無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

「ラストマイル」

2024-09-03 | 2024映画評


「ラストマイル」 塚原あゆ子監督 ☆ ✗✗ PP加熱式タバコ

 テレビドラマ「アンナチュラル」と「MIU404」の監督と脚本野木亜紀子が連続爆破事件を描きました。
 流通業界最大の世界イベントである11月のブラックフライデーを前にアメリカの大手ショッピングサイトの関東エリアセンター長に就任した舟渡エレナ(満島ひかり)は当センターから配送された荷物が爆発するという事件に巻き込まれます。マネージャーの梨本孔(岡田将生)とともにどうやって荷物に爆弾をいれることができたのかを推測、その間に再び事件は起きます。センター長は安全な発送を続けるため警察の力を利用し出荷荷物をすべて検査します。それでも事件は終わりません。犯人の目的は一体どこにあるのでしょう?

 犯人逮捕に力を尽くす警察官、緊急用の医療用具が届かず右往左往する医療現場などに綾野剛、窪田正孝、石原さとみ、井浦新、大倉孝二など贅沢な配役ができたのは元になるドラマがあったのですね。なかなか面白い演出です。
 冒頭の安い単価で配送業務を担当する労働者の昼食もゆっくり食べられない勤務実態、大手から「できないなら他に回す」と買い叩かれる業者の苦悩、実は大手の社員こそが搾取されている現実がドラマの中に組み込まれ社会性も高く大変おもしろい作品でした。
 個人的には宇野祥平の冒頭での退職をした話がクライマックスにつながる展開が感動的でした。(ちょっとネタバレ、ごめんなさいね)宇野くんならではの役どころでした。(拍手)
 
 タバコは、ラストマイルの配送を担当する個人請負業者役の火野正平(1949年生)が車内で窓を開けて喫煙すると同乗の息子役宇野祥平が「寒いから窓閉めてよ。」というと「タバコのニオイが荷物に付くんだよ。」と答えます。段ボールは匂いを吸収するのでタバコは当然ながら車内芳香剤、配達員作業着の柔軟剤などの匂いも受け取る側としては大変不愉快です。ちなみに窓を開けるくらいでは匂いの付着を予防できません。
 宅配業者の支店長役阿部サダヲが加熱式たばこを吸います。そばにいた満島ひかりが煙を避けて移動する姿がありました。


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「かくしごと」

2024-08-19 | 2024映画評


「かくしごと」 関根光才監督 ◯ 

 北國浩二の小説「嘘」が原作です。
 絵本作家の里谷千紗子(杏)は長いこと絶縁状態だった父親(奥田瑛二)が認知症の症状が出てきたため久しぶりに長野の実家に帰ってきました。友人の久江(佐津川愛美)と居酒屋で会います。その帰り、ふとした事故で気を失った少年(中須翔真)を救います。そして千紗子はその訳アリの少年と暮らし始めるのでした。

 訳あり同士の二人が新しい家族となりお互いに大切に思うことはありえますが、しかしなんの罪にも問われないのかちょっと疑問です。ネタバレかな、すいません。内容に踏み込むとどうしてもネタバレになってしまう展開なので物語についてはこれ以上はやめておきます。
 認知症役の奥田瑛二がお見事でした。また、幼馴染で担当の医師(酒向芳)が認知症の人がとる不可解な行動について説明してくれ勉強になりました。
 ただ、電話でのやり取りのセリフが聞き取りにくかったのが大変残念です。(録音 西條博介)特に電話の相手の言葉がほとんど聞き取れず、結構大切な情報が話されているのにすんなり耳に届かないのでイライラしました。音を大きくできないならその部分だけでも字幕を出すなどの工夫をしてほしいです。なんどか同じような要望を書いていますが、実写映画の動員はシニア層無しには成り立たないと思います。シニアに優しい映画はすべての人に優しい映画になるのではないでしょうか。

