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感想文の書き方~2009

2009-08-31 15:05:23 | 感想文2009

感想文の書き方を紹介する本や論文は数多くありますが、

 それらに共通する点をあげれば、

読書感想文を書く時に大切なのはたった3つのこと。

この3つを意識するだけで、感想文は書きやすく

また、出来上がった感想文もグッと良いものができると思います。

 

① 感想文とは『その本を読んだという体験の感想』を書くもの

まず、何より重要なことは、読書感想文は「本そのものの感想」や書評とは別物。

本を読み、自分の体験と本の内容を比べ、何かを学ぶ―

こうした体験の感想を書くものだということです。

 

② その本の内容と自分の経験の関係      

①でも書いたように、読書感想文では、自分の経験と比べることが重要になります。

ですから、

登場人物と似たような経験はないか、そのとき自分はどうしたか?

登場人物とどういうところが同じで、どこが違うか?

などを考えることはとても大切です。

 

たとえば、

この本を読んでいて自分は・・・というところが心に残った。

なぜなら自分も似たような体験があるからだ

そのとき自分は・・・としたけど、主人公は・・・

なぜこうした違いがあったのだろうか

 

―と、自分の体験と本の内容を比べながら本を読み、

それを文章に書くことで、感想文は説得力のあるものになります。

 

③ その本を読んだことによる考え方の変化 

これも①で書いたことですが、読書という体験を通じて、

自分がどのように成長・変化したかを書くことも欠かせません。

②からの続きでいうと、たとえば

 

主人公と自分は・・・というところが違っていた。

主人公はなぜこうした行動をとることができたのだろうか。

それは・・・だからだろう。

自分はこうしたところを見習おうと思った。

 

―こうした文章を感想文の終わりに持ってくると

全体がまとまった印象になります。

 

他にも、感想文を書くためのポイントには、このようなこともあります。

④ 「感動した」、「おもしろかった」はできるだけ使わない   

もし使うとしても、どういうところが?、どうして?を具体的に書いた方がいいでしょう。

 心に残った表現・フレーズを使ってみる 

読んでいて心に残ったセリフや文章は、感想文に引用すると、感想文の印象が良くなります。

 

他にも、いろいろな書き方やコツはあるので、これが一番いい!!とはいえませんが

何かの参考になればとてもうれしいです☆


鹿毛敏夫さん『月のえくぼを見た男 麻田剛立 』

2009-08-31 08:52:56 | 感想文2009

本書は、九州大学大学院等等で歴史学を学び

現在は高等専門学校で教鞭をとる著者が

江戸時代の医師・天文学者である麻田剛立を描いた著作です。


九州の杵築藩に生まれた剛立が

強い好奇心を持ち、ひたむきに多くを学び

三浦梅園、中居履軒、河野大学らと親交を深め

やがて日本中に名を知られるまでになる様子が描かれています。

 

児童向けの書籍という性格からか

「ケプラーの第三法則」についてはあまり触れられず

クレーターの発見や暦の作成に重点が置かれているうえ、

必要な事項については、解説も付されているので、

読みにくさを感じることはありません。


個人的に印象深かったのは

死が間近に迫った剛立が

「今は正しくても、未来の人が見たら間違いだらけに見えるにちがいない」

―として自らの著作を焼き捨てさせた箇所

そうした書籍や書物が残されていれば、

後世、より多くの発見がなされたかもしれず

とても残念に感じました。


ただ、よく考えてみると

教育者としても偉大な業績を残した剛立ならではの

「もっと深い考え」があったようにも思えるのですが・・・・。


知られざる偉人の業績を平易な文章で伝えるとともに、

好奇心を持つこと、それを貫くことの大切さ

そして、なによりも周囲の人々のありがたみを教えてくれる本書。


児童書というだけで敬遠せず

多くの方に読んでいただきたい著作です☆


<感想文について>

歴史上の人物を扱った本なので、

身近な話題、自分が経験した出来事などと結びつけるのは難しいかもしれません。

でも、このまえの日食を観察したり

何かを一生懸命調べたこと、考えた経験などがある方には

意外と読みやすく、書きやすいように思います。

 

<感想文について:読み方編>

感想文を読むという前提で、この本を読むのなら

どういうところに注意すればいいのか

私なりの考え方を示してみたいと思います


<シンプルな読み方>

① 大まかな話の筋に注目してみる
 
 様々なことに疑問を持つ

 興味のあることを追求し続ける

 多くの人たちと交流し、知識を深める


② 自分と共通する点はないか?

