軽井沢ル・ボン・ヴィボン

Noma閉店で思う事

あのNomaが2024年に閉店
その報せに驚く同業者も多いようです。

もちろん僕もその一人

シェフのレネ・レゼピ氏はニューヨーク・タイムズ紙に
「経済的にも感情的にも、そして雇用主としても人間としてもうまくいかない」
と語ったそうです。

規模やレベルは全然違うけど、一レストランの経営者として
この言葉が胸に響かないわけがありません。
極端な例として
ベルナール・ロワゾー氏やブノワ・ヴィオリエ氏の件も脳内を過るので

「やめてスッキリしたほうがいい」
僕はただただ、そう思います。

超有名店でスタージュ(研修みたいなもの)をすれば
正式に就職しなくても相応の箔が付きます。
箔さえ付けば、未来には驚くほどの収入に繋がるのですから
きっと希望者は多いでしょう。

そんな国籍も色々、思考もスキルもバラバラな人が次々と
大勢押しかけるのですから
会社としてはいちいち雇用契約を結ぶ(給料を払う)わけにはいかない。
就業(修行)をしたいのか、研修したいのかも曖昧な上に
(そもそも修行という概念は通用しない)
全てをルール通りに適用すれば
人件費は膨大となり、事務作業も大変なことになるでしょう。
飲食業は他業種に比べて顧客単価が低いので
それでは利益が出ません。

研修でも一応仕事を振れば、やった事にはなるし
働いたんだから給料をちゃんとよこせという人も当然出てくる。
それならむしろ学校的に授業料を取って教えた方がいいけど
レストランは学校ではない。
当然グレーゾーンが存在する。
インターンシップをどう位置付けるかにも類似していて
どの国の社会でも、そういう所は問題にされやすいのではないかと推察します。

素晴らしいレストランの料理をじっくり見てみてください。
本当に必要な要素以外に(お皿の内側にも外側にも)
多くの装飾が盛り込まれている事が分かります。
しかしそれこそがファインダイニングに求められる要素でもあり
価値を高めるポイントでもあります。
「無くても成立するけど、あればなお良い」
ここの部分が前述のグレーゾーンの労働力に支えられていると僕は考えます。

お店の(シェフの)評価は高まれば高まるほどプレッシャーにも苛まれます。
純粋に料理が好きなシェフにとって
突き抜けたレストランの行く先は
ラボやアカデミーなのではないでしょうか。

そのトップの位置に、いつかは別の誰かが入る。
エル・ブジがそうだったように
Nomaも伝説となり「次のNoma」は確実に出現するでしょう。

現にNomaやEl Bulli出身のシェフたちが
世界のあちこちで開業し、高い評価を得ています。
私もその中のいくつかのレストランに訪れた事があります。
「次のNoma」はその中にあるのか
また別のイノベーションが彗星のように現れるかもしれません。

未来は霧の中ですが
希望にも満ち溢れています。

やり切った者にしか見えない景色がある。
偉大な事を成し遂げたシェフには
心からの敬意を表したいと思います。


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