◇juri+cari◇

ネットで調べて、近所の本屋さんで買おう!!

恩田陸さん『黒と茶の幻想』

2008-03-28 00:59:43 | 読書
買ったのはずいぶんと前ですが

分厚さ(600ページ)にたじろぎ放置。


風邪を引いて寝込んだ一昨日、ようやく読み始め

じっくり3時間もかけて読了。



物語は、屋久島と思われる島へ登山旅行に来た4人の男女が登山をしながら、

自分の過去を振り返り、そこにある「謎」-友人の死、恋人の死、柘榴を嫌いになった理由、高所恐怖症になった理由など-を自問、話し合うもの。


30代後半の男女がそれぞれに対する複雑な想いを持ちつつも、「友人」でいられることがとても羨ましく、自分もこのようになりたい(4人は難しいだろうけど)、と思いました。


憂理という名前の女性や、『黒と茶の幻想』というタイトルは


『麦の海に沈む果実』や『三月は深き紅の淵を』との関連を伺わせはしますが、

そこら辺は、あまり考えずに―というか気付かなかった―完結した作品として楽しめます。


恩田作品らしく登場人物の造形も面白く

主役では、外見とは裏腹の冷たさを持つ蒔生や

作中に直接登場はしないものの、主人公らに大きな影響力を持つ紫織

などは好きなタイプです。


予備知識なしに読んだうえ、
「森は生きている」なんて文章から始まるので

てっきり「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」的なファンタジーホラーかと思い、読み始めましたが


心温まる良作に出会えて本当に良かった。

岳宏一郎さん『群雲、賤ヶ岳へ』

2008-03-13 23:10:49 | 読書
岳宏一郎さんの最新作『群雲、賤ヶ岳へ』


を広告で目にしたのでさっそく購入しましたが


何のことはない

『乱世が好き』


改題作の

『軍師 官兵衞』


さらに改題作でした。


内容は……好きなんです。


如水を主人公にしながらも近付きすぎず

かつ、

大壇上に語ることもない


中距離レンズで眺めた戦国史。


エピソードの選択にも、好感を持てるのですが



売り方には少々疑問



細かく章立てし、かつ、視座を次々に変えることで多角的に関ヶ原を描いた『群雲、関ヶ原へ』

一方、大半は黒田如水の視座で、その生涯を追った『乱世が好き』

本来は別個の作品だった(……と思われる)両作を

『群雲』シリーズ

としてしまうのは


違和感を禁じえません。





なお、後書きによると

「三部作」の完結編である


『群雲、大阪城へ』


が本年中に出版予定とのこと。


戦国時代を扱った小説では

オマケ程度にしか扱われない「大阪の陣」を

どのような構成、視座で描くのか


大変興味深く、上梓されるのが楽しみです。