加賀乙彦さん死去 93歳(2023.01.12 Thu.)

2023-01-18 | 文化 思索 社会

作家で精神科医の加賀乙彦さん死去 93歳 代表作「宣告」「永遠の都」
 2023年1月18日 水曜日  中日新聞

 祖父らをモデルにした一族の歴史や拘置所の死刑囚の内実を自らの体験をもとに重層的に描いた日本を代表する長編小説の作家で、精神科医、文化功労者の加賀乙彦(かが・おとひこ、本名小木貞孝=こぎ・さだたか)さんが12日、老衰のため死去した。93歳。東京都出身。葬儀は近親者で行った。
 東京市芝区(現東京都港区)の祖父が経営する医院で生まれ、今の新宿区歌舞伎町で成長。1943(昭和18)年から終戦まで、軍幹部を養成する名古屋陸軍幼年学校で過ごし、この時の特異な体験が長編「帰らざる夏」につながった。
 戦後、東京大医学部を出て精神科医に。学生時代にセツルメントの活動に参加して貧困層の人々と間近に接した経験や、ドストエフスキーの「死の家の記録」に影響を受け、犯罪学を生涯のテーマに選んだ。
 東京拘置所医務部技官時代には死刑囚44人と面接。特に「バー・メッカ事件」の正田昭死刑囚=69年に40歳で執行=とは深く交流し、初期の代表作「宣告」に結実した。
 56歳から83歳まで書き続けた自伝的長編「永遠の都」(全7巻、芸術選奨文部大臣賞)と続編の「雲の都」(全5巻、毎日出版文化賞特別賞)は、後半生のライフワーク。日本海海戦に従軍した元海軍軍医で、戦前に東京・三田で医院を経営した祖父ら自らの一族をモデルに、複数の登場人物の目を通して東京の街と人の歴史を大河のように描き出した。
 オウム真理教事件では、弁護団の依頼で麻原彰晃死刑囚=本名・松本智津夫、2018年に63歳で執行=と接見。訴訟を続ける能力がないと判断した。
 作品は中国語やフランス語、ロシア語、英語、ドイツ語などに翻訳。海外でも多くの読者を獲得した。
 上智大文学部教授、日本ペンクラブ副会長、軽井沢高原文庫館長、脱原発社会をめざす文学者の会会長などを歴任。21年の歌会始では召人を務めた。
 代表作はほかに小説「フランドルの冬」(芸術選奨新人賞)、「湿原」(大仏次郎賞)、「いかりのない船」、「高山右近うこん」、ノンフィクション「死刑囚の記録」など。
 
 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です
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〈来栖の独白 2023.01.18 Wed.〉
 氏の作品(『宣告』)は、小さな私の人生に決定的な影響を与えた。一昨年、歌会始で召人を務めたとのことで、些かならぬ「がっかり」もあったが。ま、大物となれば、人生、そういうことか。

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