時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

鱈々(だらだら)

2016-10-21 | 舞台/役者
ジャーン(藤原竜也)と
キーム(山本裕典)
二人の男は
長い間
倉庫で働き
倉庫の中で
共に暮らしてきた

彼らの仕事は
ナンバーが印字された箱を
指示通りに
積み上げ
保管するだけの
単調な毎日

箱の中身は
知らない

ジャーンは
与えられた仕事を
完全にこなすことが
自分が
価値ある存在だと
確認できる唯一の方法と信じ
ひたすら
仕事に励む

一方
キームは
単調な生活に
嫌気がさし
適当に働き
夜は
外で酒を飲み
女と遊ぶ

ジャーンは
キームを
家族のように想って
世話を焼くが
キームは
それが気に入らない

そんなある日
キームの遊び相手
ミス・ダーリン(中村ゆり)
更に
トラック運転手(木場勝己)である
ダーリンの父が
倉庫に現れ
二人の日常に
変化が訪れる

二人は
倉庫での暮らしを
このまま
続けることができるのか



見終わった直後は
何を言いたいのか
何を表現したかったのか
全然わかりませんでした
ですが
これって
元々
隣りの国の作品なわけで
それを
年頭に置いて考えると
見えてくるモノが…

因みに
隣りの
見知らぬおっさんは
最初から最後まで
公演時間ず~っと
爆睡してました


何故
ジャーンとキームが
倉庫で
寝起きしながら
運ばれてくる
箱の出し入れを
生業にしているのか
倉庫外の世界が
どうなっているのか
全くわかりません
倉庫はいくつもあり
一様に
ふたりのような
暮らしをしているようです
飲み屋もあるので
外界と完全に隔離された
世界ではないらしいけれど
取り敢えず
ふたりは
とても
閉鎖的な環境の中
おのおの
アイデンティティー
(自分の生きるよすがと言うか存在価値)を見い出して
取りあえず
平穏に暮らしていた

ところが
二局の存在価値で
均衡を保ちながら
暮らしていたところに
ミス・ダーリンと
彼女の父親にして
トラック運転手と言う
新たな(異なる)
アイデンティティーが介入したことで
ジャーンとキーム関係に
波紋(=不協和音)が発生し
あっけなく
均衡が崩壊してしまう

厳密に言えば
アイデンティティーなんてものは
唯一無二であって
互いに
相容れるなんて
容易ではない
そこに
価値観の相違云々
持ちこまれちゃったら
これはも~
完全にアウトです



均衡の崩壊
その原因は何なのか!?

何が正解で
何が不正解だったのか
何で
こんな風になってしまったのか
誰の行動がが正しくて
誰の行動が間違っていたのか
誰が
こんな風にしてしまったのか

気付いてしまいました!
全ての事柄は
正しくもあり不正解でもある
全員の行動は
正しくもあり間違ってもいる
明確な答えが無いんです

昔は箱をみれば
その中に
何が入っているのかわかった
でも
今は番号がふられているだで
何が入って
いるかわからない

なら
開けてみればいい

この部品は!?

何かの部品かも!?

一度に
沢山の人間を殺せる爆弾!?

開けなければよかった

こんなの
閉めちゃえばいいだけよ
誰にも分らない


キームが
故意に
指示された以外の箱を
荷に紛れ込ませた事を知った
ジャーンが
正直に箱の持ち主に
知らせようと
手紙を書くも

届く訳がない

そんな事をしても
意味がない

誰も困らない


etc.

何気ない
この会話が
実は重い
そして怖い



四人の中で
唯一
異なる存在や価値観を
受け入れていた
受け入れようと
努力していたのは
ジャーンだけでした
ミスを指摘に
正そうとしたのも
彼だけでした

しかし
不平・不満・責任回避
現実逃避・未知数の希望
行き当たりばったりの
現状打破
様々な感情・行動が
波紋となり広がっていく中
これまでの
平穏が荒らされ
あっけなく壊される

ダーリンは
ドサクサに紛れて
ジャーンの所持品も
持ち去っていく

キームが去っても
ジャーンは
独り残って
アイデンティティーを
淡々と
守っていくのです
淡々と
生きていくのです
はたしてそこに
救いはあるのでしょうか

無いと思う
救い…

閉鎖された倉庫を
換えてみましょう!
四人の登場人物を
気質や行動パターンも含め
置き換えてみましょう!
そうすると
『鱈々(だらだら)』の世界観が
まるで違ったモノに
見えてきゃう

或る意味
痛烈な社会風刺的
作品なのかも
と思えてくる


キームが去り際
残していった
干物と化した鱈(たら)の頭部
それは
考える力はあっても
実行に移す身体(力)はない
ジャーン
そのひとそのモノ!?
頭と体が
バラバラなんですね~
想像してみて下さい
置き換えてみて下さい
リアルですね~
こわいですね~
嫌ですね~

タイトルの
鱈々(だらだら)って
深~い意味が
あったんですね~

   
        

藤原竜也って人は
映画俳優でもない
ましてや
テレビ俳優でもない
根っからの
舞台役者ですわぁ~
舞台に立っている時が
一番
しっくりします

山本裕典
タンクップから
時折
垣間見える
大円筋が
まぁ~よく動くこと!
上腕二頭筋と三頭筋が
美しかったです


木場勝己
花札を袖から
何枚も出してくる
隠し芸(マジック)
小さな演出
楽しませて貰いました


中村ゆり
角度によって
綾瀬はるかに
似てました!
声質も似てたかなぁ~