  自分とは違う点はないか?


③ 見習う点は思う点はないか?

  学んだ点はないか?


<深い読み方>


① 気になるせりふ・箇所に注目する。深く考えてみる

  ・「世の中には正義だけで通じない世界もある」

  ・剛立という名前に、彼のどのような決意が表れているのか?

  ・剛立はなぜ本を燃やしてしまったのか?


② 深く考えてみる

例~なぜ、剛立は本を燃やしたのか?
  

  ・本をやくのはもったいない → 自分だったらそうしない


  ・後の人に間違った知識を与えるかもしれないから → 自分でもそうする


  ・でも、それだけの理由じゃないかもしれない

    なぜなら、書物の大切さはわかっていたはず

    間違いだらけの本でも、かつての自分のようにその間違いを発見し成長する人がいるかもしれない

 
    もしかしたら、書物で伝えられる以上のことを、弟子たちに伝えられたからではないか?

    書物で伝えられる以上のこととは、ものの考え方や研究に向き合う姿(剛立天文学の精神)
  
    こうしたものを、弟子たちに伝えられたと確信したからこそ、本を「燃やすことができた」のだ


③ 自分が見習う点はないか?

  自分だったらどうするか?

 

<これから書き始める方へ>

感想文をこれから書き始めようとする方には、

直接原稿用紙に書き始めるのではなく、

まずはパソコン等で下書きをすることをおススメします。

パソコンで描くと、全体の構成をねりやすく、書き直しも簡単なことに加え

多くの人が頭を悩ませる文字数の調整も楽になりますよ。

 


<とにかく終わらせたい、どう書いていいのかさっぱり・・・という方へ>


どういう構成で書けばいいのか見当がつかない

とにかく早く終わらしたい!!―という方には、


①本を選んだ理由→②読んでいて面白かったところ

→③深く考えたところ→④この本を読んで学んだ点

という構成をおススメします。


①本を読んだ理由は、

好奇心が強い主人公が自分に重なった―でも、

日食を自分も観察したことがあるから―でもいいし、

タイトルが気になった

チラッと読んだときに、気になるセリフがあったから

というものもよいと思います。


②読んでいて面白かった―というのは、

本の内容が、自分の経験と重なるところがあった

興味をもって新しい発見をしていく様子が、とてもわくわくした

などということです。

この物語のどういうとことが自分を夢中にさせたのか

セリフや描写を引用するなどして、コンパクトに書くとよいと思います。


③の、深く考えたところ―では

自分の体験とひときわ強く重なるところ、

どうしてこういうセリフになったのか

この人はどうしてこんなことをしたのか

―など、自分が気になったところをあげ、それについて考えてみます。


登場人物の性格や本文には書かれていないことを、

物語の内容から推測してみたり

自分と登場人物はどういうところが同じで、どう違うのか?

などをたっぷりと考え、自分なりの答えを出してみるとよいでしょう。

全体のバランスではここをたっぷり書くのがよいと思います。


④の学んだこと

たとえば

自分の中のこれまで気づかなかったところに気づいたときどうするか?

人と協力することの大切さ

など、この本を読んで、自分は何を学んだのか

あるいは、どういうことを強く思ったのか。

そして、それをこれからの生活にどう活用するかを書きます。


他にも、読むきっかけと学んだことを結びつける

あるいは、読む前は疑問だったことが解決した―という終わらせ方もよいと思います。


なんにせよ、単におもしろかった、感動した

というだけではなく、

なにが?、どうして?、どういう風に?

