検察審査会 強制起訴という強力な権限=感情に流される議決では公正さを欠く

2010-04-21 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

検察審査会 厳正で公平な運用が肝要
産経ニュース2010.1.29 03:12
  神戸第2検察審査会は兵庫県明石市で平成13年7月、花火大会の見物客11人が死亡した歩道橋事故で業務上過失致死傷容疑で書類送検され、不起訴処分になった明石署元副署長について、起訴すべきだと議決した。2度目の起訴議決を経て全国初の「強制起訴」の措置がとられる。
 裁判員制度と同様に、国民の感覚を反映させる目的で昨年5月に発足した制度だが、実効的な運用にはまだ多くの課題がある。
 容疑者を起訴するかどうかの権限は、これまで検察官が独占してきた。検察審査会は、その強大な権限を監視する機関として昭和23年に始まった歴史ある制度だ。
 裁判員制度と同じく選挙人名簿からくじで選ばれた一般市民11人で構成され、任期6カ月、半数が3カ月ごとに改選される。「起訴相当」「不起訴不当」「不起訴相当」を議決するが、法的拘束力はなく、あくまで“参考意見”にとどまっていた。国民の検察審査会への関心は極めて低いというのが現状だった。
 このため、「議決に一定の法的拘束力を持たせる」との平成11年の司法制度改革審議会の提言をもとに、裁判員制度とともに検討されていた。
 裁判員制度のスタートにともない検察審査会法も改正され、同じ時期に施行された。改正検察審査会法では、起訴相当の議決が出た後、検察官が起訴しない場合は再審査され、8人以上が賛成すれば、強制起訴されるという強力な権限が与えられた。その権限を生かすも殺すも運用次第だ。
 強制起訴となれば、裁判所が検察官役に弁護士を選び、この弁護士が起訴状作成から、法廷での検察官業務を一手にこなす。このため、指定された弁護士の労力は大変なものと推察される。
 また起訴までには補充捜査などの必要が出てくるだろう。そのためにも、検察当局の全面的な協力が必要だ。また、地元弁護士会もバックアップ体制を敷き、指定弁護士を強力な布陣で支えなければならない。そうした点からも公判の成り行きを注視したい。
 検察審査会もこれだけの権限が付与されたことで、その責務は重大となった。これまで以上に厳正で慎重かつ公平な審査が欠かせまい。犯行の重大性や残忍さなどで感情的に流されるような議決では公正さを欠く。国民が納得する冷静な審査を求めたい。
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“検察の正義”に委ねていいのか? 検察を支配する「悪魔」
 そして、日本では歴史的に、「政治は検察の正義に対して介入してはならない」とされてきました。「検察が判断する通りに事件をやることが正義であり、それに政治的に介入すること自体が悪だ」という風にされてきました。ですから、政治は検察に対するチェック機能をほとんど果たしてきませんでした。
 自民党中心の政権がずっと続いていた時代には、そのこと自体はあまり問題ありませんでした。なぜかというと、検察も政治的に大きな影響を及ぼさないように自制的に権限行使をしてきたからです。しかし現在の日本は、国民の主体的な選択によって政権が選択され、それがまだ不安定な状況です。こういう状況において検察は、「検察の権限が政治的に不当な影響を及ぼすことについての危機感というものを、もっと強く持つ必要があるのではないか」と思います。
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中日春秋
2010年4月21日
 刑事裁判の被告にボランティア活動を勧め、実際に更生意欲を確かめたうえで、執行猶予付きの判決を二度、言い渡したユニークな裁判長がいた。刑事裁判を長く担当し、一昨年に退官した安原浩さん(66)。弁護士に転じた安原さんが今度は「検察官」になった▼二〇〇一年に十一人が死亡した兵庫県明石市の花火大会事故で、神戸地裁から検察官役に指定された安原さんらはきのう、業務上過失致死傷罪で当時の明石署副署長を在宅起訴した▼有権者から無作為に選ばれた十一人で構成する検察審査会の「起訴相当」の議決を受け、初めて強制起訴に踏み切る歴史に残る一日になった。時効停止の立証など困難も多いが、安原さんは「有罪判決を取れると確信している」と語っている▼民主党の小沢一郎幹事長の政治資金規正法違反事件も、東京地検の不起訴処分の是非を検討している審査会の議論が大詰めのようだ。仮に「起訴相当」の議決なら、20%台の支持率にあえぐ鳩山内閣の屋台骨をさらに揺るがすことになる▼検察が独占してきた起訴権限の一角を市民が担うことは、司法制度改革の果実の一つだ。その実現は、図らずも審査会の判断が政治に直接影響を与える時代になったことを意味する▼刑事訴追をめぐる検察の判断は、以前から「政治的配慮」が指摘されてきた。それだけに、風穴が開いた意味は大きい。


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