 タバコは、なし。無煙でした。


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「ハロルド・フライのまさかの旅立ち」

2024-07-29 | 2024映画評


「ハロルド・フライのまさかの旅立ち」 ヘティ マクドナルド監督 英✗

 イギリスのレイチェル・ジョイスの小説「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅」が原作です。
 退職後妻モーリーン(ペネローペ ウィルトン)と平穏に暮らすハロルド(ジム ブロードベント)の元に昔の同僚の女性から「今ホスピスにいる」という手紙が届きます。早速返事を書きポストに出かけたハロルドでしたが迷いに迷いとうとうホスピスまで歩いて出かけることにします。特別な準備もなく普通の靴でなんと800キロを歩こうとするのですが・・・。
 さまざまな人(一言で表現するにはしきれないさまざまな人です)に助けられたり励まされたりしながら歩くハロルドはある目的がありますが、置いていかれた妻は「なんで?」という疑問と苛立ちが襲います。
 歩く人も待つ人にもそれぞれの人生を省みるまさに巡礼の旅となるのでした。

 日本ではお遍路さんが有名ですが、「歩く」という行為が頭の中の記憶や感情を思い出させるのでしょうか。演じる俳優たちが微妙な心の変化を巧みに表現していました。
 撮影(ケイト マッカラ)の光の捉え方が大変素晴らしく人生同様さまざまな光を映し出し「光の映画」とも言えます。小説では味わえない映画ならではの楽しみです。

 タバコは、優秀だった息子が酒やクスリに溺れるようになりタバコも吸っていました。


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「密輸 1970」

2024-07-22 | 2024映画評


「密輸 1970」 リュ スンワン監督 韓国 ✗✗✗✗

 1970年半ばの韓国の漁村クンチョンが舞台です。
 ジンスク(ヨム ジョンア)をリーダーに海女たちはアワビなどの潜水漁を営んでいました。しかし近くにできた化学工場の排水が原因でせっかくとった貝がほとんど死んでいて収入がなくなってしまいました。そこへ海底に投げ込まれた密輸品を拾い上げるヤバい仕事をすることになります。一時は大儲けしますが、税関に摘発されてしまいます。うまく逃げたチュンジャ(キム ヘス)は2年後密輸王とともにクンチョンに戻って来るのですが・・・。

 1970年代日本の品物が密輸の対象という今では考えられない社会情勢や70年代風ファッションが興味深い作品です。ワイロで動く税関や警察にはお灸をすえたいですね。70年代とはいえタバコを吸いすぎです。女も男も事ある毎にタバコに火を付ける場面が強調されていました。
 また、化学工場の公害が取り上げられているのにタバコについてはサラリと流してしまったのは大変残念です。日本の水俣のような運動にはならなかったのでしょうか?興味のある問題です。

 タバコは、前述の通り多くの出演者が能動喫煙の被害、今の言葉ですとスモークハラスメントをほとんどの場面で受けていました。俳優を傷つけない作品にしてほしいものです。


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「ディア・ファミリー」

2024-07-07 | 2024映画評


「ディア・ファミリー」 月川翔監督 ✗✗

 心臓疾患を改善する日本人の体系に合ったバルーンカテーテルの誕生に貢献した実在する父親の姿を描きました。
 プラスティック製品を製造する会社の坪井(大泉洋)は娘の佳美(福本莉子)が心臓疾患で余命10年と宣告されます。担当医はそばにいてあげてください、と言いますが、妻陽子(菅野美穂)は「何もしない10年と何かを作り出す10年とどっちがいい?」と二人で人工心臓を作るために動き始めます。学閥の弊害や閉鎖的な医療業界が行く手を塞ぎますが、諦めかけた二人を佳美が励ますのでした。

 壁にぶつかるたびに「次はどうする?」と次の手を考え出す家族の姿に対し、学内の派閥というしがらみに縛られ才能を潰していく医学部関係者の姿は「白い巨塔」以来変わっていないようです。同じようなことが他の研究でもなされているとすれば残念です。常には居丈高で素人を蔑んでいながら状況が変わるとおもねってくるいやな教授役を光石研が好演しました。
 なお、この作品は大手シネコンで「日本語字幕付き」という回を選んでみました。セリフが聞き取れないというイライラが皆無となり、作品に集中できました。こういうサービスをもっと増やしてほしいものです。

