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イジメ撲滅私案①

2023-07-22 22:28:58 | 日記

イジメ撲滅私案①

 なぜヒトはいじめをするのか不思議に思っている。集団としての力は大きく低下する、いじめをしている集団はしていない集団に勝てないであろう。だったらいじめる遺伝子の濃厚な集団の遺伝子は淘汰されていくはずなのにそうなっていないのはなぜか。

 平時の旧陸軍の中のいじめは深刻であって、新兵は早く戦争に行きたい戦場の方がましだと思ったという。海軍では多くの船舶が、戦場に行かずに謎の自沈を遂げたのはいじめられた兵士によるものだという説がある。旧ソ連の軍隊もいじめが横行し、ために戦わずして負けたという。そう言えば内戦が多少あっただけで東ヨーロッパ駐留軍は列車に乗って引き上げていくニュースが流れていた。さらにもうずいぶん昔、「フルメタルジャケット」という映画ではアメリカ軍のなかの深刻ないじめが描かれていた。(尤もこれを観てアメリカが弱くなったと思ってはならない。本当は強いのに弱い振りをするのは戦略の常道であってアメリカの軍人さんの中にも孫子のファンは一杯いるであろう。)

 いじめは学校や平時の軍隊のように目的があいまいでいろいろのヒトが集まってきた集団に見られる。またサービス業や芸能界のようにその場その場での上下関係が構築される職場で観察される。しかしそれが建築土木の様な危険な仕事になると一挙に見られなくなる。いじめは上下関係が固定永続的でなくかつさしたる危険が迫っているのでない状態で起こるところから、権力闘争の一種ではないかとみられる。(もちろん暇だから単なる娯楽気晴らしという側面ももちろんありそうで、これは悲惨である。)

 いじめとはその場での人間の上下関係の構築をしようとする行動である。

 古参兵の新兵いじめは、舐められてはいけないという意味での権力闘争と考えてもいいし気晴らしの面もありそうである。今でも新入社員に滝に打たれる業や座禅を課す会社があるのはそれがぎりぎり合法的に変形した名残であろう。また上司によるパワハラは典型的な権力闘争であろう。制度上上位であるが舐められてはいけない、上位であることを確認したいという思いの現れである。こんなことするのは本当は肝っ玉の小さいヒトである。しかしその肝の小さい人のためにどれだけ多くのヒトが心に傷を受けていることか。

 学校の生徒間は本来上下関係がないのであるが、上下関係を作ってその中に住んで安心したいのが人情である。甲乙二人が居て甲は乙を下だと思い、乙は甲を下だと思うかまたは乙は甲とは無縁である甲を無視するとしたときどうなるであろう。甲は乙が折れるまでいじめるであろう。

 制度上上位に居るものであっても下位にいるものからいじめを受けることはあるはずである。力を失いつつある社長が取締役にいじめられることは考えられる。これを避けようと社長が硬直的な組織運営をして会社がマルごと駄目になることは何度も起こったに相違ない。先の戦争のはじまりもいじめをうけていた上層部が硬直的な組織運営に走ったとみられる節がある。

 このようにいじめが各人の心のうちにある権力欲または嫉妬心に起源があるので、「いじめをやめましょう」という思想教育はほとんど効果がないはずである。本能が起源であるから抑えることができないはずである。あの孔子様も欲望は抑えてはいけない、コントロールせよとおっしゃっている。欲望をおさえるとますますやりたくなるのが人情じゃないのか。うまい権力欲の発揮の仕方ということを皆で議論すべきじゃないのか。

 

 昭和前半の日本政府は、永井荷風のある種の本の出版を許さなかった。「スケベーはいけません。」と思想教育しようとしたのである。これが成功したか?

 



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