を丁寧に、読む人が読みやすいように書けば、

きっとすばらしい感想文になると思います☆


ここで示したのはあくまでも一つの考え方ですが

もし、何かの参考になったなら、とてもうれしく思います。


ジョン・ボイン『 縞模様のパジャマの少年』

2009-08-31 01:12:32 | 感想文2009
本書は、アイルランド出身で

短編小説を中心に活躍してきた著者による

ホロコーストを題材にした長編小説。


収容所を管理する将校の息子と

収容所に収容されたユダヤ人の少年―

彼らはフェンス越しに友情を育みますが

その先には、大きな悲劇が待ち受けています。


厳格ではあるが家族を深く愛し、

よき官僚であるがゆえに大虐殺を指揮する父

ことあるごとに主人公を馬鹿にする姉

父が軍人になったことを誇らしく思う祖父と快く思わない祖母

そして、ある秘密を持った父の部下

―など、それぞれ複雑な内面をもった登場人物たちはとても魅力的で

読後、本書では描かれない「その後」を想像してしまいました。



また、物語は純粋な少年の目から語られるので

複雑な事情や固有名詞、具体的な状況は示されませんが

その分、読者は「1940年6月」、「総統閣下」、「見解の相違」

などの語を手がかりに、登場人物たちを取り巻く環境を

より主体的に想像することになります。


個人的に印象深かったのが

本書を締めくくる

「これは遠い昔に起こったことで、その後、おなじようなことはけっして起こっていない。

この時代、いま現在では。」という一文。

もし、いつかこうした「時代」が来たら

それは本当に幸せなことだし、絶対に来てほしいと強く思いました。


歴史書などでは汲み取られない人々の内面と悲劇の重さを

作家の想像力が見事に照らし出す本作。


自分たちも、加害者にも被害者にもなりうる話として

ぜひ多くの方に読んでいただければと思います。

ナンシー・エチメンディ『時間をまきもどせ!』

2009-08-31 01:03:22 | 感想文2009
本書は、ファンタジーやホラー、宇宙人モノなど

多彩な作品を執筆する著者による児童向きのSF作品。


妹を交通事故で失った主人公が

不思議な老人から手渡されたタイムマシンを使って

過去を変えようと奮闘する物語です。


主人公の妹や友人を思う気持ちもさることながら

運命を変えようとすることは、より大きな運命の一部なのか―?

というSF的、哲学的な疑問を抱きつつも

そこに拘泥することなく

自分の選択がよいものであることを願い、

信じようとする姿に強く心を打たれました。



また終盤、過去を変えようとした主人公は

大きな代償を支払うことになり

さらに、今後何十年もかかるであろう「義務」を負うことになります。

しかし、大きな悲劇と過去への旅を経験し大きく成長した彼からは、

それに耐られるであろう強さが感じ取ることができます。


児童書と敬遠することなく

多くの方に読んでいただきたい著作です。


<感想文をどう書くか>

『時間をまきもどせ!』を

どう読めばいいのか、その一例を考えてみました。


シンプルな読み方と深い読み方がありますので

何かの参考にしてもらえれば、とても嬉しいです。


シンプルな読み方

① 大まかな話の筋に注目してみる

  ・ギブは失敗やつらい経験をやり直したいと思う

  ・ギブが友人や妹を救うために何度もやり直す

 
② 自分と共通する点はないか?

   自分とは違う点はないか?


③ 自分もこうしたいと思う点はないか?

   どういうところを学んだのか?


深い読み方


① 気になるセリフ・場面はないか

  ・ギブがレイニーの代わりに先生に謝ったとき 

  ・ギブがはじめて<パワー・オブ・アン>を使い、家の扉を開けるとき

  ・「クール」という言葉を使う老人
 
  ・悪いことがおきるのは、その人がやったことへの当然の報い・・じゃない?

