勾留されていた無職男性が死亡した問題 愛知県岡崎署 署長ら27人処分 2023.12.1

2023-12-02 | 社会

岡崎署勾留死で警部ら9人を書類送検、署長ら27人処分 「部下任せ」署長に重い責任
 2023年12月2日 中日新聞
 愛知県警岡崎署の留置場に勾留されていた無職男性=当時(43)=が昨年12月に死亡した問題で、県警は1日、適切な体調管理を怠ったとして、業務上過失致死などの疑いで、留置担当だった警部ら8人の署員と退職者1人の計9人を書類送検した。留置管理が不適切だったとして、島崎浩志署長ら署員11人を減給や停職などの懲戒処分とした。
 県警は、署長や副署長ら署の上層部について、当時の留置管理状況を十分に把握していなかったとして刑事処分を見送った。署長は男性の勾留中、一度も巡視していなかった。平松伸二・警務部長は記者会見で「不適切な処遇が継続し、尊い命が失われた重大な結果を生じさせた」と陳謝した。
 警部は、保護室内で男性を足で蹴るなどした特別公務員暴行陵虐容疑のはか、留置管理に関する書類に虚偽の内容を記載した虚偽有印公文書作成容疑でも送検された。このほか、別の拘留中の男性2人に対しても暴行や書類の偽造をした疑いで書類送検された。
 処分者は懲戒の11人を含め、計27人に上り、県警の一度の処分者数としては過去最多。署長と警部は1日付で退職した。会見で、署長の「留置業務管理の不徹底こそが大きな原因」とするコメントが発表された。
 男性は昨年11月25日に公務執行妨害容疑で逮捕され、岡崎署に勾留された。暴れるなどしたため、ベルト手錠や捕縄の「戒具」で計140時間以上身体拘束されていたが、12月4日に息をしていない状態で見つかり、死亡が確認された。
 県警は12月中旬から本格的に捜査を開始。亡くなるまでの5日間ほどは食事や水分をほとんど摂取していなかった。死因は高度脱水による急性腎不全で、戒具使用との直接的な因果関係はないと判断した。

解説 
 密室の留置場で起きた問題を解明するため、県警は、殺人など凶悪事件を担う捜査1課を投入し、留置担当者や当直勤務員ら数十人の署員を事情聴取するなど厳しく捜査した。結果、男性の死につながる対応をしたのは、留置管理を専門とする「留置主任官」(警部)以下3人のみと判断。男性の状況を把握していなかった署長ら、上層部3人の書類送検は見送った。
 だが、留置主任官は、法律で「留置業務管理者」と定められた署長の補佐役で、最終的な責任を負うのは署長のはずだ。署長は報告を受けていなかったとされるが、管理者であれば自ら留置場を見回り、状況把握に動く責務がある。対応を部下任せにしていなければ、男性の死を防げた可能性もあり、管理者としての役目を果たさなかったとの批判は免れない。
 容疑者の勾留で、警察は人の自由を奪うと同時に、その人の人権、そして生命を守る責任も負う。すべての警察官が、その重い責任を意識し行動することが求められる。
 (社会部・曽布川剛)

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し


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