オスプレイ墜落事故に見るあまりにひどい「偏向報道」「情報操作」 山田順 2016/12/15

2016-12-18 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

オスプレイ墜落事故に見るあまりにひどい「偏向報道」「情報操作」にもの申す
山田順  | 作家、ジャーナリスト、出版プロデューサー  12/15(木) 15:14
オスプレイは有用かつ必要な軍用機(写真:ロイター/アフロ)
■本当に「沖縄県民の怒りは頂点」なのか?
 今回のオスプレイの墜落(不時着)だが、これは単なる事故だ。それ以上のものではない。ただ、死者がでなかった点、海上に墜落した点で「不幸中」の幸いだった。米軍機は最近では、9月に沖縄本島の沖合でAV8攻撃機ハリアーが墜落、12月初めに高知県・室戸岬沖約100キロの海上でFA18ホーネット戦闘攻撃機が墜落している。前者ではパイロットは助かり、後者では死亡しているが、この二つの事故に関しては、メディアはただ事実関係を報道しただけだった。
 ところが、今回は違う。オスプレイをまるで「悪魔のヘリコプター」扱いして、「それみたことか」式に報道した。この点を強調して、社説にまで仕立て上げた新聞もあった。つまり、メディアはこの事故を起こるべくして起こった事故だと言いたいのだ。そして「市街地に落ちていたらどうするんだ」とし、「沖縄県民の怒りは頂点」などと、続報を自ら膨らませていった。
 テレビは住民にインタビューし「怖いです。なんとかして欲しい」などいう声を垂れ流した。こんなふうに思っている住民など一部しかいないのに、あたかも沖縄住民はみなそう思っているように報道するのだから、偏向もはなはだしい。
■信じがたい副知事の「植民地」発言
 このような偏向報道があるから、沖縄県の安慶田光男副知事は“調子にのって”、ローレンス・ニコルソン中将(沖縄米軍のトップ)に直接抗議に出向き、その後、「謝罪はまったくなかった。本当に植民地意識丸出しだなと感じた」という恥知らずな会見をしてしまった。
 さらに、翁長雄志知事は、必要もないのに上京して、政府に抗議、普天間基地に配備されているオスプレイを撤去させると息巻いた。
 軍用機だろうと民間機だろうと、事故が起きたときは、まず乗員の安否の報道が優先だ。次に、事故原因だ。しかし今回、日本のメディアはそんなことは二の次で、恣意的な報道に終始した。
■ニコルソン中将の話を恣意的にしか伝えず
 米軍の発表によると、事故を起こしたオスプレイは、空中給油の訓練中に、燃料を送るホースが切れて羽根に当たったために、飛行に障害をきたした。そのため、パイロットは住宅地の上空を通って嘉手納基地や普天間飛行場に戻るルートを避け、キャンプシュワブのある名護市に向かったという。
 したがって、メディアはニコルソン中将のインタビューをもっと詳しく伝えるべきだろう。しかも、オスプレイは日本防衛のための訓練を行っていたのだ。
 ところが、メディアは「住民に被害を与えなかった。感謝されるべきだ」「(事故を)政治問題にするのか」というところばかり切り取って、ニコルソン中将の発言を伝えた。 ニコルソン中将はこう言っていた。
 「よく訓練されたパイロットたちの素晴らしい判断と技能で最悪の事態を避けることができました」「沖縄の一般市民をいっさい危険にさらさないですみました」「若いパイロットたちは入院中です。私は彼らを誇りに思っています」「事故自体そのものは遺憾に思うし謝意を表明します」「航空自衛隊、海上保安庁をはじめ日本や沖縄の関係各所の迅速な対応にも感謝します」
 この司令官は、軍人として立派である。
■オスプレイの事故はそれほど多くない
 このような偏向にさらに輪をかけているのが、日本のメディアがオスプレイの利点をまったく伝えないことだ。
 日本のメディアによると、オスプレイは事故多発の危険なヘリだという。しかし、本当にそうなら、自国の若者を死なせてしまうのだから、なぜアメリカ軍自体が使用を止めないのか?
 じつは、オスプレイの事故はそれほど多くない。今年の4月の産経新聞記事によると、海兵隊の平均事故率は2.45となっていて、オスプレイの事故率は1.93と平均を下回っているという(記事のこの部分はなぜか削除された)。それとは別に、ヘリコプターというのは結構事故が多いが、どちらかというと軍用機より民間機のほうが多い。
 そもそもオスプレイは、通常飛行をするために開発されたものではなく、主に特殊作戦で使用するのを目的とするために開発された。そのため、夜間や低空など過酷な条件での飛行が多い。だから、訓練を徹底して行っている。今回も、そんななかで起きた。要するに、オスプレイは一般の飛行機のように、安全な条件下での飛行を目的としていない。
■入院しているパイロットを見舞いに行け
 この点で言うと、これまでオスプレイは大活躍してきた。たとえばフィリピンが巨大台風の災害を受けたとき、ネパールで大地震が起こったとき、オスプレイは被災現場に大量の物資を運んだ。つまり、日本のように台風や地震などの自然災害が多い国には、オスプレイは必要なヘリなのである。実際、熊本地震の際には、オスプレイが大活躍した。
 しかし、こうしたことを、日本のメディアはほとんど報道しない。
 翁長知事と安慶田副知事は、行くべき場所を間違えている。まず行くべきなのは、オスプレイのパイロットたちが入院している病院である。そうして、彼らに、日本国民と沖縄県民の謝意を伝えるべきだろう。
*山田順
 作家、ジャーナリスト、出版プロデューサー
  1976年立教大学卒業後、光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年退社。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙と電子の両方の出版プロデュースも手掛ける。専門分野はメディア、経済、ビジネス。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『新聞・出版 絶望未来』(東洋経済新報社)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク)。近著は『円安亡国 ドルで見た日本経済の真実』(文春新書)。
  official site山田順プライベートサイト

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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