  ・「信じることにした」 


② それについて、深く考えてみる

<例>

 どうして、「信じる」じゃなくて「信じることにした」なのか

  運命については考えてもよくわからないから?

  そうではなくて、もっと他にやらなくてはいけないことがあるから。

  つまり、これから何年もかけて<パワー・オブ・アン>を作らなくてはいけない

  主人公は疑問を感じつつも、自分が何をしなくてはいけないかをよくわかっている
 
  だから、ギブは「信じることにした」という表現を使っている。

 
③ 自分も見習いたいところはないか?


こんなところに意識しながら読むと、

感想文はずっと書きやすく、またより良いものになるように思います

松本祐子さん『8分音符のプレリュード』

2009-08-31 00:21:55 | 感想文2009

本書は、聖学院大学教授であり

児童文学や劇評なども手がける著者による

女子中学生を主人公にした長編小説。


吹奏楽部に所属する主人公が

不思議な転校生と出会い

クラスや学校の中でさまざまな経験をし、

成長する様子を描きます。


信じていた人物からの裏切り

仲良くしていたはずの同級生が向ける悪意

そして、今まで気づかなかった自分の一面

楽しいはずの学園祭が近づくにつれ、

主人公はどんどんと内にこもってしまうのですが・・・


ときには、絶望やにがい経験をしながらも

周囲の人と触れ合い、助け合うことことを通じて、

自分自身を知り、自分の居場所を見つけて行く様子は、

とてもたくましく感じられました。


また、個人的に印象深かったのは、

本作のクライマックスである吹奏楽部の演奏の場面。

どんな音楽かもわからず描写も短めなのに、

まるで、目の前で演奏が行われているような感覚になります。



同じく現代の中学生を描いてながらも、

「ケータイ小説」等とは正反対の

どこまでもさわやかなストーリーが印象的な本作。


中高生向けの作品というだけで敬遠することなく

多くの方に読んでいただきたい著作です。


<感想文について>


今回の課題図書の中で、感想文を一番書きやすい本だと思います

学校や部活での出来事など、身近な体験と比べて、

どういうところが自分と同じか、どういうところが自分とは違うか―

そうした点に注意して読めば、

どんな風に感想文を書けばいいのかもイメージしやすいように思います。


部活に熱中している方などには特におススメです。


<これから書き始める方へ>

感想文をこれから書き始めようとする方には、

直接原稿用紙に書き始めるのではなく、

まずはパソコン等で下書きをすることをおススメします。

パソコンで描くと、全体の構成をねりやすく、書き直しも簡単なことに加え

多くの人が頭を悩ませる文字数の調整も楽になりますよ。

 

<あらすじのまとめ方>

本全体や、ある場面のあらすじをどう書くか?

