FDR「ニューディール」効果は?景気刺激策が長期にわたって有効かどうかは不確実だ

2009-02-27 | 国際
Bloomberg 2009/2/27
米史上最大級の景気対策法案に署名するオバマ大統領。結果はいかに=2月17日、米コロラド州デンバー(ブルームバーグ)
 オバマ米大統領にならうように世界各国の首脳が景気対策に取り組んでいる。そのオバマ大統領はフランクリン・ルーズベルト(FDR)第32代大統領の施策にならっている。
 オバマ大統領がのぞかせる自信の根拠は、現状とどこか類似する過去の回復事例に基づいている。民間企業を信頼しすぎた結果、1929年、膨れ上がった株式市場は大暴落した。当時の31代フーバー大統領は国民を失望させた。その後を継いだFDRは事態の緊急性を理解し、「大胆かつ粘り強い実験」=ニューディール政策を断行した。
 FDRはダウ平均株価の回復と失業率低下に努め、米国と民主主義を救った。そして1940年代に入ると巨大な軍事需要が回復を確かなものにし、刺激が大きいほど効果的ということが証明された。
 2月17日に7870億ドル(約77兆158億円)の景気対策法案に署名したオバマ大統領は、記者会見で「ルーズベルト大統領のニューディール政策に対する非難は、とっくに終結したはずの戦争を戦うようなものだ」と述べ、反対意見を退けた。
 ◆回復は2030年?
 ただ実際のところ、ニューディール政策については賛否の決着がついていないばかりか、その真価に対する経済学者間の議論が10~20年前よりもヒートアップしている。
 株式市場の上昇をはじめ、主要な判断材料が古くなっていることから、2004年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者、エドワード・プレスコット氏は再評価の必要性を指摘している。
 プレスコット氏は、ミネアポリス連邦準備銀行の同僚であるエレン・マクグラタン氏とともに、1920年代後半からの株価変遷をデータ解析。株価上昇率に加えて、宣伝費や調査・開発費など、企業の健全性を図る別指標も加味した結果、大暴落前の29年の株価は適正価格に比べて安かったことが分かった。
 ダウ工業株30種平均が適正価格より低かった29年のピーク時に回復したのが50年代になってから。つまり、FDRの政策も即効性の点では疑問が残るわけだ。それを考慮すると、同路線のオバマ政権が2007年秋と同じレベルにまで株価を回復させるのは30年になるかもしれない。
 では、公共事業の推進により1933年秋までに雇用回復を達成するというFDRの公約は果たされたのだろうか。
 4人に1人が失業していた30年代初期は、今以上に政府の資金援助が歓迎された。だが、同じ公務員でも、臨時に大量雇用された市民保全部隊(CCC)勤務と、そうでない公共事業局(PWA)勤務とでは、給料に雲泥の差があったことは、米国人なら誰もが知っている。
 FDRの雇用政策は「お騒がせ」な結果に終わった。公園、道路、ニューヨーク市のトライボロ橋建設などの公共事業の多くは確かに経済回復に貢献はしたが、必ずしも生産的だったとはいえない。労働統計局(BLS)のデータによれば、ニューディール政策の発表から約10年で失業率は20%近くに戻ってしまった。
 高い失業率は金融政策にも原因の一端がある。ルーズベルト政権当時の資金援助による経済刺激が不十分であり、時として民間企業を疲弊させたことは明白だ。コモンウエルス&サザンという民間企業は南部開発のための企画と資本を有していたにもかかわらず、大統領は開発を許可しなかった。
 第二次世界大戦規模の軍事需要こそが大恐慌の終結を推進し、今日の不況対策モデルとして採用するべきだとする意見もあるが、ロマー大統領経済諮問委員会(CEA)委員長はその見解の妥当性を否定している。
 ◆評価まちまち
 以上述べてきたことを総合すると、法人税率の引き下げ、労働法などの見直しといった、持続的な成長を目指す政策の方が、1930年代の景気回復には有用だったのではないだろうか。そしてそれは、今日の私たちにもあてはまるのではないか。
 今から15年ほど前、米ウェイクフォーレスト大学のロバート・ウェイプルス教授が、経済学者と歴史学者に「総体的にニューディール政策は大恐慌の長期化と深刻化に寄与した」という見解を提示し、その後の学問的視点に影響を与えた。このとき歴史学者は4人中3人が反対の意を示し、経済学者は五分五分と見解が分かれた。
 新しい景気刺激策を支持する気持ちは理解できる。購買意欲が上昇し、短期的かもしれないが好景気をもたらす可能性は高い。しかしながら、景気刺激策が長期にわたって有効かどうかは不確実だ。確実な将来の見通しが得られるよう、過去の事実を踏まえた検討が必要だろう。(コラムニスト Amity Shlaes)
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 Amity Shlaesはブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です。

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