産経ニュース 2016.5.7 05:03更新
【主張】駐留米軍撤退で「米国の利益」を捨てるのか トランプ氏の全額負担要求はおかしい
米大統領選で共和党候補の指名獲得を確実にしたトランプ氏が、日本など同盟国に駐留米軍経費の全額負担を求める考えを表明した。
米軍が日本や韓国、ドイツを守っていることに見合ったものを得ていないとし、要求に応じなければ米軍撤退を検討するという。
米国が日本を含むアジア太平洋地域の平和と安定を守る。それは、日米同盟そのものの意義であると同時に、米国自身の国益である。駐留米軍が、単に日本を守る傭兵(ようへい)のようなとらえ方は、根本的な間違いである。
トランプ氏のような主張は、米国が中心となって築き上げた戦後の国際秩序に混乱をもたらす。同時に、自由と民主主義の価値観を共有する諸国との関係をも破壊することになりかねない。
中国は軍事力を背景に、南シナ海の支配を強め、沖縄県の尖閣諸島を脅かしている。
北朝鮮は核・弾道ミサイル開発に邁進(まいしん)しており、長距離ミサイルは米本土をもうかがう。
航行の自由は、自由貿易を支える重要な理念である。それが、米国を含む各国の繁栄の基盤となっている。
在日米軍など米軍がこの地域から撤退するというのは、米国の国益にかなうというのか。米軍のアジア展開、日本や韓国などとの連携は、米本土の防衛にも必要なものだ。それを知らないような議論には耳を疑う。
日米両国が貿易摩擦を乗り越えながら、今日までの関係を築いてきたことも重要である。
トランプ氏に限らず、大統領選で保護主義的な経済政策が強まる傾向も懸念材料だ。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への批判や異論が相次いでいるが、地域の巨大な貿易圏をめぐる新たなルール作りを、日米が主導しようということをなぜ否定するのか。
トランプ氏は、中国からの輸入品に高い関税をかけると主張する一方で、関係改善も口にする。どこまで一貫した考えなのか。
11月の大統領選本選の行方は、なお予想が困難な情勢である。だが、トランプ氏の主張が特異なものであっても、多くの米国民が耳を傾けている現実を直視しておくことは重要だ。
同盟国として、おかしな議論には直ちに声を上げ、修正へ導く努力が欠かせない。
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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◇ 【米大統領選】トランプ氏、日本に「米軍駐留費全額負担に応じなければ撤退」日韓の核武装も容認 2016/5/4
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