【広島女児殺害】解説精密司法から核心司法へ

2009-10-16 | 死刑/重刑/生命犯

【広島女児殺害】解説精密司法から核心司法へ
産経2009.10.16 23:28
 審理を広島高裁に差し戻した16日の最高裁判決は、裁判員裁判で必ず行われる「公判前整理手続き」の導入など司法制度が大きく変わるなかで、「合理的な期間内に充実した審理を終えることが、これまで以上に強く求められている」と制度改革の大前提を再確認した。ただ、最高裁判決が言及した部分は、制度改革の一般論にとどまったもので、公判前整理手続きを含む刑事裁判のあり方に、何らかの方向性が明確に示されたわけではない。
 最高裁判決は、2審の広島高裁が1審の広島地裁の判決について「地裁は調書を証拠として調べなかったため、犯行現場を事実誤認した」などと指摘、証拠採用を却下したことを「まことに不可解」などと非難したことに対して示された。調書を詳細に検討し、真相究明を重視してきた「精密司法」から、裁判員裁判時代に入り、検察側、被告側の主張に基づいて、端的に事実認定する「核心司法」へと転換しつつあることを印象づけたといえる。
 真相究明を使命として強く意識した高裁の姿勢だったが、最高裁判決は消極的ながらも、これをたしなめる格好となった。
 緻密な立証は、真相を明らかにするためには有効な手法のひとつだ。一方で、裁判員裁判がすでに始まっているなか、裁判を長引かせ裁判員の負担を増やすリスクを負ってまで、当事者の検察官や弁護人が求めていない証拠を裁判所が主張・立証させる必要があるのかどうか。「スピード」と「真相究明」のバランスをいかにとっていくかが問われている。(酒井潤)
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山陽新聞地域ニュース (10/18 9:32)
[社説]女児殺害判決 「核心司法」への転換示す
 広島市の小1女児殺害事件で殺人などの罪に問われたペルー人男性の上告審判決で、最高裁は一審広島地裁の無期懲役(求刑死刑)を破棄した二審広島高裁判決をあらためて破棄し、審理を高裁に差し戻した。
 一審では、事前に争点を絞り込む公判前整理手続きの適用などで迅速審理が進められ、「裁判員裁判のモデルケース」と言われた。これに対し二審判決は、犯行場所の特定につながる可能性がある被告の供述調書を証拠として調べなかった点を「審理を尽くしておらず違法」と認定。地裁に審理を差し戻したため、弁護側が上告していた。
 最高裁は、検察側が調書を犯行場所立証の証拠として主張していない点などに触れ、裁判所が検察側に内容の説明を求め、任意性立証の機会を与える義務まではないとして一審の訴訟手続きを「違法でない」と結論づけた。
 判決で注目されたのは、裁判員裁判に向けて導入された公判前整理手続きを踏まえ、今後の刑事裁判の在り方について初めて言及したことだろう。
 「当事者の主張を踏まえ、真相解明に必要な立証が的確になされるべき」として「当事者主義」と「証拠の厳選」の原則を強調するとともに、「合理的期間内に充実した審理を終えることがこれまで以上に強く求められる」と迅速審理を促した。
 大量の調書を読み込んで詳細な事実認定をする従来の「精密司法」から、争点を整理した集中審理で事件の本質をつかみ取る「核心司法」へかじを切り、裁判員裁判の今後の方向性を示したといえよう。
 ただ、「迅速審理」と「真相解明」のバランスを取って、いかに整合性をつけるかは難しい課題だ。法曹三者に課せられた責務は極めて重い。

広島女児殺害 最高裁=当事者が立証しようとしていない点まで立証を促す義務はない


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