時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

あきない世傳金と銀13~大海篇~

2022-08-26 | 読書
宝暦元年に
浅草田原町に江戸店を開いた五鈴屋は
仲間の尽力を得て
一度は断たれた呉服商いに復帰
身分の高い武家を顧客に持つことで
豪奢な絹織も扱うようになっていた
だが
もとは手頃な品々で
人気を博しただけに
次第に葛藤が生まれていく
吉原での衣裳競べ
新店開業
まさかの裏切りや災禍を乗り越え
店主の幸や奉公人たちは
「衣裳とは何か」
「商いとは何か」
五鈴屋なりの答えを見出していく
時代は宝暦から明和へ
「買うての幸い、売っての幸せ」を掲げ
商いの大海へと漕ぎ進む五鈴屋の物語
いよいよ
ここに完結



遂に完結でございましよ!
今回も
衣装を競う
よしわら華いくさ
勧進大相撲に併せた
菊栄さん考案の❛笄❜初売り
そして
幸と菊栄による
呉服町の白粉屋末広屋の
居抜き購入からの~
新店舗開店
色々ございました

菊栄は
五鈴屋の一角に間借りして開いた
小間物屋・紅屋を
有言実行
初代店主として
店舗独立に成功
幸も
五鈴屋江戸本店では
手頃な呉服と太物を
店前現銀売り行い
呉服町支店では
選りすぐりの呉服を
屋敷売りする
客層にあわせた
新たな商売展開に
新たな活路を見出しました
何より
末広屋を二つに分け
隣同士で商いを始められるのは
もの凄く心強い
そして
相乗効果が半端ない!
最強のコンビです
と思ったら
音羽屋忠兵衛…

客を客と思わない
私利私欲を走り続けているので
着実に
信用・信頼
評判
落としているようですが
そうなると
必要上に
五鈴屋を陥れようを
仕掛けてきそうで
読みながら
常に不安が付きまとっていました
特に
吉原で行われた
衣装競べでは
両替商井筒屋三代目店主・保晴こと
五鈴屋五代目徳兵衛が
音羽屋忠兵衛と
和やかに
つるんでいる場面もあり
なお
不安が増して…
案の定
五鈴屋呉服町支店と
菊栄が
立ち退きの憂き目に
しかも
そのカラクリの黒幕が
保晴!?
義理の姉に
元嫁相手に
なんつ~ことを…
そして
田原町界隈に大火…



幸は負けない!
そして
7年ぶりに登場したのは
歌舞伎役者
中村富五郎
11年前の借りを返すと
王子茶の縮緬と木綿の反物に
20両
疫病に大火、飢饉等々
禍が起これば歌舞伎や芝居は真っ先に切り捨てられてしまう
我ら役者はそのことが骨身に染みています
だからこそ
何としても立ち直り
観客に足を運んでもらえるよう工夫するのです
五鈴屋さんの商いも
同じではありますまいか

       (第十一章『 一意攻苦』289頁7行目以降)
富五郎の言葉に
五鈴屋だけでなく
浅草呉服問屋仲間だけでもない
田原町全体のために
新たな試みに挑む幸
その思いに賛同し
幸と共に
田原町での新店舗開店に
奔走する菊栄

火事から数ヶ月後
音羽屋忠兵衛が
謀書謀判(ぼうしょぼうはん) … 文書や印章の偽造のこと
の罪で捕らえられやした      謀書・謀判は重大な犯罪とされ、律令時代では遠流と定められた
獄門か死罪確定           鎌倉幕府の『御成敗式目』は所領没収の罰を定めた
と思いきや             江戸幕府の『御定書百個条((公事方御定書)) 』は死刑(引廻のうえ獄門) の罰を定めている
謀書謀判をしでかしたのが
音羽屋忠兵衛の手代らしく
その本人はとんずらしており
音羽屋忠兵衛を主犯として認定できず
かかわりがあったとして
重追放闕所(けっしょ)
結は
罪には問われませんが
嫁入り時に
五鈴屋から盗んだ
❛十二支の文字ちらしの型紙❜1枚以外
すべて没収
身元引受人として
実の姉である幸が
一応迎えに行きますが
五鈴屋を頼るつもりはありあせん
私は音羽屋忠兵衛の女房です
一緒に江戸を去り
行きついた先で
必ず立ち直ってみせます
こないなことでまけしまへんよって
 … (第十二章『分袂歌』338頁5行目以降一部抜粋)

音羽屋忠兵衛と共に
姿を消しました 
って
あたりまえじゃ~ボケ!
頼れるわけないやろ

真っ当な商売できない輩が
再起できるわけがない
どこぞで
野垂れ死ぬことでしょう

そうそう
音羽屋の
謀書謀判事件は
密告により発覚したらしいのですが
この密告者
両替商井筒屋三代目店主・保晴こと
五鈴屋五代目徳兵衛です
呉服町の居抜き物件
立ち退き騒動も
実は
五鈴屋と菊栄が
謀書謀判事件に巻き込まれないよう
事前に手を打った
と言えないこともない
このあたりの詳細は
「あきない世傳金と銀12~大海篇~ 第十二章『分袂歌』」331頁4行目以降
一読ください


孫六織に端を発した
紋羽織(はもんおり)を仕入れる
道筋もつきそうな気配
この先も
色々試練はあるでしょうが
買うての幸い、売っての幸せをもっとうに
まい進していく
幸なのでありました


最後の最後
タイトルでもある
金と銀
真の意味?が
明らかになります
これがまた
そ~ゆ~ことだったのね
と感心するやら
感動するやら
泣けるやら
第十三章『金と銀』350頁16行目以降
読んで欲しい


摂津の津門村に学者の子として生を受け幸の
波乱万丈人生まだ続きます
ですが
物語として語られるのは
ここまでです
この先の展開
まだまだ知りたい
読みたい気持ちはあるけれど…

とても素敵な
余韻を残しての結びでした