足利事件再審は来月21日開始 地裁決定、取り調べテープ開示へ
2009年9月5日 中日新聞朝刊
1990年に女児が誘拐、殺害された「足利事件」で無期懲役刑が確定後、刑の執行が停止されて釈放された菅家利和さん(62)の再審裁判について、宇都宮地裁(佐藤正信裁判長)は4日、再審初公判を10月21日に開くことを決めた。
弁護団によると、宇都宮地検と栃木県警が、足利事件とは別の79年と84年に起きた女児殺害事件2件(いずれも未解決)で、菅家さんを取り調べた際に録音したテープの内容も公判で開示される見通しという。
地裁、地検、弁護団の3者は4日、再審裁判の公判計画を協議。弁護団によると、地裁は半年ほどかけて審理し、判決を出す考えを表明した。
東京高裁の再審請求即時抗告審で、女児の衣服に付着した体液のDNA型を再鑑定した検察側鑑定人の証人尋問も行う見通しという。弁護団は今後、菅家さんを取り調べた元検事らの証人尋問も求めていく。
弁護団は協議で別の女児殺害事件2件で、地検や県警が菅家さんを取り調べた際の録音テープの開示も請求。地検は、再審で無罪を求めることから「再審公判では争点がなく、開示理由はない」と主張した。
しかし、地裁は「取り調べの内容や時期が足利事件の自白にも影響した可能性がある」として、開示するべきだと判断。地検が拒否した場合は開示の勧告や命令を出す考えを示したという。
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<追記事>
再審開始「次は私の番」 奥西死刑囚、支援者に手紙
2009年8月26日 中日新聞朝刊
奥西死刑囚が支援者にあてた直筆の手紙。「死刑なんて考えて見ませんでした」とつづられている
三重県名張市で1961(昭和36)年に女性5人が殺された「名張毒ぶどう酒事件」で、再審開始決定の取り消しを不服として特別抗告中の奥西勝死刑囚(83)が、足利事件で菅家利和さん(62)の再審が決まったことを受け「次は私の番です。信じています」と心境をつづった手紙を愛知県半田市の支援者に寄せた。
手紙は便せん3枚に直筆で書かれている。名古屋拘置所から4日、特別面会人の稲生昌三さん(70)の自宅に届いた。足利事件の再審決定で特別抗告に対する最高裁判断への注目も高まる中、奥西死刑囚に稲生さんが「いまの気持ちを手紙で世に訴えてみては」と提案していたという。
「私の想(おも)いを書きます」と始まる文面。菅家さんの再審決定に「私も長い間同じように苦しんできた者なので他人事と思えずうれしく感じました」と共感をにじませた。
捜査中に受けたという暴力や自白の強要にも言及した。捜査員から「お前の家族がいじめにあって苦しんでいる。これを救い助けるには早く自白するしかない」などと迫られ、「苦しみ、たまらなくなりました。そうしてウソと想像の自白に拍車を掛けてしまいました」と振り返る。
「強要された自白なので死刑なんて考えて見ませんでした。きっといつか分かってもらえると信じていました」と再審への望みをつなぐ奥西死刑囚。弁護団は7月、DNAの再鑑定で再審が決まった足利事件の教訓を踏まえた判断を求める補充書などを最高裁に提出し「自白に依拠した事実認定がいかに危険かを明確にした」と指摘している。