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本の感想

本の感想など

色好みの構造(中村真一郎著 岩波新書1985年)

2023-10-09 21:57:14 | 日記

色好みの構造(中村真一郎著 岩波新書1985年)

 著者の該博な古典の知識に驚くが、なにより文章が明快で読んですらすら分かることに驚く。わたしは古典に興味があるのではなく「色好み」に大変興味があって古本屋で110円で購入した。目標とした「色好み」に関する知見が進んだわけではなく、あまり興味のなかった日本の古典に興味が湧いたわけでもないが文化や人間に関する理解が画期的に進んだ気がする。

この本で大きく取り上げられている源氏物語は昔高校の古典の教科書に少し載ってるところを読むだけでも大変であった。しかも中身があほらしい何の参考にもならぬ。(源氏物語は現代の週刊文春ちょっと前のフォーカスをはじめとする写真週刊誌みたいなもので)こんなもの辞書引きながら読むのは、人生時間の無駄使いと思っていた。教師というのは生徒に人生の無駄を強要してテンとして恥じぬような馬鹿者の集まりだとまあ今でも半分は思っている。しかしその経験がなければこの本は読んでも分からなかっただろうから古語辞典を引きながら読んだことも多少は役に立ったとすべきか。

 

いま、必要あってディジタル通貨の本(ポストコロナの米中覇権とディジタル人民元 遠藤誉 白井一成(実業之日本社) の白井さんの方のことですが)を読んでいるがこの著者は絶対読者の顔を思い浮かべて書いていない人である。読者を置き去りにして自分の知識を見せつけるように書く。これでは、ほとんどの読者は読むのを諦めざるを得ない。しかし、中村真一郎は違う。読者をわたしのように高校の時に源氏を部分的に教科書に採録されている部分を少しだけ読んだだけの知識ある者と想定し、かつスケベー心でこの本を手に取ったことをお見通しで読者の顔を想像しながら書いておられる。書きたいように書いているのではない、あんたはこう思ってるでしょうがすこし違う。という内容を事細かに分かりやすい言葉で書いていく。例えばこんな風に続いていく。(  )内は読者即ちわたくしの言葉である。

色好みは紳士のたしなみ教養である。(おおそれは良いこと聞いた、それなくしては人生詰まらんもんな。)

しかしシツコク付きまとうとかはいけない。(そのくらいのことなら心得るで。)

どんな人にも一応口説かねばならない。(ちょっと嫌やな、自分の好みもある。)

口説きの歌が芸術的でないといけない。(歌の勉強もいいけど、自分も貴族であるから国際情勢とかの勉強もしないといけないし、なにより同僚貴族との権力闘争が大変なのにそんなことばっかりしていていいのか。)

思うに、平和な時代であって平安貴族は国際情勢の勉強は不要で女性にモテるかどうかが同僚との差をつけるポイントであったとみられる。さらにモテるかどうかがミメウルワシイかどうかより歌が上手いかどうかに依っていたのではないかと考えられる。歌が上手いと宮廷の女性に認められると出世がはやいのではないか。歌が上手い、恋愛の手腕がいいのはコミュニケーション力が高いことであるから出世させてやろうじゃないかという暗黙の同意が宮廷内にあったのかもしれない。そう言えば、学生時代女性を口説くのが上手かったのは概して会社の中で出世が早いという傾向は見て取れる。(今は女性も出世する時代だから、学生時代異性を口説くのが・・・・・・・とすべきことですが)

歌が上手いかどうかを教養ある女性が判定していたとはそのころは実に平和でいい時代だった気がする。永田町でも歌が上手いかどうか、歌によって異性にもてるかどうかで大臣を選ぶにしてはどうか。今の選び方とたいして変わらないような気がする。