タトゥーあっても温泉に 愛知の老舗旅館が解禁 「多様な価値観尊重」 2022年4月から

2022-04-09 | 社会

タトゥー解禁の告知チラシ。外国人らが笑顔で入浴する絵が描かれている=愛知県蒲郡市三谷町で

一緒に 温かい時間を
 タトゥーあっても温泉に 愛知の老舗旅館が解禁 「多様な価値観尊重」 

 中日新聞 2022年4月9日 夕刊
 温泉旅館が立ち並ぶ愛知県蒲郡市の三谷温泉にある老舗旅館が四月から、タトゥー(入れ墨)を入れている人の浴場利用を解禁した。日本では反社会的組織を連想する人が多いため、長年、利用を断ってきたが、欧米ではファッションや伝統文化などとして認知されており、規則を見直した。経営者は「多様な価値観を尊重したい」と語る。(西山輝一)

 今年で創業九十周年を迎えた老舗「平野屋」。肌に優しいとされるアルカリ性単純泉の露天風呂などがあり、日帰り利用もできる。これまでは近隣の旅館と同様に、タトゥーがある人の浴場利用を断ってきた。
 見直しのきっかけとなったのは二〇一九年に日本で開かれたラグビーワールドカップ(W杯)。タトゥーを入れた外国人が多数来日することが想定される中、W杯開催地となった愛知県豊田市の一部のホテルが期間限定で利用を認め、業界でも受け入れを巡り議論が起きた。
 コロナ禍も決断を後押しした。蒲郡市内での外国人宿泊者数は二〇一九年に十五万人を超えたが、二〇年は一万人弱に激減。平野寛幸社長(43)はアフターコロナを見据え、「多様性を認め合う社会の機運が高まる中、『タトゥー=悪』として排除するのは良くないと考えた」と説明する。
 一日、浴場の入り口に掲げてあった「入れ墨お断り」の看板を外し、日本人と外国人が笑顔で入浴するイラストのほか、タトゥーがある人の入浴を解禁するとの英文の説明文を脱衣所に掲示した。これまで通り、暴力団を含めた反社会的勢力の構成員の立ち入りは禁止する。
 タトゥーを「怖い」「威圧感を受ける」と感じる人にも配慮し、なるべく館内でにこやかな表情で過ごしてもらうようにも呼び掛けるという。平野社長は「来館者が互いの価値観を認め合いながら空間を共有し、楽しい時間を過ごしてほしい」と期待する。

利用可の施設 全国でも少数
 海外では、タトゥーは風習や宗教上の理由のほか、ファッションや家族への愛情表現として浸透。欧州メディアによると、欧州連合(EU)の域内人口の少なくとも12%がタトゥーをしている。
 全国のホテルや旅館が加盟する日本旅館協会(東京)の担当者は「訪日外国人にとって温泉は楽しみの一つ」と指摘する。一方で「多くの日本人がタトゥーに慣れるまでは、認める動きは広がりにくいだろう」とも。タトゥーを入れた人に対して浴場の「利用可」を明示している施設は「まだまだ少ない」という。
 愛知県内の四百二十の会員でつくる県ホテル・旅館生活衛生同業組合によると、二月末時点で、県内で受け入れを明示している施設はない。ただ施設によっては、例外的に外国人の利用を認めているほか、日本人でも他の人の目に触れないよう個室に案内するケースもあるという。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です


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