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井上荒野さん『ベッドの下のNADA』

2010-12-29 12:46:05 | 読書
本書は、『切羽へ』で直木賞を受賞した著者による、

ひと組の夫婦を主人公にした短編連作小説。


カフェを経営する夫婦とそこに集う人々の諸相を、

視座と時を変えつつ、ぬくもりのある筆致で描きます。


著者の作品ではおなじみの、美味しそうな食べ物はもちろん


幼い日、実家に居候していた叔母との思い出をたどる『だんまり虫』

青春の記憶を求め、あるノートのことばかり考え続ける『交換日記』

常連の夫婦がラブホテルに泊まったと語る『おもいあい』など、

どの作品も豊かな情感と微量の毒気さに彩られており、

とても惹きつけられました。


そのなかでも特に印象的なのは、

夫婦の店にテレビの取材申し込みが来た顛末を描く『タナべ空』です


とびきり善人でも、とびきり意地悪でもない、

普通の人々の日常をなめらかに切り取った本書


著者のファンに限らず、

ただの「いい話」では飽き足らない方に

強くオススメしたい著作です。

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