にさらされてきた。
 そう考えると、西側の中でもイギリスの原発発電量がスウェーデンよりも少なく、フランスの約1割に過ぎないことがよく理解できよう。イギリスの外交方針が米国と大きく異なることは多くない。原子力の力を誇示して、ことさらに米国と一線を画す必要はないのである。
 韓国に原発が多いことも理解できる。米国が作り出す安全保障体制の中で原爆を持つことは許されないが、北朝鮮が持っている以上、何かの際に原爆を作りたいと考えている。
 その思いは台湾も同じである。旧共産圏に属する小国が、多少のリスクに目をつぶって原発を保持し続ける理由もそこにある。東西の谷間に埋もれるなかで、少しでもその存在感を誇示したいと思っているのだ。
*「絶対安全」とは言えない原発の所有を国民にどう説明するか
 このような力の外交の一助として原発を位置づけるという考え方は、多くの国で国民にそれなりの理解を得ているようだ。だから、フランスや韓国や台湾、ましてパキスタンで反原発のデモが繰り返されることはない。
 しかし、日本、ドイツ、イタリアではそのような考え方は国民のコンセンサスとはなり難い。言うまでもなく、この3国は第2次世界大戦の敗戦国であり、多くの国民は力による外交を毛嫌いしている。そのために、原発の所持を安全保障の観点から国民に説明することが難しくなっている。
 この3国では原発所持の理由を、経済性や絶対安全であるとする観点から説明することになる。しかし、それだけでは、使用済み燃料の最終処理に多額の費用を要し、また、福島の事故で明らかになったように、絶対安全とは言えない原発の所有を国民に説明することはできない。
 イタリアはチェルノブイリ原発事故の後に国民投票を行い、原発を廃止した。また、ドイツも緑の党などが強く反対するために、福島の事故を受けて、原発の保有が大きな岐路に立たされている。
 ここに述べたことを文書などで裏付けることは難しい。しかし、原発の保有国リストや発電量を見ていると、自然な形で、ここに述べたようなことが見えてくる。世界から見れば、日本の原子力政策も潜在核保有力の誇示に見えていることであろう。
 これまで、日本における原発に関する議論は、意識的かどうかは分からないが、本稿に述べた視点を無視してきた。
 しかし、原発の経済性と安全性の議論だけでは、なぜ、原発を持たなければならないのかを十分に議論することはできない。福島の事故を受けて、今後のエネルギー政策を考える際には、ぜひ、タブーを取り除いて議論すべきであろう。
 戦後66年が経過しようとしている。少子高齢化も進行している。そろそろ、老成した議論を始めてもよいのではないであろうか。(背景の着色は来栖)
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永田町異聞 2011年06月15日(水)
イタリア国民の脱原発を集団ヒステリーという知的貧困

 いまさらこの方につける薬はないと思うが、イタリア国民の「脱原発」に向かう動きを評して「集団ヒステリー」とは、言葉を安易に使う政治家の典型的病例というほかない。
  朝日新聞の記事によると、イタリアの国民投票で原発反対派が多数だったことについて、自民党の石原伸晃幹事長はこう語ったという。
  「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態になるのは、心情としては分かる」
 それも言うなら「現実に起きた放射能災害の惨禍をメディアの報道で目の当たりにし、同じ地震国であるイタリアの人々が原発に大きな脅威を感じているのは、心情としてよく分かる」であろう。
  そもそもこの人は「ヒステリー」とは何かについて、考えたことがあるのだろうか。
  ひとことで表現するなら「感情過敏」。気が立ちやすく理性の抑制が薄弱な状態である。自己内省ができず、人の欠点ばかり見えて、自分の短所は気づかない。
  集団的、社会的に、自己内省をせず、誰かを悪者にしていっせい攻撃するようなときに使うのが、集団ヒステリーであり、最近ではメディアを中心とした小沢バッシングにその典型をみることができる。
  しからば、石原幹事長、あなたは「脱原発」投票をしたイタリア国民をして、何の根拠もなく原発を悪者にし感情過敏に陥った民だと本当に言えるのだろうか。
 もしそうだとすれば、福島第一原子力発電所で現実に起こった史上最悪の原発災害の重大性を過小に評価し、矮小化して、原発推進政策の継続を企図しているとしか思えない。
 かりに言葉の使い間違いに過ぎないのなら、石原氏の言語レベルの低さを露呈しただけのことだが、そもそも「集団ヒステリーを心情として分かる」という、その心情とはいかなるものであろうか。集団ヒステリーの心情が分かる人は、自らが自己内省のないヒステリー気質の人をおいてほかになかろう。
 振り返ってみれば、自民党そのものが自己内省をせず政敵にネガティブキャンペーンを仕掛ける集団ヒステリークラブであったからこそ、時代の変化についてゆけず、政権の座から転がり落ちたのではなかったか。
 いまや民主党も、菅政権のおかげで、自民党を凌駕するほどに、自己内省なき危険症状に陥りつつある。
 政治集団やマスコミをこの病状から救うには、洗脳され続けてきた国民がより正確な情報によって覚醒し、イタリアのように明確な意思を示す大きな世論のうねりをつくってゆくしかないだろう。
 新 恭(ツイッターアカウント:aratakyo)


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