◇juri+cari◇

ネットで調べて、近所の本屋さんで買おう!!

橋口いくよさん『原宿ガール』

2008-10-10 00:14:16 | 読書
うん、好きな本!!!!

橋口いくよさんの『原宿ガール』を数ページ読んで確信しました


『原宿ガール』は、

本当は32歳だけど、10代に見える主人公・杉浦弥代子が

アイドルグループ『原宿ガール』にスカウトされたのをきっかけに

年齢を17歳と偽り、チェリーの愛称で芸能界デビューする物語


現実の自分とアイドルとしての自分の間の葛藤

恋人との関係、

オーディションやアイドルグループ内での駆け引きや

メンバーの卒業

スキャンダルを暴露しようとするマスコミ


こうした個々のエピソードには既視感が感じられるかもしれませんが

しかし、そんなことは本書の価値を一向に毀ちません


本書の真骨頂は

若さを保ち続けたい!!

アイドルになりたい!!!!という主人公の強い思い


恋人も親も友人すら捨て、

自らの「夢」を追い続ける弥代子の姿

そして、夢をかなえたら次の夢を持つ姿勢は

見事!!!!の一言




エイジレス小説と銘打っていますが

それにとどまらない

自分の本性を磨き続ける―本書中の言葉で言えば


「お寺をピカピカに磨きつづける修行僧のような」―物語



ぜひ、多くの方にこの熱さ・ひたむきさを感じていただきたい





筆者の橋口いくよさんは以前アイドルとして活躍し、

引退後、32歳のときに10代と間違われ

AKB48にスカウトされたという経歴の持ち主

写真を見ますと秋山莉奈さんとか小林真央さんに似た雰囲気

これで34歳とは、うらやましい!!!!


本書で明かされるアンチエイジング方法(ヨガ、サプリ、肉、アイドルのDVDなどなど)

さっそく実践してみます




ただ一つ難をいえば

この写真を先に見てしまったために

本を読んでいる最中、弥代子のイメージがかなり筆者の写真に引きづられた点



読書をするときに視覚的イメージを持ちすぎると

良くないって、改めて思いました

榊原吉郎さん『神坂雪佳の世界―発見! 琳派からモダンデザインへの架け橋』

2008-10-05 10:50:53 | 読書
東京国立博物館で「大琳派展—継承と変奏—」がいよいよ始まりますが

同展覧会のように抱一、其一を宗達や光琳と併置することには、強い異議が述べられます。


その主張を掻い摘めば、

宗達、光琳らが活躍したの京都―
一方、抱一たちが活躍したのは江戸。
抱一たちも琳派の正当な継承者ではあるが、あくまで分家に過ぎない
琳派の正統は中村芳中ら京都の画家である

まぁ、門外漢にはどうってことのない話ですが
江戸柳生と尾張柳生、西本願寺と東本願寺みたいな話と考えれば
異議の理由もなんとなくは分かります…かね?

その異議については、一応の正当性が感じられる
というに留めまして、

で、そのような主張をする論者によって

(京都の)琳派の正当な後継者に位置づけられるのが、神坂雪佳。

神坂は江戸末期から昭和前期の画家。
京都の武家に生まれ、四条流の画法を学んだのちに、装飾芸術に興味を持ち光琳らの作品を学び、絵画をはじめ職人たちとの共同作業により陶芸、漆器、織物図案、工芸意匠など幅広い分野で、琳派の流れに属する作品を残した人物。


どの作品も気品と遊び心が感じられ、とても親しみやすいのが特徴です。



生前は、京都を中心に活躍し数多くの審査員も勤めた神坂ですが
正式に画家として活躍したのではないため、死後は一部の研究者の間でのみ知られるにとどまりました。

そんな彼に大きな転機が訪れるのは2001年―
エルメスが彼のデザインをカタログで使用したことによって再び脚光を浴び
2003年には京都国立博物館で「神坂雪佳 琳派の継承・近代デザインの先駆者」が開催
2006年には東京をはじめ、全国3箇所で神坂雪佳展が開催
(←YMOから菊池凛子さんまで、海外で先に脚光を浴びたものに弱い土地柄ですね)

次第に再評価が高まっている、いまが注目し時の画家



神坂の作品については、京都の芸艸堂から図案集が出されているほかは
各展覧会の図録くらいしか刊行物がなかったのです。

今年になって、満を持して出版されたのが

榊原吉郎さん『神坂雪佳の世界―発見! 琳派からモダンデザインへの架け橋』



ほとんどのページがカラーなうえ、サイズもコンパクトで持ちやすい。

これまでの展覧会の図録を

すべてを持っている方には、収録作品で目新しいものはそれほどないかもしれませんが
一つしかごらんになっていない方や、まだ神坂の作品をご存じない方には、

必見といっていいほどおススメです。


また、作品の写真はもちろんのこと

長年日の目を見なかった研究が、ようやく日の目を見た榊原吉郎さんのエネルギーがスパークする解説もすばらしい。

東京で開催された琳派展について

東京という土地柄としか言いようがない「琳派」解釈の下に作品選択が行われたことは残念である。
光琳は光琳であり、彼の作品が外国人の目にどう映ろうとも、それは外国人の判断・評価であり、光琳の見たもの、価値判断したものではない。

とバッサリ!!


大半の箇所では、最新の研究も踏まえつつ
すごく平易な文章で専門的な事柄を書いていらっしゃるのですが、
こういう記述を読むと、ものすごく力が入っちゃてるのが一目でわかり、
ニヤニヤ笑いが止まりません。


いまや
身近な日常品から高級ブランドのロゴ
さらにはロボットや人工心臓、副大統領候補の眼鏡まで、
アーティストとしての画家よりも、
意匠、工業デザイナーなどが脚光を浴びる今日においてこそ

その先駆けとして、最先端と伝統、
日常と非日常を融合させた作品を作り続けた神坂の作品は正当な評価を受けるのかもしれません








とは言っても、

《やはり野に置け蓮華草》って気もするんですがね