岸田文雄首相「後来の種子未だ絶えず」吉田松陰の遺言引用 安倍晋三氏葬儀で昭恵さん言及
岸田文雄首相(自民党総裁)は29日の衆院政治倫理審査会で、「後来の種子未だ絶えず」という幕末の志士・吉田松陰の言葉を引用し「今の政治を未来の政治に自信を持って、引き継いでいくことができるか」と訴えた。「後来の種子ー」は、「志を受け継いでくれる者がいれば、まいた種が絶えることなく実りを迎えていく」との意味で、安倍派(清和政策研究会)会長だった安倍晋三元首相の葬儀で、妻の昭恵さんも触れている。自民派閥パーティー収入不記載事件の中心となった安倍派にメッセージを出したとの見方もある。
「後来のー」は、吉田が刑死する直前、江戸の座敷牢で遺書として書き上げた「留魂録」に収められている。首相が引用した一説には続きがあり、「自(おのずか)ら禾稼(かか)の有年に恥じざるなり」とある。まいた種が実り続ければ、収穫があった年にも恥じない成果になるーとの意味だ。
松陰は留魂録で、10歳でも100歳でも、それぞれの人生には春に種をまいて夏に苗を植え、秋に刈り取って冬に蔵に収めるというそれぞれの四季があると指摘。どの人生も短いということはないと説く。自らは30歳で生涯を閉じることになり、ちょうど穂を出したときで、その実が中身のない籾か栗はわからないが、実を受け継ぐ後進があらわれれば、再び実りにつながっていくと語り、後進に期待を込めている。
昭恵さんは令和4年7月、東京・増上寺で行った安倍氏の葬儀で、参列者へのあいさつでこの一節に触れた。参列者によると、昭恵さんは「主人も政治家としてやり残したことはたくさんあったと思うが、本人なりの春夏秋冬を過ごして、最後の冬を迎えた。種をいっぱいまいているので、それが芽吹くことでしょう」と語った。