産経ニュース 2015.3.14 19:06更新
【地下鉄サリン20年】林郁夫受刑者を完落ちさせた捜査員 「なぜ事件が起きたのか、考え抜く」
地下鉄サリン事件から20日で20年を迎えるのを前に、「地下鉄サリン事件被害者の会」(高橋シズヱ代表)などは14日、東京都千代田区でシンポジウムを開催した。事件当日に被害者の治療にあたった医療関係者やオウム裁判を裁いた元裁判官らがそれぞれの立場で討論。サリン散布実行犯の林郁夫受刑者(68)=無期懲役=から全面自供を引き出した警視庁の元捜査員、稲冨功さん(68)も初めて公の場所で思いを語った。
事件当時、警視庁第3機動捜査隊の警部補だった稲冨さんは、林受刑者とは同い年だ。取り調べでは元医師の林受刑者を「先生」と呼び、気さくに話題を振った。「被疑者を先生とは何事か」。上層部の叱責にも改めることはなく、真摯(しんし)な態度で取り調べに臨み、全面自供を引き出した。
検察は事件の全容解明に大きく貢献した林受刑者の自供を「自首」に相当すると判断。散布実行犯5人のうち4人は求刑通り死刑判決が下されたが、林受刑者は平成10年5月、求刑通りの無期懲役となった。
林受刑者に無期懲役を言い渡した元東京地裁裁判長の山室恵さん(67)は、「当初は『死刑が相当だ』と考えていたが、苦悩に苦悩を重ねて判決を下した」と心境を明かした。また、国立病院機構東京医療センターの菊野隆明救命救急センター長(60)は、「地下鉄サリン事件を契機に、テロ災害における医療の役割が整備された」などと語った。
稲冨さんは現在でも林受刑者と交流し、今年1月にも千葉刑務所の面会室で対面。稲冨さんは、「私が林(受刑者)と会っているのは、命題が残っているからだ。それは『なぜサリン事件が起きたのか。また起きうるのか』ということだ」と語り、「林(受刑者)と私とどっちかが死ぬまでに結論は出ないかもしれない。でも、考えて考えて考え抜くんだと林に言っている」と厳しい口調で話した。
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