「はじまりのみち」 原恵一監督 ○ ☆☆
「木下恵介生誕100年記念」映画です。戦争末期に病身の母親(田中裕子)をリヤカーに乗せて疎開させた時のことを描いています。木下(加瀬亮)は公開された「陸軍」が軍情報局から「女々しい」と非難され、「もう監督を辞めよう」と故郷の浜松へ帰りました。しかし、空襲は激しくなり、より山奥へと疎開することにしました。母親をリヤカーに乗せ、兄(ユースケ サンタマリア)と荷物を運ぶ「便利屋」の青年(濱田岳)とで出発します。雨も降り峠越えは難儀しますが、なんとか無事到着することができました。そして母親から「夢をかなえなさい。」と励まされ、もういちど監督として歩み始めるのでした。
見どころは「便利屋」とのやりとりです。戦争が終わったら「カレーライスを食べたい」と、食べるしぐさをする濱田の演技は見事です。また、「便利屋」は木下が撮った作品とは知らず、「映画『陸軍』を見て泣いた。」と語る場面も泣かせます(☆)。「陸軍」のラストで母親役の田中絹代が出征の行進をする息子を追っていく姿が感動的でした(☆)。この場面を映すためにこの映画を作ったとでもいえるのではないでしょうか。
木下の作品の名場面がいくつも紹介されますが、「新・喜びも悲しみも幾年月」でやはり母親役の大原麗子が海上保安庁の職員となった息子に「戦争に行く船じゃなくてよかった。」というセリフがラストのセリフとなり木下の思いを伝えました。
タバコは本編上では無煙でした(○)。ただ、木下作品を紹介する中の「香華」という作品でキセルをブハーと吹かす場面がありました。