ケネディ暗殺事件への消せぬ思い「俺は動かなかった。すぐにかばうべきだった。まさかと思ってた」

2022-07-13 | 社会

中日春秋
2022年7月13日
 映画『ザ・シークレット・サービス』(一九九三年)は、クリント・イーストウッドさんが主人公の米大統領警護官を演じた
▼暗殺を予告する犯人から、選挙運動中の現職大統領を守る物語だが、主人公には、かつて大統領だったケネディを凶弾から守れなかった過去があるという設定。警護しながら、最初の銃声を聞いた後に盾にならなかったと引きずる。妻子が去り、酒におぼれ、それをマスコミに書かれたこともある
▼犯人は主人公への電話でその過去に触れ、挑発した。「一発目でかばっていれば、きっと二発目は防げた。そうすれば、おまえの頭が撃ち抜かれただろう。やはり自分の命が大切だったか」
▼奈良で演説中の安倍晋三元首相が銃撃された事件で、警護のあり方が批判されている。一発目の凶弾から二発目まで約三秒あった。この間、周囲の警察官は身を挺(てい)して守ろうとしなかったという
▼現場にいた警官は今、何を思っているだろう。結果が重大で警察全体の威信が揺らぐ。警察庁は問題点を洗い出すチームをつくった
▼映画の終盤、主人公の警護官はケネディ暗殺事件への消せぬ思いを同僚に明かす。「俺は動かなかった。すぐにかばうべきだった。まさかと思ってた」。きっと有事はないと心のどこかで思い込み、反応が鈍ったのか。「まさか」を繰り返さぬためには、己の隙のありかを見いだすほかない。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です


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