―について、感想文を書く上で頭を悩ませる方が、多くいます。

あらすじの一番簡単な形は、「誰が」、「どうした」様子を描いた作品―というもの。

この本では、「二人の少女が」「成長する」様子を描いた作品―といった感じになります。

そして、これに「どんな人が」、「どんな風に」、「どうして」などの要素を付け加えると

「吹奏楽部の果南と転校生の透子が」、「時には反発しあいながらも、徐々に心を通い合わせ」、「成長していく」様子を描いた作品。

となりますし、より細かく出来事を見ていくと、より長く詳細なあらすじになります。

個別の場面でも、たとえば透子を果南がぶった場面では

「果南が」、「透子をぶった」というのが一番簡単な形ですが、

「果南は」、「透子を吹奏楽部に誘うが」、「嘲るような態度に怒りを抑えられず」、「ついに透子をぶってしまった」

―という感じに書くことができます☆


<とにかく終わらせたい、どう書いていいのかさっぱり・・・という方へ>


どういう構成で書けばいいのか見当がつかない

とにかく早く終わらしたい!!―という方には、


①本を選んだ理由→②読んでいて面白かったところ

→③深く考えたところ→④この本を読んで学んだ点

という構成をおススメします。


①本を読んだ理由は、

部活をやっている主人公が身近に感じたから

―でも、学校生活でいろいろと悩む点に共感したから

などでもいいし、

タイトルが気になった

チラッと読んだときに、気になるセリフがあったから

というものもよいと思います。


②読んでいて面白かった―というのは、

本の内容が、自分の経験と重なるところがあった

音楽のシーンに迫力があった

シーナが人間的な魅力に溢れていた

などということです。

この物語のどういうとことが自分を夢中にさせたのか

それをセリフや描写を引用したり、

自分の感想と比較するなどして書くとよいと思います。


③の、深く考えたところ―では

自分の体験とひときわ強く重なるところ、

どうしてこういうセリフになったのか

この人はどうしてこんなことをしたのか

―など、自分が気になったところをあげ、それについて考えてみます。


登場人物の性格や本文には書かれていないことを、

物語の内容から推測してみたり

自分と登場人物はどういうところが同じで、どう違うのか?

などをたっぷりと考え、自分なりの答えを出してみるのもよいでしょう。


全体のバランスではここをたっぷり書くのがよいと思います。


④の学んだこと

たとえば

自分の中のこれまで気づかなかったところに気づいたときどうするか?

人と協力することの大切さ

など、この本を読んで、自分は何を学んだのか

あるいは、どういうことを強く思ったのか。

そして、それをこれからの生活にどう活用するかを書きます。


他にも、読むきっかけと学んだことを結びつける

あるいは、読む前は疑問だったことが解決した―という終わらせ方もよいと思います。


なんにせよ、単におもしろかった、感動した

というだけではなく、

なにが?、どうして?、どういう風に?

を丁寧に、読む人が読みやすいように書けば、

きっとすばらしい感想文になると思います☆


<書き出しが思いつかないとき>

書き出しに関しては、多くの方が悩むようです。

私としては、ある程度下書きをすれば

書きたいことも整理され、

書き出しで、あまり悩まずにすむと思うのですが・・・


どうしても、時間がない!!という場合は

なぜ、この本を読もうと思ったのか?

について書くといいでしょう


たとえば、

主人公が中学生だから共感しやすいだろうと思った

自分も同じ吹奏楽部に入っているから、

とか、

タイトルが気になった

という書き方があります。


また、

偶然開いたページに書いてあった「・・・・・・・・・」

という言葉に強く心引かれた

などというのもよいと思います。

 

<どうしても書くことがない!!!>

 

5枚書けるだろうと思って書いていったら

ページ数が足りない!!

1ページ以上残ってしまった場合は、

最後の手段、物語のその後を考えてみましょう。

透子がドイツへ行ってしまった後、

果南はどんな学校生活を送っているのか?

 

これを考えると、ページ数を埋めることができるのはもちろんですが

くだらない嫉妬や優等生意識をどう乗り越えたのか

周囲との接し方はどう変わったのか・・など、

果南がどのように成長したのかを、見つめなおすことができます。

 

なので、ページが余った方に限らず

この点はけっこうおススメです

 

 

 

 

 

 

<透子について>

読書感想文では、個人的な経験とどう結びつけるか

何を学んだか―ということが重要になりますが

「読書」感想文である以上、本をキチンと読み解くことも不可欠で、

キチンと本を読めている感想文は、高い評価を受けます。

そして、この本は、主人公である果南の視点から語られているので

果南の心情の変化はつぶさに語られますが、

もうひとり、大きく成長を遂げた透子の内面については

ほとんど語られません。

それだけに、透子の内面をしっかりと読み解くことができれば

とても優れた「読み」であり、感想文としての評価も高くなると思います。

 

<タイトルについて>

タイトルに注目し、その意味を考えてみるのも感想文を書く上で大切なことです。

この作品の『8分音符のプレリュード』というタイトルについては

4分音符を一拍とするのが一般的ですから

8分音符はその半分、つまり8分音符が2つで1拍になります。

 

