世界も認めた「岡ちゃん、ごめんね」 勝っても負けても偉業は消えない

2010-06-30 | 相撲・野球・・・など

世界も認めた「岡ちゃん、ごめんね」 勝っても負けても偉業は消えない<ゆるふわサッカー+JAPANなニュース>
DIAMOND online 2010年6月30日
 英語メディアが伝える「JAPAN」をご紹介するこのコラム、今週は何がどうしたって「岡田JAPAN」の話題です。日本人が「岡ちゃん、ごめんね」と国民的謝罪(?)に至る顛末を、米主要メディアまでもが大きく取り上げ、そしてFIFAサイト記事は「日本はブルーな気持ちを捨てたサムライ集団になった」と賞賛。つまり英語メディアさえもが事実上の「岡ちゃん、ごめんね」状態にあるわけです。これって夢かしら。(gooニュース 加藤祐子)
 世界が事実上の「岡ちゃん、ごめんね」
 「岡田、解任しろ」から一転「岡ちゃん、ごめんね」へと毀誉褒貶も甚だしい、今や日本一の「勝てば官軍」的な絶賛を浴びている岡田監督。このコラム掲載の頃には日本がベスト8に残るかどうかが分かっているわけですが、ここまで来たら勝っても負けても、岡田JAPANの偉業が消えるものではありません。
 約1年前に岡田監督が「ベスト4」を目指すと発言した時、それは世界的に驚き(と一部の失笑)でもって迎えられました。約1年前にこちらでご紹介したようにロイター通信は「岡田監督は浮ついたお調子者なのか?」とバッサリ。これに類することは数多の外国メディアが書いていました。
 そして大会開始。米スポーツ専門局「ESPN」のサイトは、「グループリーグで良かったこととひどかったこと」という6月25日付コラムの中で、「最優秀選手=アルゼンチンのメッシ」とか「最優秀監督=アルゼンチンのディエゴ・マラドーナ」、「最悪監督=フランスのレイモン・ドメネク」、「最もつまらない試合=イングランド対アルジェリア」などに並んで、「最も意外だった選手=日本の本田圭佑」を選出。その選出理由は、「日本の岡田武史監督が目標を準決勝に定めた時、熱でもあるのかと思われたものだが、ブルー・サムライは本田の絹のような技術のおかげで実際にベスト4にたどりつくかもしれない」からだ、と。
 つまり、高熱にうかされてうわ言を口にした男と見なされていたわけです、岡田監督は。国内外で。この約1年間というもの。
 それが大会の蓋を開けてみれば、誰もが驚く日本の躍進。そして、誰もが驚く欧州強豪の苦戦。その対比があるからでしょうか、FIFA公式サイトの26日付AFP記事では、日本が「against all expectations(あらゆる予想を覆して)二次リーグに進んだ」ことで、岡田監督が「regained credibility(信用を取り戻した)」と。
 そしてさらに驚いたことに、米『ニューヨーク・タイムズ』が28日付で、岡田監督の名誉回復に関する詳しい記事を掲載しました(なぜ驚きかというと、サッカー不毛の地だったアメリカのメディアがワールドカップについて詳報するのを見るたびに、私は脊髄反射的に驚いてしまうからです。あまりに隔世の感があって)。
 そのタイトルも「Japan’s Coach, Once a Punch Line, Is Having the Last Chuckle(かつて笑い話のオチ扱いだった日本の監督、最後に笑うのは彼だ)」と。「punch line=冗談のオチ」扱いされていたわけです、岡田監督は。いやはや。
 (――と思ったら、その後、この記事の見出しが「Japan’s Coach Is Having the Last Chuckle(最後に笑うのは日本の監督)」となり、「punchline」という表現が記事本文からも削られていました。ネットの場合、記事掲載後の修正は誰でもやることですが、記者や編集の誰かがちょっと言い過ぎたかと思い直したのだとしたら、それもまた「岡ちゃん、ごめんね」現象の一環では、なんて)
「ベスト4」発言は「狂気ではなかった」と
 『ニューヨーク・タイムズ』のジェレ・ロングマン記者は書き出しからいきなりこうです。「2カ月前、1カ月前、いや2週間前でさえ、この厳しい男の言葉に耳を傾けようと言う者はほとんどいなかった」と。さらに、「岡田武史の言うことをまともに受け止められるはずなどなかった。日本が準決勝に? 国外でW杯の試合に勝ったことのないチームが? 準決勝まで行くという岡田の予言は、戯言に聞こえた。岡田は笑い者になったのだ」とまで。
 にもかかわらず、日本は「surprisingly(意外にも)」決勝トーナメントに進出。「日本のファンはチームにブーイングするのを止めた。岡田をクビにしろと言うのも止めた。代わりに、日本時間では真夜中に始まり明け方に終わる試合を、国民の40%が見つめているのだ」。
 記事は「53歳でメガネをかけていて、コメントの端々に宗教や哲学や歴史についての講義を挟み込む」岡田監督が、倒れたオシム氏の後任に急きょ選ばれてからというもの、いかに日本国内で批判され続け、「悪い冗談」扱いされ、トルシエ元監督には「岡田の頭は混乱している」とまで言われ、サポーターからはクビにしろクビにしろクビにしろと言われ続けて来たかと、まあ、サッカー好きの日本人には周知のあれこれを列挙していきます。
 そして記事は、大会開始と共に岡田監督が「日本で最も有名な選手、クリエーティブなMF中村俊輔をベンチ送りにして、脱色して金髪の本田圭佑をただ一人のストライカーとして配置した」ことを特筆。さらに「本田は、髪の色は偽物かもしれないが、その技術は本物だ」と、本田選手の金髪にこだわっています。日本人がなぜ金髪なのか、読者に説明しておかなくてはと思ったのかもしれません。
