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少年放火の捜査資料公表、奈良家裁が講談社と著者に抗議
2007年06月05日13時31分
奈良県の高1の少年が自宅に放火し一家計3人が焼死した事件で、奈良家裁の前田順司所長は5日、著書「僕はパパを殺すことに決めた」の中で、少年の供述調書とされる捜査資料などを公開したジャーナリストの草薙厚子さんと出版元の講談社に「抗議書」を出した。「少年法で非公開とされている少年審判に対する信頼を著しく損なうばかりか、事件関係者に多大な苦痛を与えかねず、誠に遺憾だ」としている。
また、長勢法相はこの日の閣議後の記者会見で、人権侵犯事件として草薙さんや講談社に対する調査を始めることを明らかにした。
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〈講談社学芸図書出版部のコメント〉 奈良家庭裁判所からの抗議および法務大臣の発言については重く受けとめている。今回の事件の背景には虐待とも呼ぶべき勉強の強制、さらに過熱する受験戦争がある。この事件は「特殊事例」として片付けられるものではなく、広く読者に真相を伝えるべきだと判断して刊行した。今後の出版活動においても、少年法の精神を尊重していく。
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<奈良放火殺人>書籍に少年の供述 人権局に調査指示…法相
6月5日12時19分配信 毎日新聞
奈良県の医師宅で昨年6月起きた放火殺人事件を題材にした書籍に、殺人などの非行事実で中等少年院に送致された長男(当時高校1年)の供述調書などが引用されていることについて、長勢甚遠法相は5日の閣議後会見で、「人権侵犯にあたる可能性がある」と述べ、法務省人権擁護局に調査を指示したことを明らかにした。
この事件は、長男が放火したとされ、母子3人が焼死した。問題の書籍は、フリージャーナリスト、草薙厚子さんが著した「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)。先月に出版された。
指示した理由について、法相は「著者は調書や審判のやりとりを引用する形で執筆したと明言している。司法秩序、少年法の趣旨に対する挑戦的態度であって、一般的取材で報道されるのと格段に意味が違う」と述べた。また、奈良家裁も同日、講談社と草薙さんに「少年審判に対する信頼を著しく損なうもので誠に遺憾」とする抗議文を出した。
人権擁護局によると、85年以降で雑誌や出版物の掲載内容が名誉棄損などに当たるとして、勧告したケースは8件。大半が神戸連続児童殺傷事件をはじめとする少年事件を巡る内容だった。【坂本高志】
最終更新:6月5日12時19分
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供述調書引用本を調査 法務省「人権侵害の恐れ」
2007年6月5日 12時24分
奈良県で昨年6月に起きた医師宅放火殺人事件で中等少年院送致となった医師の長男(17)=当時高校1年=らの供述調書の内容を引用したとする書籍について、法務省は5日、少年らのプライバシーを侵害し、人権侵害に当たる可能性があるとして調査を始めた。
調書の真偽や出版の経緯について関係者に事情聴取を求める。
人権侵害が認定されれば、出版社などに再発防止を勧告する。
長勢甚遠法相は5日の閣議後会見で「司法秩序を乱し、少年法の趣旨に反する」と批判。流出元については「今のところ法務・検察当局から流出した形跡はない」と述べた。
書籍は5月に出版された「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)。元少年鑑別所法務教官のフリージャーナリスト草薙厚子さんが独自に入手したとする長男や医師、親族らの供述調書を基に長男の心理状態などを描いている。
(共同)