【政界徒然草】穴だらけの外国人医療費、野党は真逆主張
2018.12.10 01:00 プレミアム
外国人労働者の受け入れ拡大に向けた改正出入国管理法が8日、成立した。しかし、専門家が日本人への「逆差別」と表現するほど外国人に手厚く、不正も難しくない公的医療保険制度の議論は尽くされなかった。与党は「穴」をふさぐ対策を政府に求めるが、「共生」をうたう主要野党は逆に対策を批判している。医療費が無尽蔵に膨らむ可能性をはらんだまま、新制度がスタートすることになりかねない。
外国人医療費に関する与野党の姿勢の違いが鮮明になったのは、11月14日の衆院厚生労働委員会だ。
自民党の小林鷹之元防衛政務官は「政府が保険適用の厳格化、とりわけ、健康保険法改正案を次期通常国会に提出するというのは一歩前進だ。もともとがあまりに緩い制度だったことも事実だ」と指摘した。根本匠厚生労働相は「在留外国人の増加が見込まれるなかで、公的医療保険の信頼確保のために、適切な利用を確保することは重要だ」と、厳格化の意義を強調した。
一方で、立憲民主党の尾辻かな子氏は「いかに管理をしていくかに重点があり、いかに外国の方々とともに生きていくのか、支援をしていくのかという視点が欠けている」と述べ、手厚い制度が必要だとの認識を示した。
■保険証使い回しの悪例も
外国人医療費については(1)健康保険証の仲間内での使い回し(2)保険制度加入直後でも、高額なガン治療なども国民と同等に保険診療が可能(3)海外に残す家族の医療費も保険診療が可能-などの問題点が指摘されている。
医療費は、国保などに加入すれば原則3割負担となり、非加入なら全額自己負担となる。保険証は写真添付がなく、自分で現住所を書き込めるものもあり、失踪者が仲間内で「使い回し」をすることも想定される。平成26年には、神戸市で不法滞在のアジア人女性が妹の国民健康保険証を使い、2年以上にわたり総額1千万円以上のHIV(エイズウイルス)治療を受けていたことが発覚した。
高額な医療費がかかった場合に治療費を払い戻す「高額療養費制度」の不正使用も深刻だ。外国人が「留学」など入国目的を偽って国保に加入し、少ない自己負担で高額な治療を受けて帰国する不正な事例が増加している。がん治療薬「オプジーボ」でも、制度を使えば年間1千万円以上とされる投薬治療が、収入によっては年60万円以下の負担で済む。
従来は外国人の国保加入は1年の在留期間を満たす必要があったが、24年の改正住民基本台帳法に伴い90日以上の在留資格を得れば加入できるようになった。保険料は前年度の収入に基づく所得税額によって算出されるケースが多い。来日直後の外国人は前年度の日本国内での収入がないため、保険料は最低額(月額数千円)だ。外国人が治療後すぐに帰国するケースが増えれば、赤字ばかり増える。
政府は在留外国人が母国に残してきた家族については、保険適用外とする方針だ。現行では、一定の条件を満たせば母国に残してきた在留外国人の家族の医療費も日本の保険で支払われる。企業の健保であれば、本国の3親等以内の親族を扶養に入れることもできる。
外国人の医療に関する情報を提供しているNPO法人「AMDA国際医療情報センター」(東京都新宿区)の小林米幸(よねゆき)理事長は「保険の食いつぶしといわれても仕方がない。外国人を一定期間、別枠とする制度も考えるべきではないか。そうしないと日本人への『逆差別』になりかねない」と警鐘を鳴らした。
政府は問題点を踏まえ、昨年3月に全市町村を対象に、在留外国人が国保加入資格取得日から6カ月以内に80万円以上の診療を受けたケースについて調査をした。「不正の可能性を否定できない」とされる事例が見つかり、今年1月から厚労省と法務省が連携して、不適正な事案を市町村から入国管理局に通知する仕組みを整えた。
■野党、厳格化の流れに逆行
11月14日の衆院厚労委では、小林鷹之氏が「入国直後に高額療養費制度などを利用する蓋然性が高い方については、情報を在留資格付与にあたっての判断材料とすべきだ。診断書提出の義務化を検討してほしい」と制度のさらなる厳格化を求めた。
これに対し、尾辻氏は「外国籍の方々が、あたかも不正受給をしているかのような報道やテレビ番組が見聞きされている」と指摘した。その上で「不正な事案だと『疑いが残る』だけで確認はできなかった。なぜ、調査をしているのか。政策の整合性が取れていない」と「厳格化」への流れを批判した。
保険制度を支える国民には、どちらの主張が説得力を持つだろうか。(政治部 沢田大典)
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です *強調(=太字)は来栖
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◇ 改正入管法成立 2018/12/8 施行されれば場当たり的な対応に追われ、現場は混乱しよう。 根本部分からの法律の作り直しを強く求めたい。
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