また、プレリュードは前奏曲

つまり、メインの演奏が始まる前に演奏される楽曲です。

あるいは、始まりの曲と言い換えることもできます。

 

この2つが合わさった『8分音符のプレリュード』が

どういう意味かは・・・・

<シーナについて> 

この物語は、果南と透この関係を中心に進行しますが

シーナもまた、重要な登場人物です。

ですから、シーナについて一切描かないという書き方もありますが

その一方で、シーナの視点や行動に注目した書き方もできます。

個人的には、異性のとても親しい友人がいる方には、シーナに注目した書き方もおススメしたいです。

 

<コメントについて> 

もしかしたら、おちからになれるかもしれないので、

疑問などありましたら、いつでもコメントに書いてください。

コメントは、だいたい8時、12時、15時、18時、21時、24時ころに

お返ししようと思っていますが

お急ぎの方は、至急と書いてくだされば、できるだけ早くお返しします


森村進さん『H・L・A・ハートの『法の概念』』

2009-08-31 00:00:51 | 読書
本論文は、法哲学を専門とし、

(執筆当時)一橋大学助教授である著者が

H・L・A・ハートの『法の概念』を読み解き、

その内容を紹介するとともに、独自の疑問点を記した論文。



1 法命令説への批判


「法命令説=法は主権者の強制的命令という命題」への批判
 
 法は主権者も拘束する

 法はより多様である

  遺言に関するルールは強制ではない

 主権者概念は不要

  はるか昔に死んだ主権者の命令になぜ拘束されるのか?

  主権者が死んでも無法にはならない

  選挙民も憲法的ルールにより主権者となっている
  

習慣・ルール

  習慣:行動の一致~外的側面

  ルール:逸脱が批判される~外的側面に加え、行為準則となっている(=内的側面も持っている)  


2 内的視点と外的視

  
 法を受容する人々の視点~内的視点 ⇔ 外的視点 ~ 法を受容する人々を外から眺めた視点

 法を受容する人々の言明~内的言明 ⇔ 外的言明 ~ 法を受容する人々を外から眺める言明
 

受容と是認

  受容は道徳的是認を意味しない
 
  *ルールの受容は、逸脱への批判を含むのではないか?


視点の多様性

  外的視点~受容している人々の内面を見るか見ないか

  内的視点~是認した上での受容、黙認


リーガル・リアリズム(法とは判決と、その予測に過ぎない)への批判

  裁判官以外の私人も、自ら法的ルールを用い判断している

法的ルールの特徴

  法には確定したルールと、不確定な部分がある



3 第1次ルールと第2次ルール


 第1ルール:「物を盗んではいけない」などのルールに自発的に従う社会

 第2ルール:第1ルールしかない状態の欠陥を補うルール

  欠陥~ 1 何がルールなのか明確でない
          
           → 法源の明確化・体系化:承認のルール

      2 状況の変化に対応できない

           → ルールを変更するためのルール:変更のルール

      3 ルールの侵害の有無を確認・裁定する機関

           → 司法的権能の創設:裁定のルール

 「承認のルール」の特殊性

    憲法→法律→命令 ~ それぞれのルールは上位規範の存在によりルールとして存在する
   
    憲法はなぜルールとしてあるのか?   
    
