周南5人殺害:「強固な殺意」65歳被告に死刑判決
毎日新聞 2015年07月28日 20時05分(最終更新 07月28日 20時11分)
山口県周南市金峰(みたけ)の5人殺害・放火事件(2013年)で殺人と非現住建造物等放火罪に問われた保見光成(ほみ・こうせい)被告(65)に対し、山口地裁は28日、求刑通り死刑判決を言い渡した。大寄淳(おおより・じゅん)裁判長は「強固な殺意に基づく残忍な凶行。被害者は5人と結果は極めて重大で、遺族の処罰感情は峻烈(しゅんれつ)だ。地域社会に与えた衝撃も大きい」と述べた。弁護側は即日控訴した。
被告は公判で捜査段階の供述を翻し「5人のうち4人の足と腰は殴ったが、頭は殴っていない」などと無罪を主張していた。
判決はまず、被告が事件を実行したかどうかを検討。「凶器とみられる木の棒に被告の指紋がついていた。現場は農山村地域で、被告がたたいた直後に、第三者が犯行する可能性は考えられない。殺害後に出火しており、失火の可能性もない」と指摘した。そのうえで、捜査段階の検察官調書について「『後頭部に近い部位をたたいた』と動作を交えて説明しており信用性がある」と評価して、「被告が殺害、放火したと認められる」と結論づけた。
続いて、当時の刑事責任能力の有無を判断した。両親が他界した2004年ごろから、近隣住民がうわさや自分への挑発、嫌がらせをしていると思い込み、こうした誤った妄想が一定期間以上続く「妄想性障害」を発症しているとの鑑定結果を採用。「この妄想が動機を形成する過程に影響はしたが、殺人や放火を選択したのは被告の性格によるもので、妄想の影響ではない」として完全責任能力を認めた。
最後に死刑を選択した理由を説明した。「被害者の口の中に木の棒を入れて圧迫するなど、凄惨さ、執拗さが際立っている」と厳しく批判。「どの被害者にも殺害されるような落ち度がなく、被告に前科がないことなどを考慮しても極刑は免れない」とした。【杉山雄飛、土田暁彦】
■判決の認定事実
保見被告は(1)2013年7月21日、貞森誠さん(当時71歳)、妻喜代子さん(同72歳)を殺害、放火して夫妻の家を全焼させ(2)同日、山本ミヤ子さん(同79歳)を殺害し、家に放火して全焼させ(3)同日、石村文人さん(同80歳)を殺害し(4)翌22日、河村聡子さん(同73歳)を殺害した。
◎上記事の著作権は[毎日新聞]に帰属します
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
2015.7.28 20:53更新
極刑宣告に息をのみ〝放心〟 保見被告、穏やかな表情が一転…遺族とも視線合わせず
山口県周南市の5人殺害事件で、死刑を言い渡した28日の山口地裁の裁判員裁判判決。口元を緩め、穏やかな表情で入廷した保見光成(ほみ・こうせい)被告(65)は、極刑が告げられると大きく息をのみ、目をしばたたかせた。無言で退廷する被告の背中に、遺族は厳しい視線を送り続けた。
午後3時に開廷。白髪交じりの頭を短く切りそろえた半袖シャツの保見被告は、黒縁の眼鏡を胸ポケットに入れたまま証言台に進み、一礼した。これに先立ち、約20人の遺族が列をつくって法廷に入った際には、視線を合わせようとしなかった。
裁判長が主文を後回しにして判決理由を読み上げる間、保見被告は両肩を上下させるほど大きく息をする場面もあった。
「被害者の恐怖感は想像を絶する」「罪責はあまりに重大だ」。厳しい言葉の末、主文の死刑が宣告されると、傍聴席に座る遺族らは目を赤くして、ハンカチで顔を覆った。
保見被告は先月25日の初公判で「火は付けていないし頭もたたいていない」と起訴内容を否認。最終意見陳述でも「無実です」と述べていた。判決後、ゆっくり立ち上がって弁護士の隣に座り、放心したように何も話そうとしなかった。
裁判員を務めた20代の男性会社員は記者会見で「非常に重い判断をしなければならず、苦痛に感じる部分もあった」と語り、山口県光市の無職、藤井敏之さん(70)は評議の時間は十分だったとして「個人的に悔いはないと思っている」と振り返った。
◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◇ 「山口 周南 連続殺人・放火事件」 飼い犬の『オリーブ』、保見光成容疑者身柄確保の1分後、死ぬ 2013-07-29
◇ 「山口 周南 連続殺人・放火事件」 保見光成容疑者 被害者の名を示しながら動機に関する供述 2013-07-31
◇ 山口 連続殺人・放火事件 保見光成容疑者送検 「女遊びも、無駄遣いもしなかった。仕事の腕も良かった」 2013-07-27
................