わたしは六百山

サイゴンでの365日を書き直す 

ナムチャム ベトナム便り 58

2006年04月26日 | できごと
こちらv-603.

今日、こちらへ来て買った安い中国製のズボン(パンツじゃない)の前のボタン(直径1.5cmぐらい)が取れっぱなしなのが、ちょっと気になっていたので、買いに行くことにした。
いったい、ボタンなんか、生まれてこのかた、買ったことがない。
いくらぐらいするのか、校長の若い奥さんに聞いてみたら、ボタンをつけたこともない、という。もちろんボタンをどこで売っているかも知らないという。
学校の前に店を出しているミンおばさんに聞いてみた。
それならベンタン市場で売っている。10個で500(ナムチャム)ドンぐらいだ、という。
取れたボタン(ボタンの穴と穴の間が、くくってあった糸の力で切れて、4つの穴がひとつになってしまった)を持ってでかけた。
この一個のボタンをもって、「これ、どこ?」「これ、どこ?」と聞きながら、1000軒もあろうかという市場の中を、ボタン屋求めてうろついた。
ようやくたどり着いた間口1mほどの店の奥(といっても奥も1mしかないが)にいたおっちゃんに、握り締めて汗でぬれたボタンをみせた。
おっちゃんは、手前のケースの中から、同じ大きさのボタンをだして、「***::::***]と言った。きっと、何個ほしいんだ、と聞いているのだろうと思って、指を一本立てて見せた。すると、おっちゃんは、「ハイムイゲン」と言った。
2000ドンだ。「ひえー、マックア、10こでナムチャムだ」と言ったら。
おっちゃんは、紙とボールペンを出して、2000と書いた。私が10=500と書いたら、「####」と声をあらげた。そして、別のボタンを出して、「ムイゲン」と言った。これなら1000ドンでいいぞ、と言っているのだ。
「ナムチャム、OK?」と聞いたら、「だめだ、一個しか買わねえくせに。」と言って、ボタンを引っ込めてしまった。
怒らせてしまったようだ。
冗談じゃない、こっちは、ちゃんと調べてあるんだ、一個50ドンだろ。おれは500ドンで買ってやろうっていうんだ。文句あるかい?
ベトナムは、市場でも街中でも、同じ商品を扱う店が何軒も並んでいるのが普通だ。隣の店も、ボタンを売っていた。ここへ行って(といっても1mずれただけだが)ボタンをみせた。
「ムイゲン」すぐに、隣のおっちゃんと同じ値段が返ってきた。
「ナムチャム」
「ノー」
仕方ない、次の店へ行った。強欲そうなおばちゃんが、ギョロリと目をむけて、やはり、半畳の押入れの上段のようなところから顔を出した。ボタンを見せると、同じサイズのボタンの箱を出して、
「カラー」と聞く。
「なんでもOK」と言うと、同じような色のボタンを一個とって、私の使えないボタンと一緒にビニールの小袋にいれて、ホチキスでカシャンと閉じてしまった。
「え、カイナイ、バイニュウティエン」いくらなの?まだ値段も聞いてないよ。
すると、おばちゃん、めんどくさそうに、「ムイゲン」と言う。やはり1000ドンだ。そこで、私はすがりつくように、あいそ笑いしながら「ナムチャム、ね、ね、ナムチャム」と頼み込んだ。すると、まあ、しゃあねえな、というように、怖い顔がうなずいた。

こうして、ようやく、一個のボタンを手に入れたのだ。
部屋へ帰ってきて、戦果を確かめつつ、ズボンにそのかがやかしいボタンをつけた。
へその上にあるボタンをみつめながら、『8円のボタンを4円にしてもらって、今日は、とてもいいことがあった』と、満足した。
でも、ミンおばさんに言わせると、10倍の値段で、私は買ったことになる。
でもしかし、1個のボタンがなけりゃ、ズボンがまともにはけないんだから、安い買物だといえるんじゃないの・・・。


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