 さらに「パラグアイを破った場合、日本は準々決勝でスペインかポルトガルと対戦する。なので、日本の準決勝到達は今でも難しそうだ。しかし岡田の予言は今では正しく評価されている。あれは狂気ではなく、動機づけだったのだ」と。「ベスト4」発言は決して戯言ではなく、選手に本気を出させるための計算づくの発言だったのだと。『ニューヨーク・タイムズ』紙上で、岡田監督の発言は戦術の一環と認められたわけです。
 長いことサッカーに不熱心だったアメリカのメディアがW杯を詳報しているだけで驚く私は、『ニューヨーク・タイムズ』だけでなく、よりによって『ウォール・ストリート・ジャーナル』までもが岡田監督の復権について書いているのを見て、仰天しました。
エゴのぶつからない戦う集団に
 記事は、日本の16強進出は、ずっと疑われてきた岡田監督にとって「redemption」だったと。この言葉は直訳してしまうとイエス・キリストの「贖罪」なのですが、それでは意味が通りません。この場合は「復権」とか「名誉回復」というほどの意味でしょうか。
 そしてこの記事が、Twitterで繰り広げられている「岡ちゃん、ごめんね」の「謝罪ハシュタグ」、「#okachan_sorry」を紹介。「okachan」は日本語で岡田監督の愛称だ、とまで説明しています。岡田監督へのこれまでの批判は今や、「in Okada we trust (我々は岡田を信じる)」的なスローガンにとって変わられている、と。少し解説しますと、「in God we trust (我々は神を信じる)」というのがアメリカ合衆国のモットーで、紙幣や硬貨にも印刷されている言葉です。そのもじりが、「in Okada we trust」なわけです。「God」を「Okada」に入れ替えたわけです。うわあ……。
 さらに同紙は、岡田監督の成功をこう分析。「過去の外国人監督が伝えられなかったメッセージをようやく、選手たちに伝えられたことが、岡田氏の成功の要因だと言われている。つまり岡田氏は選手たちに、日本人らしさを減らせ (be less Japanese) と伝えたのだ。このため選手たちは、目上の人の命令に無条件に従うべしという日本の文化的規範を脇に置いて、もっと自由に個々の判断で行動するよう要求されたのだ」と。
 Yoree Kohという記者が書く「目上の人の命令に無条件に従うべしという日本の文化的規範」という日本人に対するステレオタイプが、ちょっと気になるところではありますが、まあ、日本人は外国からはそう見られているし、確かにそういう傾向が全体として強い国民ではあるだろうと私も言葉を濁しながらも思うし、これ以上、日本人論を展開するべき場でもないので、WSJの記者がそう書いていると指摘するだけにとどめておきます。
 そしてやはり同紙も、岡田監督が思い切ってスタメンを入れ替えて、「人気者だが負傷している」中村俊輔選手を外したのが奏功したと指摘。ただし日本の場合は「選手たちの性格も、成功の大きな要素だ。フランスやイタリアといった強豪勢の敗退につながった、スーパースターたちのエゴがない日本代表は、内部対立を免れてきた。今大会でこれまで4得点を決めている本田選手は間違いなく、新しいヒーローとして台頭したが、先輩選手たちをきちんと立てている」のだと。
 確かに、イングランド敗退(あああああ……)の後にも一部の英メディアは、「スーパースター軍団」のエゴがチームの団結を妨げていた、今こそ本当のチーム作りを始める時だなどと批判していました(いやはや、本当に……)。
 一人一人が誇りや気概をもつことは大事だけれども、サッカーがチームスポーツである以上、その誇りや気概やチームのためでなくてはならない——ということでしょうか。FIFAサイトの「日本のサムライはブルーな気持ちをぬぐい去る」という記事が、日本の躍進について次のようにまとめています。
 「南ア入りの時点では不安だらけだった日本代表は、大会の進行と共に、新しいアイデンティティーの構築に成功した。端的に言えば、サムライ・ブルーは戦士の魂は手放さずに、ブルーな気持ちだけをぬぐい去ったのだ。日本代表が武器庫に備える新しい刀は、戦術的な規律 (tactical discipline) だ。その資質は普段は欧州や南米のチームについて言われるものだが、日本は、これまであったかもしれない甘さ (naivety) を全て捨て去った。おかげで、バックは実に強固だし、それと同じくらいフォワードはエキサイティングだ。絶え間なく動き続ける日本のパス・サッカーに、中立的な第三者も夢中にさせられている」。
 すごい賛辞です。規律あるバックが強靱にしてフォワードはエキサイティングな、動きまわる、戦うサッカー集団になったというのです。日本が。ダークホースの躍進にこの記者がワクワクしている様子が伝わってきます。
 FIFAサイトが、ESPNが、『ニューヨーク・タイムズ』が、『ウォール・ストリート・ジャーナル』が……。実に世界的な 「岡ちゃん、ごめんね」です。パラグアイ戦に勝っても負けても、この偉業は消えるものではありません。
◇筆者について…
加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊や爆笑問題と同い年。実は奥田民生とも。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」の洗礼でイギリス英語も体得。オックスフォード大学修士課程修了。全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイトで米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。フィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。

手のひらを返したような岡田ジャパン礼賛の嵐 毀誉褒貶のジェットコースター


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