「カネ」と「情報」で民主党も自民党も操る霞ヶ関最強官庁財務省の常識が露呈した「ニコ生」高橋洋一

2012-08-13 | 政治

「カネ」と「情報」で民主党も自民党も操る「霞ヶ関最強官庁」財務省の「常識」が露呈した「ニコ生」
現代ビジネス「ニュースの深層」2012年08月13日(月)高橋 洋一
 「カネ」とはいうまでもなく予算編成権を握っていること。実際、財務省の課長は他省の局長を平気で呼びつける。課長が受ける接待も、よその局長並み。ランクが一段、二段違っていて当たり前なのである。
 「情報」とは、官邸その他に多数の出向者がいて情報網が凄いこと。歴代の総理は、財務省の情報網を皆ほしがっていた。この情報網のうちもっとも協力なのが国税だ。本来外局として独立的な存在である国税庁幹部はほぼ全員財務省キャリアである。このため、国税庁採用キャリアは幹部への昇格できない。
 また、地方の国税局、例えば東京国税局調査査察部長は財務省キャリアの指定席となっている。そのポストをやった後は、官邸などで政治家に近いポストに付くのが慣例になっている。部長として人事を行っているので庁査察部員が部下だったわけで、政治家にとっては「怖い」存在だろう。鳩山政権で、母親からの贈与が問題となった後に鳩山氏の力が急速に失われたのは課税上の問題で財務省に弱みを握られたという噂がある。政治家やマスコミに限らず誰もがおそれる部署だ。
 そして管理職が暇なことは案外見落とされるポイントだ。予算編成期は忙しいと思い込むが実は暇なのである。もともとシーリングで予算はだいたい決まる。そこで有能な主査なら9月か10月には相手省庁と握れる。後はいかに財務省が相手省庁と喧々諤々の議論をしているかのように振る舞う。管理職は、部下のその様子を見ていて、適当なタイミングで政治的な根回しやマスコミ対応するだけだ。
 財務省はしばしば軍隊組織に喩えられるが、管理職は後方で戦火に会わない将校のようなものだ。その有り余った時間を使って、政治家やマスコミへの縦断爆撃を行う。
 マスコミの論説委員クラスはほとんどが財務省の「ポチ」である。かつ、財務省は論説クラスが解説に困らないようにかれらの指南役になっている。
 一般の人の前に財務省職員はほとんどでないので実態がわからないだろう。
■財務省職員の「常識」
 先週8日、五十嵐文彦財務副大臣と小黒一正氏と私と長谷川幸洋さんで対談する予定だった。ところが、五十嵐副大臣はドタキャンであった。ただし、誰も来なくてもニコ生はやろうと思っていたところ、小黒一正氏が来た。彼の肩書きは一橋大准教授であるが、財務省職員で出向中である。
「諸般の事情」だという。ドタキャンは午後3時ごろだが、9時からの討論に参加することは可能だったはずだ。そのころには翌日の内閣不信任案のセットや自公の動きはわかっていた。いずれにしても、財務省職員の小黒氏がマスコミに出たのは貴重であろう。まあ平均的な財務省思考の持ち主だ。
 消費税増税が景気に与える影響はたいしたことないと思っていること、増税(=税率の引き上げ)が財政再建になると思い込んでいること、本当に財政破綻が(10年以内に)くると信じていることは、財務省職員の「常識」のようだ。財務省がこれらについてマスコミを洗脳しているネタ元であることは言うまでもない。なお、これに対する私の反論は本コラムの読者なら周知であるが、関心のある人は過去のコラムかニコ生のアーカイブを見ていただきたい。
 増税の前にやるべきことは多いが、例えば、財務省の情報網を壊しその生命線を脅かしかねない歳入庁の創設や天下り法人の整理にかなり抵抗しているのがわかる。さらに、デフレ脱却のために金融政策の使い方も知らないのもよくわかるだろう。
 さらに、小黒氏はまだ若いので知らないのだが、今の財務省幹部は、財政再建なんてハナから考えておらず、バラマキたいから増税しよう程度の感覚だろう。これは、消費税増税の方向になるとすぐに整備新幹線や今週の大型補正の話がでたことからわかる(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32905)。
■「その話は絶対に漏らすな」と激怒した財務省幹部
 また、今の財務省幹部の一人が公共担当主計官時代、私は公共投資が簡単にカットできる方法を予算編成期に伝えたことがある。それは、たまたま私が交通需要推計の推計式に誤りを見つけて、それを正しいモノに修正すると、過大になっていた公共投資が数%カットできるものだった。ところが、その主計官はもう相手の国交省と握っているので、その話は絶対にその漏らすなと激怒した。
 その態度があまりに国民に背いていたので、私は匿名で週刊誌に投稿した(2002.9.24週刊エコノミスト「暴かれた「交通需要推計」のまやかし」と2002.10.29週刊エコノミスト「交通需要カサ上げ 国交省の数字操作が判明」)。このあたりから、官僚主導の馴れ合いでない本物の改革が必要だと痛感し、小泉内閣を裏から支えていこうと思ったものだ。
 財務省は消費税増税がここまで成就すると、残る仕事は省内人事異動だ。実はこの人事異動は、役人にとってはうれしい。財務省は特に喜んでいるだろう。すでに、勝栄二郎財務事務次官が勇退し、真砂靖主計局長が昇格するという新聞辞令もでている。
 財務省の人事はほぼ一斉に整然として行われる。これは財務省の情報網の維持、特に国税庁人事に関係している。国税庁人事は7月上旬に行われる。国税庁職員5.6万人が人事異動するが、その時に財務省キャリアは国税庁、地方の国税局の主要ポストを押さえる。その少し前に主計局関係の人事異動が行われる、財務省の生命線であるカネと情報の支配は人事で行われている。
 この毎年一斉の人事異動には副産物もある、特に、今回のような省の悲願ともいえる消費税増税を成し遂げた後は重要なことだ。つまり、人事異動すると担当者が代わるので、これまでの悪行が省内的には一応ご破算になるというわけだ。消費税増税を聞いても、当時の担当者は「今担当でないのでノーコメント」、新担当者は「その当時担当でなかったので」と責任をとらないような対応だ。別の観点からみれば、人事が免罪符となっている。
 今回の消費税増税は、こうした財務省主導だ。民主党が脱官僚といって政権交代したのに、その真逆でマニフェスト破りをして、官僚主導まっしぐらで、自民もそれに手を貸したといえる。
■再稼働なしでも4%程度の余裕で足りていた
 (付記)7月23日付け本コラム「なぜ関西電力は大飯再稼働後に今夏の電力需給見通しを「改訂」したのか」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33065
 12日までの結果論として言えば、大飯原発3、4号機の再稼働なしでも、4%程度の余裕で電力は足りていた。8月末までにどうなるのだろうか。
 こうした結果論は、過去の再稼働決定をグダグダいうのではなく将来をどうするかを考える際の参考にすべきものだ。今年のような省エネ努力ができるなら、原発再稼働なしで何とかするのは絶対にできないというものではないだろう。中部電力や中国電力からの電力融通という即戦力もあるし、関電も和歌山火力発電所(370万kW)の建設再開などの本格的な供給対策に動いているようだ。
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財務省の天皇 勝栄二郎事務次官が退任へ 2012-08-12 | 政治 


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