【主張】検察審査会 厳正で公平な運用が肝要
産経ニュース2010.1.29 03:12
神戸第2検察審査会は兵庫県明石市で平成13年7月、花火大会の見物客11人が死亡した歩道橋事故で業務上過失致死傷容疑で書類送検され、不起訴処分になった明石署元副署長について、起訴すべきだと議決した。2度目の起訴議決を経て全国初の「強制起訴」の措置がとられる。
裁判員制度と同様に、国民の感覚を反映させる目的で昨年5月に発足した制度だが、実効的な運用にはまだ多くの課題がある。
容疑者を起訴するかどうかの権限は、これまで検察官が独占してきた。検察審査会は、その強大な権限を監視する機関として昭和23年に始まった歴史ある制度だ。
裁判員制度と同じく選挙人名簿からくじで選ばれた一般市民11人で構成され、任期6カ月、半数が3カ月ごとに改選される。「起訴相当」「不起訴不当」「不起訴相当」を議決するが、法的拘束力はなく、あくまで“参考意見”にとどまっていた。国民の検察審査会への関心は極めて低いというのが現状だった。
このため、「議決に一定の法的拘束力を持たせる」との平成11年の司法制度改革審議会の提言をもとに、裁判員制度とともに検討されていた。
裁判員制度のスタートにともない検察審査会法も改正され、同じ時期に施行された。改正検察審査会法では、起訴相当の議決が出た後、検察官が起訴しない場合は再審査され、8人以上が賛成すれば、強制起訴されるという強力な権限が与えられた。その権限を生かすも殺すも運用次第だ。
強制起訴となれば、裁判所が検察官役に弁護士を選び、この弁護士が起訴状作成から、法廷での検察官業務を一手にこなす。このため、指定された弁護士の労力は大変なものと推察される。
また起訴までには補充捜査などの必要が出てくるだろう。そのためにも、検察当局の全面的な協力が必要だ。また、地元弁護士会もバックアップ体制を敷き、指定弁護士を強力な布陣で支えなければならない。そうした点からも公判の成り行きを注視したい。
検察審査会もこれだけの権限が付与されたことで、その責務は重大となった。これまで以上に厳正で慎重かつ公平な審査が欠かせまい。犯行の重大性や残忍さなどで感情的に流されるような議決では公正さを欠く。国民が納得する冷静な審査を求めたい。