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マリーアントワネットの髪

2023-05-21 14:11:24 | 日記

マリーアントワネットの髪

 わたしは本当にこの目で見た。もうずいぶん昔のことになるので忘れないうちに書き残したい。

 

高校生の頃世界史の授業で、アントワネットは処刑される前日一夜で髪の毛が真っ白になったという話を聞いた。そんなこと絶対あるもんか、一晩で生えてくる分 多分一ミリもないであろうがそこが白くなるならわかるが、先っぽの部分まで白くなれとの連絡が頭皮から行って一斉に白くなるなんてありえない。大方劇とか小説で劇的に書かれたものを受け売りしているだけだろう。いい加減な与太話を喋る教師であるなと考えていた。

 しかしその後、学園紛争というものが起こった。多分数十人は居たであろう生徒のグループが学校にバリケード作って授業は無しということになった。私は何が何やらわからないまま数週間を過ごすことになる。その間他の人々は起こっている事態を把握しているようだったので、私は自分が突然事態の把握のできない馬鹿になってしまったのかとひどく劣等感にさいなまれることになるのだが、それはアントワネットの髪とは関係がない。

 そのバリケードのはられた初日ある真面目で立派な先生が、封鎖している生徒と話し込んでいたのを見かけた。次の日、私はまあきっと今日も授業はないであろうがもしあったら困るからと出かけてみると、まさか一晩中話したわけでもあるまいが同じ場所で同じ先生が話し込んでいる。その先生の髪の毛はたった一晩で真っ白になっていた。アントワネットの髪の話は本当であることが心底理解できた。あの話は実際に起こりうることである。

 この立派な先生が、世界史の教師であれば身をもって授業でしゃべったことが事実であったことを示したということでますます立派ということになるが、遺憾ながら同一人物ではない。



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