 タバコは、時代考証の一つとして新幹線内で喫煙させることで70年代を表していましたが、時代のシンボルは俳優の健康を犠牲にするタバコではなく、東京新聞日曜版で連載している初見健一の「これなんだっけ」で紹介しているようなグッズを利用してほしいものです。
 その他の生活家電やファッション、車などの時代考証はたいへん練られていて「あの冷蔵庫実家にあったな。」など懐かしかったです。でもタバコは「嫌な時代だったな。」と悪い印象しかありません。


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「九十歳。何がめでたい」

2024-07-06 | 2024映画評


「九十歳。何がめでたい」 前田哲監督 △

 作家佐藤愛子のベストセラーエッセイ「九十歳。何がめでたい」を実際に九十歳になった名優草笛光子の記念映画としました。
 断筆宣言をして3年になる愛子(草笛光子)を、職場では「化石」と陰で言われている編集者吉川(唐沢寿明)が連載エッセイの交渉に訪れます。交渉は難航しますが、なんとか書いてもらえることになります。しかし、吉川のプライベートでは娘と妻が家を出て離婚届が送られてくるのでした。
 
 仕事に追われることで生活そのものが充実し、ますます元気になる愛子を草笛が名演技で演じています。一方「昭和の化石」吉川を演ずる唐沢もセクハラ、パワハラ親父と改心していこうとする実直な編集者を演じ二人のコラボが大変おもしろかったです。贅沢なカメオ出演者が全体を盛り上げています。ラストもさすが女性脚本家(脚本大島里美)、男性だとこうはならない、(これって差別かな?)そしてまた、犬の「ハチ」のパルムドッグ賞なみの名演が映画に色を加えています。また、音楽がうるさすぎず効果的でした。
 高齢の女性だけでなく男性にこそ見てほしい作品です。
 ただ、一つだけ要望をさせていただくと、愛子が新聞をめくるときに指を舐める癖がありました。あのシーンでは娘か孫が「指舐めるのやめたほうがいいよ。」と一言はいると教育的効果が上がりました。コロナでずいぶん気をつけるようになっていますが未だに図書館の新聞や本を指なめでめくる人いるので、さりげなく気づかせてほしかったです。

 タバコは、大変残念なことに愛子が通う美容院の担当者(LiLiCo)が外の喫煙所でタバコを持つシーンがありました。タバコ臭い美容師って恐怖でしかありません。でも、煙は映っていなかったので△です。


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「瞼の転校生」

2024-07-03 | 2024映画評


「瞼の転校生」 藤田直哉監督 ◯ ☆

 大衆演劇の一座に所属する中学生とたった一ヶ月心を通わせたクラスメイトたちの姿を描きました。川口市の市制90周年記念の作品です。
 
 中学生の裕貴(松藤史恩)は旅回りの演劇一座に所属しているので、いつも劇団員とともに1ヶ月毎に各地を移動しています。学校に行っても友達を作る気も勉強する気もありません。しかし、たまたま空気を読めない担任に「帰り道だから」と稽古のため早退する裕貴に不登校の健(齋藤潤)の家へ届け物を頼まれます。それがきっかけとなり裕貴と健、それに健の元カノ(葉山さら)も加わりお互いにお互いから刺激され成長していくのでした。

 大衆演劇という題材が新鮮でした。冒頭の役者たちが全員で小屋に搬入する場面や化粧したり稽古をしたりする姿に引き込まれました。裕貴が自分の環境に誇りを持っていることも好感が持てました。女形も嫌味がなく演じていました。ちょっと奇妙なタイトルの意味がラストになって判明し納得、二人の演技にウルウルさせられました。
 全く期待せず見た映画が拾い物だと感動も倍増ですね。上映館のあまや座に感謝です。
 ところで、川口市といえば「キューポラのある街」の舞台でしたね。食事をしたお店にあの映画のポスターがあったら往年のサユリストが喜んだことでしょう。惜しかった、、、煙突は映っていましたが。

 タバコは、なし。無煙です。爽やかさ倍増!