     帝国憲法73条では、主権者の変更は改正権の範囲外である・・と考えれば、

     事実状態としての受容こそが、日本国憲法をルールとして承認している。



法体系が存在する条件

   ① 公的機関が2次的ルールを内的視点から受容

   ② 動機はなんであれ、一般人が1次ルールに服従していること


*近年の論者は、法の受容について、内的視点を重視しすぎている。

   ・ 法に従うかについては、利益衡量の余地がある

   ・ 私人は法の全てを受容するわけではない~行政法規など

4 法と道徳
 
 相違点 ① 道徳はメンバーから重要と思われているが、法はそうとはいえない。

     ② 法は意図的な変更を受ける

     ③ 道徳的責任は故意に限られるが、法的責任は故意に限られない

     ④ 道徳維持のための圧力は良心に訴えることだが、法的圧力は制裁
     

法実証主義:① 法命令説
      
      ② あるべき法と現実の法に必然的関連性はない

      ③ 法概念の研究と、それについての社会的研究、評価と区別すべき

      ④ 正しい判決は論理的に唯一つ導き出される

      ⑤ 価値相対主義


自然法の最小限の内容:あらゆる社会の法や慣習に含まれる、社会存続のためのルールの容認


法実証説②への批判=法と道徳は一致するはず

      ① 法体系の存在は、道徳的確信を必要条件とする

      ② 法は実体道徳の影響を受ける

      ③ 道徳は法の解釈に入り込む
      
      ④ 法は道徳の要請に従わなくてはいけない
    
      ⑤ どんな法も手続的正義の要請にかなう
   
      ⑥ 道徳的でない法は、法ではないと考えたほうが有益

⑥道徳的に邪悪な法は、法ではない・・・のか?

      法の有効性と道徳性を区別したほうが、問題の複雑さを認識できる。

      *「これは法だ。しかしあまりに邪悪なので従えない」
        
       → 法への服従を絶対視しないハートの見解と両立しない?

堀乃月さん『幸福ダイブ』

2009-08-29 02:24:08 | 読書
本書は、短編『幸福ダイブ』で

金のティアラ大賞特別賞を受賞した著者による初の単著です。


自殺しようと、飛び降りかけた少女・サチの前に、

突如現れた謎の青年・レイ。

車にはねられ、魂だけで彷徨っているというのだけど・・(表題作『幸福ダイブ』)


