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羽田圭介さん『走ル』

2008-07-13 21:41:38 | 読書
高校在学中に『黒冷水』でデビューし、
文藝賞を受賞した羽田圭介さんの最新作『走ル』

本年度上半期の芥川賞にノミネートされている作品です。

物置の片隅でレース用の自転車「ビアンキ」を見つけた高校生・本田は
翌朝、彼王子から四ツ谷までそれに乗って部活に向かう。
練習終了後、コンビニまでジュースを買いに行ったはずの彼は、
そのまま自転車をこぎ続ける―

四ツ谷から秋葉原、越谷、渡良瀬遊水地―そして、宇都宮へ

公園で一夜を明かすことを決めた彼は、その夜、小学校の同級生・鈴木さんにメールを送信した。



主人公の本田は、実に愛すべき高校男子。

カップラーメンにベーコンと冷凍野菜を入れたのを食べれば
うまさとは油と糖分の組み合わせなのだと実感し

カレー3人前を30分で完食したことを、男の壮大な世界の話として彼女に語る

そんなのがレース用の自転車にまたがってしまうと

時計を見ると四時二〇分。東西に延びている街道を東に向かっているというのに、ビルや効果に邪魔され太陽を見ることはできない。もうどれくらい昇っているのだろうか。今日という一日は、いつ始まったのだろう。陽が昇るのがゆっくり過ぎて「今日」というくさびをいつ打ってよいのかわからない。

とか言ってしまいます。

さらに、ステイシー・オリコ似の美女・鈴木さんから
「すごーい!そんな遠くまで行っちゃうなんて、喘息だった昔の本田君からは考えられないね」
なんてメールが来ると、ますますテンションが上がり、月山がピレネー山脈に思え

僕は決してギヤを軽くすることはなく、代わりにスタンディングポジションをとった。世界最高峰の自転車レース、ツール・ド・フランスの覇者ランス・アームストロングも、ピレネー山脈で同じことをした。

となり、挙句の果てに横を通り過ぎる車が、チームのサポートカーに見えちゃいます

あぁ、若い…


古びた地図を見ながら
行く先々で新しい出会い―
名所旧跡、仏閣寺院を訪れこれまで気づかなかった何かに―

なんてことはなく

現在地はケータイのGPSで確認
東京の友人とメールをしつつ
充電がヤバクなったら、コンビニで充電器を購入

東京にいる恋人からのメールにうんざりし
盛岡に転校したステイシー・オリコ似(たぶん巨乳)の鈴木さんからのメールに胸をときめかせ
妄想パワー全快で、北を目指す

―当然、旅の終わり方も非常に彼らしい終わり方に。



全編通じて、自分の過去を見せられているかの気恥ずかしさと
妄想をパワーにできる「若さ」を感じ、
主人公が真剣になればなるほど、口元の笑みが止まらなくなる<若々しさ>(=「馬鹿ばかしさ」)てんこ盛りの作品

それでも、読み終わった後はすがすがしく
思わず、「若さばんざ~~~い」と万歳三唱したくなりました。

個人的には、かなり好きな作品
ぜひとも、ケータイサイトでの配信もしてほしいです



なお、ステイシー・オリコは↓の美女

うん、イスタンブールまででも自転車でいけそう


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2 コメント

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TBありがとう (亜衣)
2008-07-14 00:50:07
はじめまして。
ステイシー・オリコ、かっこいいですね。
頭に描いた鈴木さんに似てます

走る目的が、変に気負ってなくて良かったです。
この物語って、ウラを嗅いでいくと自分なりの物語が出来て楽しいですね。
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亜衣さんへ (juri-cari)
2008-07-14 22:17:03
コメントありがとうございました

私も亜衣さんのおっしゃるように、大きな目的がないことが、この作品の良さの一つだと思います

このブログに書いた感想では、鈴木さんとの関係を重視しましたが、瀬名との関係を重視した読みもありますし
同級生との関係を重視した読みもできますよね

また時間をおいて、読み返したいと思います
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