米 シェールガスに沸く/生産急増 不景気な街一転/高まる火力依存 日本、輸入に期待大

2012-04-07 | 国際

米 シェールガスに沸く
中日新聞《核心》2012/4/5 Thu.
 米国が「シェールガス革命」に沸いている。地中深くの岩盤層に含まれる新しい天然ガスだ。採掘技術の確立で生産が増え、米国内の天然ガスは大幅に値下がり。採掘可能な埋蔵量は、米天然ガス年間消費量の40年分に及ぶと推定される。相次ぐ原発停止で火力発電への依存を強める日本では、米国産天然ガスの輸入に期待が高まっている。(米東部ペンシルベニア州モントローズで、竹内洋一)
生産急増 不景気な街一転
■無人のガス田
 米東部ニューヨークなど6州にまたがる巨大なシェールガス鉱区マーセラス。広さ約24万5千平方キロは日本の本州とほぼ同じで、埋蔵量は全米の55%を占めるとされる。
 その中心部ペンシルベニア州モントローズの農村地帯にあるシェールガス田を訪ねた。直径約2メートルの円形の井戸からパイプが突き出し、地中から噴き上がるガスから水分を分離する装置につながっている。
 ガス田は通常は無人で、監視カメラや計器は遠隔操作される。時折、分離装置から圧力を抜くポンという音が聞こえるほかはいたって静か。生産されたガスは地中に張り巡らされたパイプを通って消費地へ供給される。
 約1㌔離れた地点では新たなシェールガス田の掘削が進む。
 「天然ガスが出る前は不景気な街だった。今ではすっかり基幹産業よ」と話すのは、掘削に当たるキャボット社のジャニス・ロブデルさん(48)。「開発が始まったばかりで前例はないけど、ガス田の寿命は25から50年かな」と生産の長期化を期待する。
■権益獲得争い
 米国でシェールガスの採掘が本格化したのは2007年。全米の天然ガス生産にシェールガスが占める割合は3年後に23%にまで急増。オバマ大統領は天然ガスを軸にしたエネルギー・雇用政策を訴えている。
 生産の急増に伴い、米国内のガス価格は下落傾向が続く。現在1000万BTU(英国熱量単位)で2ドル50セント(約207円)前後。日本向け液化天然ガス(LNG)価格の6分の1程度で推移する。日本は天然ガスを東南アジアや中東から原油に連動する価格で輸入するため割高なのだ。
 価格差に目を付けた日本の商社は、米国やカナダのシェールガス鉱区の権益獲得に続々と乗り出している。日本政府も、LNGの輸入に向けて米政府と協議に入った。
 米国は天然ガスを戦略物資に位置付け、輸出を規制してきたが、すでに一部ガス会社の輸出申請の承認に踏み切った。
高まる火力依存 日本、輸入に期待大
 日本の業界筋は「天然ガスの液化や輸送コストを加えると、米国からの輸入価格は十㌦前後になるのでは」とみる。それでも現在の価格より安く、供給源の多様化は日本のエネルギー安全保障にも資すると期待される。
 核開発を進めるイランへの制裁強化で、米国は各国にイラン原油の輸入削減を求めた。その際、日本や欧州各国に代替エネルギー確保への協力を約束したのも、自国の天然ガス輸出の拡大を想定していたとみられる。
 ブルッキングス研究所(ワシントン)のチャールズ・エビンガー上級研究員は、米国の天然ガス輸出の開始を「四、五年後になるだろう」と予想。対日輸出について「日本が米国の極めて重要な貿易相手だと中国に示す意味がある」と話した。
<シェールガス>
 地下2000~3000メートルにある厚さ30~100メートルの頁岩(けつがん、シェール)層に閉じ込められている。そこへ直接ドリルを入れ、高圧水と化学薬品で岩を砕き、ガスが漏れるすき間を作って回収する。より浅いガス田から採取する従来の天然ガスと成分は同じ。
 埋蔵量は中国が最大だが、掘削技術や産業基盤の整備が進んでいる米国やカナダの生産が先行している。米国内では、化学薬品による土壌や地下水の汚染も懸念される。天然ガスを燃料とする火力発電は、石油や石炭に比べて温室効果ガスの排出量が少ない。


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