魔王が落としたケータイを探すため、

人間界に来ている魔女を主人公にした『マジョマオ!』など


天使だったり、気真面目だっり、魔女だったり―と

少し周囲から浮いている少女と

彼女を取り巻く人々の成長を描く4編を収録。


いずれの作品も

やさしさとに溢れたストーリーと

ほどよく織り交ぜられるユーモアが心地良く

読後、とてもさわやかな気持ちになります☆


個人的に、強く心に残ったのは

凶悪な男ばかりの工業高校に通う女子高生を主人公にした『クロガネガール』

気真面目で一途な主人公が

一見いい加減な同級生たちと理解しあう姿がテンポよく描かれるうえ、

オネエ系な同級生、かなり強面な父親など個性的な登場人物たちも印象的で

何度も繰り返し読みました。


温かく、前向きなメッセージが

ストレートに伝わる本書。

少女マンガが好きな方はもちろん、

オモシロい本をお探しの方には、迷わずおススメしたい1冊です☆

浅野和生さん『ヨーロッパの中世美術』

2009-08-29 00:57:46 | 読書
本書は、西洋美術史を専門とし、

現在は愛知教育大学教授である著者が

西洋の中世美術について概説する著作です。


ローマ・ギリシアとの連続性や

キリスト教徒の関係など、中世美術の全体像を概説した上で、

信仰、聖遺物、都市、写本、そして巡礼など、

テーマごとに個別の作品を紹介します。


美術史の著作というと専門用語が並び

近寄り難い印象がありますが、

本書は、抽象論や技術的な話題は登場せず

話し言葉で書かれているので、

気軽に読み始め、読み通すことができました。


観光のような中世の巡礼、中世美術とルネッサンス美術の関係など

興味深く、もっと深く知りたいと思うことは多くありましたが、

とりわけ印象深かったのは、

カンタベリーの修道院について論じた12章。


私の場合、作者の顔がなかなか見えてこないことが

中世美術を敬遠する一因でしたが

ここでは修道院の復興工事を指揮した仏人建築家ギヨーム・ド・サンスについて

作業の様子や、建築の特徴をつぶさに紹介しています。

そのため、遠い過去の建築家でも身近に感じることができ、

彼が建てた修道院もぜひ訪れてみたいと思いました。


ルネッサンス以降の美術と比べて、

縁遠く、興味を持ちにくい中世美術について、

平易かつコンパクトに解説した本書。


美術史に興味がある方はもちろん

ヨーロッパ旅行のご予定などがある方には、

強くおススメしたい1冊です☆


<おまけ>

最初、この本を見たときに

台湾政治の人が、なんで美術の本を書いてるんだろうと思いました。

でも、近代法を専門とする人が古事記をやったり、

英語文法の人が昭和史やったり、

色々だからそんなものかなぁ・・・と思ったら

同姓同名の方でした。うん、ややこしい。

柳広司さん『ダブル・ジョーカー』

2009-08-28 12:45:11 | 読書
帝国陸軍内に設けられたスパイ組織・D機関と

そこを統轄する謀将・結城中佐の活躍を描いた人気シリーズ第2弾。


打倒D機関を目標に設立された

陸軍エリートからなるスパイ組織・風帰還。

「殺さず、死ぬな」を貫くD機関と

「躊躇せず殺し、潔く死ぬ」を掲げる風機関との暗闘(『ダブル・ジョーカー』)


慰問のため、漫才師が訪れた野戦病院を舞台に、

理想に燃えるスパイと、彼に迫る黒い影を描く『蝿の王』


第一次世界大戦末期のヨーロッパを舞台に繰り広げられる

若き結城と、ドイツ諜報部員の壮絶な戦い『棺』


―など、全5編を収録します。


個人的に印象深かったのは、

真珠湾攻撃直後のアメリカを舞台に

異母兄弟であるD機関員2人を主人公にした『ブラックバード』


本短編集のラストを飾る本作。

これまでのシリーズ同様のおもしろさはもちろん、

誰もが気になるであろう『シリーズ最大の謎』

その一端が明らかになるのが嬉しいです。


これまでの作品のように読み進めていた読者を、

二重、三重に裏切る残酷なラスト

彼ら、そして結城はその後どうなったのか

いつかまた、彼らを描いた続編が出ることを願ってやみません。


スパイ小説、サスペンスのスタイルながらも、

人が殺されないので、安心して読むことができる本書。


前作からのファンはもちろん、

サスペンスに普段はあまり興味のない方にも、強くおススメしたい作品です。


<補>

言うまでもなく、本作最大の謎は

こんなにすごいスパイがいたのに、何で戦争に突入し

そして、敗戦したのかという一点に限られます。


「すごさのインフレ」を抑え、連載にもひと段落つけた本作。


まだまだ読みたいのですが(野性時代の来月号にはスピンオフが載るようです)

たぶん、これ以上書かれることはないんだろうなぁ・・そんな気がします

いしいひさいちさん『大問題09』

2009-08-28 00:14:02 | 読書
本書は、『ののちゃん』をはじめ、

ミステリー、現代思想、歴史―など

幅広いジャンルに関する4コマを発表する著者による

時事問題を扱った恒例シリーズ


『09』と冠した本書では、

北京オリンピックから、総選挙にいたるこの1年の話題について、

抱腹絶倒のギャグに包みつつも、するどく本質を暴き出します。


某ヨッパライ大臣、暴言大臣、ギョーザなどの、

新メンバー?はもちろん、

キムさん、小沢さん、ナベツネツネオさん

10年前とからほぼおなじみのメンバーも絶好調

というか、10年前から目立つ人が変わらないってどうなんだろう

・・・・という気もするのですが


それはさておき、個人的には

あそう容疑者逮捕!!やあそう流「CHANGE」

相変わらずのフリチントン&ヒラリーが笑いのツボ。

運悪くバスの中で読んでしまったので

顔がにやけるのを抑えるのに、必死でした。


また、小泉元首相が刺客候補だけでなく

本当の刺客まで落下傘のように投下した・・・

という「社会001」には、ギャグとしての可笑しさとともに、

薄ら寒いものを感じました。


筆者ならではの、鋭い視座から

この1年を振り返るとともに、これから1年を見通す本書。

とくに今年の場合、選挙に行く前に読むことを強くおススメします☆