中日春秋(朝刊コラム)
2019年11月4日
その料理を食べる時は、頭からナプキンをすっぽりとかぶるのだそうだ。料理は野鳥ズアオホオジロ(オルトラン)のローストである ▼ナプキンをかぶることで香りを逃がさない。もう一つ、理由がある。食べる姿を神に見とがめられないようにするためと伝わる ▼神の目が気になるのは残酷な料理法のせいもあろう。二十一日間、暗闇の中で飼育し鳥から光を奪う。体内時計が狂うのかエサを食べ続けるそうだ。脂をたっぷり蓄えさせたところでブランデーの中でおぼれさせる。心配無用。本場フランスでも一九九九年、レストランでの提供が禁じられている ▼神の目が気になる別の一皿が高級レストランひしめく米ニューヨークから追放されるそうだ。ガチョウやカモにエサを無理に食べさせる残酷な製造方法が長年批判されてきた、高級食材のフォアグラ。ニューヨーク市議会はフォアグラの販売や提供を禁止する条例案を可決した。こうした流れは世界的に広がっていくのだろう ▼強制給餌によるフォアグラ製造は紀元前三世紀の古代エジプトでも行われていたそうだ。人類の長い歴史と文化に培われた一品といえるが、ノドに管を入れエサを詰めこむ残酷さは現代にはなじまないか ▼美味でもがまんする。これもまた、人類の文化と歴史の新たな一ページなのだろう。第一、非難されながら食べてもうまくノドを通るまい。
◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です
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〈来栖の独白 2019.11.4 Mon〉
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