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「東京カウボーイ」

2024-06-19 | 2024映画評


「東京カウボーイ」 マーク マリオット監督 米 ◯

 やり手のブランドマネージャーが仕事でモンタナ州の牧場へ出かけ、価値観が異なる「カウボーイ」たちの中で自分を取り戻す物語です。
 職場の上司であり婚約者でもあるケイコ(藤谷文子)が渋る案件、経営不振のアメリカの牧場を和牛で収益増を狙う、というヒデキ(井浦新)は和牛のプロ和田(國村隼)をアドバイザーに迎えスーツにブリーフケースで現地に乗り込みます。しかし、初日からアクシデントが続きヒデキは単身で交渉に臨みます。いつものようにパワポでプレゼンを行いますが、牧場のスタッフたちは関心を示さないのでした。それでも牧場主のベグ(ケビン ハイアート)はハビエル(ゴヤ ロブレス)に「案内してやんな。」と声をかけてくれるのでした。

 「カウボーイ」という独自の文化を受け入れていくヒデキの姿が健気です。そんなヒデキを受け入れていくカウボーイたちもみんないい奴です。
 ヒデキが特に心を打たれるハビエルの姪の誕生パーティで父親が「この子が生まれたときに植えたこの木がこんなにおおきくなって・・・。(たぶんそんなことをスピーチしていた)」とスペイン語で語る場面は翻訳字幕も出ないので観客もヒデキ同様言葉そのものはわからなくても何を言っているかよくわかりヒデキと同じように感動します。
 ただ、國村の関西弁のセリフが聞き取りにくかったのが残念です。

 タバコは、なし。無煙です。


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「あんのこと」

2024-06-18 | 2024映画評


「あんのこと」 PG12 入江悠監督 ✗✗✗

 入江監督が新聞記事から織りなした社会から阻害された少女の姿を描きました。
 杏(河合優実)は母親からの虐待と小学生の頃からの売春の強要という少女時代を過ごし今は覚醒剤なしには生きられません。出会った刑事多々羅(佐藤二朗)はそんな杏に対し救いの手を差し伸べます。一方、記者の桐野(稲垣吾郎)は多々羅の取り組みを付き添うように取材していました。
 杏は母親から離れシェルターで暮らしながら夜間中学に通い高齢者施設で仕事をするようになりますが、母親の魔の手が伸びてくるのでした。

 食べるための万引きの常習を理由に小学校4年で放りだしてしまった教育現場はどう対応したのか、小学生を買っている大人たちはなぜ裁かれないのか、という疑問が頭をよぎります。
 できれば、監督なりの救いを映画に表現してほしかったです。

 タバコは多々羅が度々喫煙し吸い殻をそこらにポイ捨てする姿がありました。杏を救う前に自分自身をなんとかしろよ、と思いました。


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「ありふれた教室」

2024-06-05 | 2024映画評


「ありふれた教室」 イルケル チャタク監督 独 ☓

 中学校1年生の教室でおきた出来事がきっかけで教室だけでなく教師自身も崩壊していく姿を描きました。
 新任教師のカーラ(レオニー ベネシュ)は盗難事件の犯人にクラスの子どもが疑われていることがきっかけとなり真相を糾明するため職員室の自身のテーブルに隠しカメラを仕掛けます。そこにはある行為が映っていました。犯人がわかるかと思いきや事態は予期せぬ方向へ向かいカメラを仕掛けたカーラ自身が追求されることになってしまいます。

 見どころは職員会議に生徒代表が参加したり、学校新聞を自主的に発行したりする民主的な教育現場です。もちろん制服などなく人種や宗教によってさまざまなファッションで登校しています。保護者も学校にすべてお任せというわけではなく、積極的に教育内容にも物申します。小規模な軍隊のような日本の教育現場とはちょっと違うようです。

 タバコは、二人の人が外で喫煙している姿が遠景で後ろ姿で映りました。タバコの宣伝効果は無いに等しいのですが教育の場で喫煙はアウトです。


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